第5話 お得意様が出来ました

 突然扉がノックされた。

 カーテンの無い窓の外から太陽の光が照っていた。

 目をちかちかさせながら俺様は立ち上がり扉を開けた。

 そこには1人の女性がいたのだが、見た目はとても小柄であり、少女と見間違ってもいいだろう。


「おはようございます。うちは冒険者ギルドの受付嬢でテニーと呼ばれていますのであります。この度、冒険者ギルドマスターの指示で迎えに来ました。冒険者ギルドマスターであられるラガスト様があなたに商談があるそうですのであります。ので準備が出来次第、宿の入り口でお待ちしておりまするであります」


「あ、ああ、準備したら行くよ、あと朝飯を食ってなくて」

「それまでお待ちしているつもりなのでごゆっくりしてくださいであります」


「そうさせてもらうよ」


 その後、身だしなみを整えてから、寝ぼけ眼のナナニアを叩き起こして2人して朝食を食べる事になった。


 朝食は食堂で食べられるのだが、そこはいつも朝でも夜でも賑やかなはずだが、今は閑散としている。


 宿屋の女将さんがバランスの良い料理を振る舞ってくれると寝ぼけ眼のナナニアも目をぱちくりとさせていた。


「つまり冒険者ギルドがあんたに何用の商談よ」

「さぁ、会ってみないと分からないしね、俺様は行く事にするが君はどうする?」


「何を言うの? 行くに決まっているでしょう、あたしはあなたの用心棒よ」

「それもそうだね、じゃあ、行くとするか」


 俺様とナナニアが朝食を食べ終わり食器を片付けると、女将さんがにかりと笑ってくれて送り出してくれた。


「では案内いたしましょう」


 受付嬢であるとされるテニーは無言で俺様達を冒険者ギルドまで案内してくれた。

 ここまでなら俺様でも分かる道なのだが、なんと冒険者ギルドの入り口の反対側に付くと、隠し扉を開いて俺様達を案内してくれた。


「俺様たちにこの隠し扉を見せていいのか」

「はい、なんら問題がありません、ここを通るにはうちの魔力データが必要ですので」


「そう言う事か」


 つまり最初から万全の準備はされているという事だ。

 中に入ると書類の山に埋もれている1人の眼鏡をつけた男性が目に入った。


「見た感じ死んでるのか?」


 書類に埋もれて、顔だけ出して白目をむいている。


「いえ、あれは気絶です、1週間近く書類仕事がありましたので」


「なるほど」


 ちなみに一般の冒険者ギルドの入り口から入れば、受付カウンターがあり、受付嬢がいて、クエスト板がある感じだ。

 まさかギルドマスターが裏口からでしか入れる事の出来ない部屋で書類仕事をしているなんて思っても見なかった。


「起きてください、ラガストギルドマスター」


「ふご、これはテニー君ではないか、今日もお綺麗じゃないか」


「マスター今日の朝も同じ事言ってました」


「あれは朝とは言わんのだよ、深夜の4時くらいだぞ」


「その時に指示を下したのは誰でしょうか」


「す、すまぬ、テニー君よきみには色々と迷惑をかけるな」


「もうかかってますが、さて、商談の話でしょう?」


「そうであったな、テニー君が少し前から露店で不思議な商人が活躍しているという話を聞いたそうでな、一度会ってみたいと思ったし、このティッシュ箱とやらはとてつもなく便利そうだし、次から次へとアイテムを無限近く出すものなのだそうだな、ぜひとも商談してみたい、ぐーーーーーーー」


「ギルドマスター、寝ないでください、お仕置きしますよ」


「はが、す、すまぬ、それで商談したいのだが、どんなアイテムがあるんだ」


 俺様は困り果てつつも。


「色々ですが」


「ふむ、今必要とされているのが、回復ポーションSランクだ。これはいつもお得意様の冒険者が素材を集めてくれていたのだが、王様逃亡によりさびれたこの国を捨てて別な国または街に行ってしまったのじゃ、しかしな全ての冒険者がこの国を捨てたわけではなくて、彼等には回復ポーションSランクが必要なのだ」


「あ、ちょっと待ってください」


「うむ、待とうではないか」


 俺様は眼鏡で髪を切る時間がないのか後ろ神をポニーテールのようにセットしているラガスト団長を見て、懐からテレフォンブックを取り出す。

 

 検索機能を発動させると【回復ポーション】でまず発動させ。

 回復ポーションリストが結構な数現れる。


 その中に回復ポーションSランクを見つける事が出来る。

 しかしその上には回復ポーションSSSランクがある。

 回復ポーションSランクが50本で10万データとされている。

 回復ポーションSSSランクが20本で10万データとされている。


「とりあえず。SSSランクのもありますが」


「ちょ、君は今何を言ったか理解しているかね?」


「なぜですか?」


「SSSランクはとてつもないレアで、そうそう簡単に見つからない薬草が必要で、商人とて錬金術師だって1年間に10本作れれば奇跡の代物だぞ」


「へぇ、そうなんですか」


「でいくらで売ってくれる。というかまず本物か確かめたい」


「少しお待ちよ」


「いくらでも待とうぞ」


 取り合えずテレフォンブックから20本の回復ポーションSSSランクを購入する事に。10万データが使用されるので4990万データが今の残金とされる。

 残金の表示はテレフォンブックに表示されている。


 俺様は堂々とそれをギルドマスターに見せる事にすると。


「う、うそだろおおおおおお」


 ラガストギルドマスターは絶叫を張り上げて椅子を後ろに傾かせてそのまま盛大に背後にぶっ倒れたのであった。


 その音と共に書類が散らばってしまった。

 


「2、2、20本て、どこからだしたー見た限り本から出たような」


「俺様のテレフォンブックは異世界に存在するアイテムを取り出す事が出来るのです。その回復ポーションSSSランクは異世界で略すとビタミンジュースらしいです」


「な、なんぞやビタミンジュースて」

「さぁ、俺様も知りません」


「さて、困ったな、その本の事をしったら誰でもそれを奪いに来るぞ」

「この本は俺様にしか使えませんので盗まれても戻ってきます」


「な、なんと、そんなすごい機能が」

「まぁ俺様のテレフォンブックはいいとして、他に必要な物がありますか」


「そうだな、今、書類をまとめるのに箱に入れているのだが、毎回取り出して1枚1枚めくるのが面倒でな、何かいいものがあるか」


「これなんかどうでしょう」


 俺様は即座に見つけ出すことに成功した。


「このフォルダーというものに挟めていけば本のように確かめる事が出来ます。1枚1枚めくってまた元の場所に戻すという面倒な動作がなくなります」


「おお、それはどのくらいの枚数を挟めて置けるのだ」

「ざっと100枚です」


「うむ、足りんな、それを1000個くらい売ってくれ」

「承知しました。他には何が」


「そうだな、冒険者ギルドでの食材は地下で保存しているのだが、それを毎回地上に持ってくるのが面倒だ。何かいいものがないか」


「それなら冷蔵庫がいいでしょう」

「それはどういうものだ」


「大きな箱が電気の力で動いており、中は冷たくなっております。半分下だけを冷凍庫にして氷などを作る事もできるでしょう」


「ほう、それはどのくらいの食材が入るのだ」


「ざっとこのくらいです」


「それでは足りん、それを20個くらい購入しよう」

「ですが、電力が必要でして、風力発電と自転車型発電があります」

「それはなんだ」


「風力発電は風の力で電気を作ります。自転車型発電は2個の車輪を回転させて電気を作るというものです」


「では冷蔵庫とやらは電気を食うのか」

「結構くいますので風力発電は3個程設置したほうがいいでしょう」

「自転車型は念のため10台頼む」


「承知しました」


「自分からの依頼はこれくらいだ。さすがに即座に用意は出来ぬだろう?」

「いえ、出来ます」


 その時ラガストギルドマスターの顔が驚きの表情になっていた。

 彼は目をぱちくりさせている。


「レイガス、ダメだギルドマスターは驚きのあまり正気を失っている」

「ナナニア、彼は恐らく正気だからこそおかしくなってるのではないだろうか」

「いえギルドマスターはいつも正気じゃないでありまする」


 ナナニアとレイガスと受付嬢のテニーが冒険者ギルドマスターを見て笑っていた。

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