第14話 ガキとジジイとババアをなめるな
ラルガルシア王国から王様がいなくなってから、しばらくの間、国を取り締まる人がいなかった。なので残留した赤白花騎士団が指揮っていた。
仮隊長が何者かに殺害され、隠れ隊長が表に出てくるようになってから、彼らの横暴が目に付くようになった。
ディヴィと呼ばれた本当の隊長はどうやら人間として最悪らしく。
ナナニアですら多くを知らない人物であるらしい。
彼等は老人達を邪魔者のように扱う。
酒場で老人がお酒を飲んでいると、赤白花騎士団のメンバーが邪魔をしたり、追い出したりする。
ガキ達が外で遊んでいると。無理やり家に帰らせる。
ガキ達のおもちゃを取り上げるなどしている。
老人達もガキたちも赤白花騎士団の団員達も色々な意味で爆発しそうだ。
老人とガキ達は赤白花騎士団の態度が気に食わない。
赤白花騎士団の団員達はなぜか自分たちに売ってくれない商人に対して。
俺様はそういった情報を歩きながら見ていた。
くっくと笑う。
老人の3名が酒場に向かっていった。
俺様はなんとなく興味深くついていった。
酒場は赤白花騎士団の貸し切り状態になっていた。
老人達はそれでもかとお酒を注文するわけだ。
彼らの背中には伝説の剣エクスカリバーが装備されていた。
赤白花騎士団のメンバー達はきつい一言を放とうとした。
「わけぇもんがいい気になってんじゃないよい」
それはババアの声だった。
てか酒場のババアだった。
彼女は包丁の代わりに大きなエクスカリバーを使っていた。
「ここは貸し切りだぞ、俺は赤白花騎士団の本当の団長でな、おめーみてーな枯れたババアはさっさといなくなれ」
「それは違うぞい、そこのババアはまだ枯れておらんぞい」
次に立ち上がったのは3名のうちのジジイだった。
ジジイは顎髭をなでながらエクスカリバーを掴んでいる。
この場にエクスカリバーが4本ある事じたいが異様な光景な気がするが。
「うっせんだよくそじじい」
「わしはくそがついていないジジイじゃ」
「ならくそでもつけて寝てろ」
「ほう、おぬし、わしに喧嘩を売っとるのか」
「ジジイが喧嘩を売ってるんだろうが」
「ふ、ジジイめ、この魔法で十分だ」
ディヴィの右手から雷の塊が解き放たれる。
初級の雷魔法だろう。
それでも心臓の悪いジジイに直撃したら、一撃死は免れないだろう。
だが老人はエクスカリバーを高速で振った。
それだけで雷の魔法は霧散してしまった。
ジジイはにやりと親指を上げていばっている。
「くそじじいが、お前何者だ」
「トウモロコシ農家のくそ爺だ」
「わしはトマト農家じゃぞ」
「わしなんと米農家じゃ」
「つまり農家風情が我らに喧嘩をうると?」
「「「そうじゃ」」」
次の瞬間、酒場は修羅場とかした。
赤白花騎士団の団員達は本気で老人3名を殺すつもりかのように抜刀したのだ。
3人の老人はエクスカリバーを引き抜いた。
俺様は助太刀する必要がないと即座に判断した。
トウモロコシ農家もトマト農家も米農家も、畑を開拓した時に関わった爺さんであった。
それは一瞬で蹴りがついた。
赤白花騎士団のメンバーと団長であるディヴィが跳躍したまさにその時。
3人の老人となぜか1人のババアが伝説の剣エクスカリバーを引き抜いていた。
それもとんでもない高速スピード。
それを可能にしたのはヒーロータイツのおかげだ。
ジジイもババアもぴっちりとしたヒーロータイツを衣服の下に着ていた。
「う、うそだろおおおお」
「て、てめぇら、本当にジジイなのか」
「ババアもいるぞ」
「ぎゃああああああ」
赤白花騎士団の悲鳴が轟いた。
酒場の壁を粉砕して大勢の赤白花騎士団のメンバーが吹きとばされた。
全員が満身創痍になっていた。
そこにガキが1人いた。
ディヴィの顔に嫌らしい笑顔が浮かんだ。
「くそがきこっちこい、がは」
「おじちゃん、悪い顔してるね、そういう人は大事なところを蹴り上げるといいんだって」
「ぬぉおおおおおお」
ディヴィは股間を抑えて悶絶している。
そんなガキもヒーロータイツを着用しているため。
「ありゃ、潰れたな」
俺様は同じ男性として股間を抑えていた。
「こ、このやろおおおお」
大勢の赤白花騎士団のメンバーが立ち上がり、団長であるディヴィを支えて逃げて行った。
「めでたしめでたし」
「てなるかーい」
いつの間にか勇者と魔王の末裔であるナナニアが般若の形相で立っていた。
「え? めでたしじゃないの?」
「あのディヴィって奴を調べたんだけど、この国を北にあるテネトス国に売りさばこうとしてるわ」
「だから?」
「あんなことされたらこのこの国の人達皆殺しにされるわよ」
「でもなぁ、皆最強だよ?」
「……それは確かに」
ナナニアはようやく現状を理解したようだ。
どれだけすごい兵士が来ようと、どれだけとんでもない英雄が来ようと。
おそらくガキ1人にさえ勝つ事が出来ない。
彼らは伝説の剣エクスカリバーを装備し、ヒーロータイツを着用し、栄養が足りなくなったら、スポーツドリンクでふぉおおおしていればいいのだから。
その時後ろからやってきた男性と女性が目に入った。
1人は冒険者ギルドマスターであるラガストで、もう一人の女性はテニーちゃんであった。
「はは、やっぱりあなたの仕業でしたか」
それから冒険者ギルドの裏手にある隠し部屋に移動した俺様達。
最初着た時は書類だらけだったが、俺様のテレフォンショッピングで購入したアイテムのおかげでフォルダーに書類がおさまっているようだ。
「あなたがエクスカリバーとヒーロータイツとスポーツドリンクを人口100名程に供給した結果、皆さんが勇者並みに強くなりました。赤白花騎士団なんて雑魚です」
「そうでしょうそうでしょう」
「北のテネトス国からやってきた使者は不思議なアイテムを作っている者を譲れと言っています。さもなくば国を亡ぼすと」
「ふふ、はっはっはははははは」
「こ、壊れたの、レイガス」
「おかしくて笑っているのだよ、俺様はこの国を最高な国にする。商売最強王国を作る。そこにテネトス国はない、あそこは貴族社会の国だ。俺様は貴族が嫌いだからなぁ、貴族というのは自分が優位に立っていると勘違いしているおおまぬけだ」
「ではそう申しておきましょう」
「ちょ、やめてえええ、ラガストギルドマスター、そんな事したらこの国が滅びますわ」
ナナニアが思わず突っ込むのだが。
ラガストギルドマスターはにやりとほくそ笑む程度であった。
「ならテネトス国を亡ぼせばいいでしょう」
ラガストの冷静な発言にナナニアは絶句してしまったようだ。
彼女はぶるぶると頭を振っている。
「彼にはそれが出来ると思います。もっとも殺戮ではなく、平和的な滅ぼし方という奴です」
「わかってるねぇい、俺様はテネトス国を滅ぼしに行ってくるとしようか、と言う事でナナニアよテネトス国へいくぞ」
「あんただけいきやがれ」
「何を言うか、お主は俺様の用心棒であろう、仕事をしないと言うなら、色々と考えが」
「やめてえ、考えるのやめてええ、レイガスが考えるとろくなことがないわ」
「そうだろうそうだろう、では乗り物を何にするかだが」
「そんなの馬に決まってるでしょ」
「俺様は車のトラックとやらに乗ってみたいのでな」
明らかに特別な人間ですと自己アピールする乗り物をテレフォンショッピングから購入しようとする俺様をナナニアが必死で止めるのだが。
そんな事はどうでもいいと、城門の外にまでやってきて、トラックを購入したのであった。
「うそおおお、こんな巨大な乗り物だとテネトス国に喧嘩を売るようなものでは」
「知ってるか、人とコミュニケーションをとるには第一印象が重要なんだ」
「これ最悪な第一印象だよ」
「は、っはは」
かくしてテネトス国へトラックで冒険する事になりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます