第13話 城消滅商売人奮闘


 その日、ラルガルシア王国にとって驚きの事件が発生した。

 それは城そのものが国から消滅したという事だ。


 地下倉庫や宝物庫すらも綺麗さっぱり消滅していたのだ。

 貴族の邸宅を襲っていた者たちもまさか城は襲わなかったようだ。

 なので俺様の懐はありえない額になっていた。

 

 もうね、1兆データとかのレベルではなかった。

 10兆とかのレベルでもなかった。

 もはや知らない桁に突入していた。

 しかも知らない桁を遥かに上待っていた。


「なので俺はこの国を商売王国にします!」


 となぜかナナニアに宣言していた。

 彼女は難しい顔をしながらこちらを見ていた。


「諸外国はこの国を乗っ取る腹積もりだろうな」

「全部ぶちのめしてやろう」


「お主よ、そう簡単なものでもない、数10万の敵を1人で倒す気か」

「2人だな」


「あたしを含めるな、まだ死にたくない」

「あの魔人婆くらいは倒せよ、あの婆は城壁の壁を走ったんだぞ」


「あたしにだって出来るわい」

「なら、やってみろよ」


「ぎくり」


「と言う事で、商売を始めようと思います。今日は伝説の剣エクスカリバーを大量購入しましたー」

「ちょおおおおおおおお」


 ナナニアは驚愕の表情でこちらを迎え入れてくれた。

 彼女は何度も俺様の頭をぺちぺちと叩いたので、俺様は彼女の足をどしどしと踏んでやった。


「どこの世界に伝説の剣を大量購入してみましたーだ。聞いたことないわよ、せめて世界に1本だけにしろよ、これだと子供でも最強だぞ」

「ふ、それが目的だったりする。考えてもみろガキ1人に壊滅させられる兵士達、ぬふ」

「何がぬふよ、もはや下心丸見えじゃないか」

「楽しそうでいいじゃないか、じゃ、売るぞー。1000データで売るよ、今なら主従契約できるよー」


 主従契約とは装備と契約することでその人しか使えない武器となる。


「おめーはバカなのか、1000ゴードって子供でも買えるだろうがああああ」

「それが目的ではないか、さぁ、さぁ、1000ゴードだよおおおお」


 俺様はもはや金持ちになろうとは考えなくなっていた。

 なぜならお金はありまくるし困ったらどこかの城を襲って売り飛ばそう。


 露店は商店街の場所で、もうお店を開いているのは俺様だけであった。

 それだけさびれてしまっていた。

 王様が戻ったということもあって一時は集まりかけたが、王様がおかしいと気づいてまた離れていった。

 

 そんでもって王様が死亡したので、さらに減った。

 ラルガルシア王国の人口は上下が激しく、気づけば100名くらいになっていた。


 これは結構まずい状況である。

 俺様はなんとかしてラルガルシア王国を盛り上げていこうと思っていた。


 次の日になるとそこらへんを歩いている子供や老人や少年青年、まさかの少女、女性や宿屋のおばちゃんですら伝説の剣エクスカリバーを握りしめている。


 料理屋のおっちゃんはエクスカリバーだと料理がしやすいとの事で包丁の代わりに使っている。

 

 それを見ていたナナニアの口から泡が吹き上がっていたがまぁがんばれと励ましておく。


「おそらくラルガルシア王国の100名くらいの人々に伝説の剣エクスカリバーが広まった事だろう。次は100名の住民を最強にさせる。中には冒険者もいるだろうが、まぁ気にするな」


「で何を売る気だ。今日は、あたしはねあんたの奇行に驚いているんだよ」

「次に売るのはヒーロータイツだ。異世界ではヒーローにあこがれる人達にこれを着せれば、すごい事になるそうだ。さっき俺で試したがありえないことが起きた」


「どんな事が起きたんだよ、あたしは気になるよ」

「10メートルジャンプ出来たり、壁を走ったり、拳で地面にクレーターを作ったり」


「ちょおおおおおおおお」


 なんか俺様はナナニアの反応に疲れたので無視して商売を始める事にした。

 もちろんこれも主従契約することにした。

 売って大丈夫な人にしか売っていない。

 俺はコンタクトレンズを装備していた。


 これを装備すると相手が悪い人間なのか良い人間なのかを理解する事が出来る。

 コンタクトレンズは10万データして結構高かったが無駄な買い物ではないだろう。


 ちなみにヒーロータイツは2000ゴードだ。


「あんたバカなのですかぁ、なんでヒーロータイツが2000ゴードなのぉおおおお、明らかに伝説の剣エクスカリバーのほうが高いでしょうがああ」

「そこは気にするなナナニア、世の中色々あるさ」


「あんたが色々起こしているんだろうがあああ」

「これでも舐めておけ、これは飴玉と言うらしい、100データで買えたぜ」


 ナナニアはおそるおそる飴玉をなめると、女性らしく朗らかな笑顔をしてくれた。


「これはイライラした時にいいらしいぞ」

「ああ、甘い、おいしいい」


「さて、第三ラウンドだぜ」


 城を売却してから3日目が立とうとしていた。

 その頃になると冒険者ギルドでは色々な問題が発生していると聞いた。

 それは良い方向であった。


 大勢の冒険者ギルドのメンバー達が最強の武器を握りしめてアクロバティックな動きを可能としたという噂が広がっていた。


 あまり戦闘で使わないためかおもちゃのよう、または料理の道具として使っている一般人達は伝説の剣エクスカリバーとヒーロータイツを使う事がない。


 あえて言えばヒーロータイツのおかげで老人が走れるようになったり、赤ちゃんがありえないスピードで木を登ったりとしたくらいはあるだろうが。


 確かにこの国は変わろうとしていた。

 色々な意味で。

 

 あと俺はこの国の兵士にはアイテムを売っていない。

 いや断じて売るか。彼らは赤白花騎士団であり本当のリーダーをディヴィというらしい。


 彼らは俺の装備、アイテムを欲しがるし、何度も襲撃されている。

 どうやら俺がピエロとして殺した団長らしき人は偽物だったらしい。


 この国には現在3つの派閥がある。

 1つが冒険者ギルドの冒険者達だ。

 2つが一般市民たちだ。

 3つが赤白花騎士団のように王様がいないからと言ってやりたい放題しようとしている軍人たち。


 だが一般市民も冒険者達もチート級に強くなったので攻撃出来ない。

 赤白花騎士団のメンバーは窮地に立たされていた。


 

「次は一般市民と冒険者向けに栄養を取ってもらおうと思う、この国の栄養は偏っていて、貴族とかの偉い人しか取れない環境だった。回復ポーションSSSは異世界ではビタミンジュースと呼ばれていた。そして今回テレフォンブックから購入するのは! スポーツドリンクだ!」

「で、それはなんなのよ」


「異世界の人はこれを飲むことで運動していたそうだ。この世界では恐ろしい事になりそうだなぐへへ」

「本性出てますよレイガス」


「ナナニア飲んでみてくれ、俺は先ほど飲んで驚愕したぞ」

「あ、これですか、ペットボトルっていうんですね、入れ物」


「それはどうでもいい」

「どうでもいいんかい」


 ナナニアは取り合えずゆっくりと口の中にスポーツドリンクを流し込んだ。

 次の瞬間彼女は驚愕に目を見開き、ごくごくと飲み干してしまった。


「ふぉおおおおおおおおおおおおお」


「だろ、すげーだろ、力みなぎるだろ」


「す、すごい、今なら最上級魔法でレイガスを吹き飛ばせる」

「や、やめてくれえええ、死ぬわ、勇者と魔王の祖先をもつやつにくらったら」


「ふ、今はやめておくわね」


 俺様はほっとしてスポーツドリンクの商売を始めた。

 今回も赤白花騎士団には売らなかった。

 ついに彼らは爆発寸前になろうとしていたのかもしれない。






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