第142話 knows

フランスの女神は、片側廊下のファーストクラス4号車で、彼を見送り

デラックス個室にもどる。

廊下から、短い階段で登り

ドアを開くと、デラックス個室。


窓際に、広いベッドがあり

床を挟み、正面が洗面台、ドレッサー。

左手がデスクで、スツールもあるが



至ってビジネスライクな作りで、豪華と言う

雰囲気でもない。




そのあたりが、シンプルでいいと


女神は思う。



ドアキーはナンバー式なので、荷物の多い旅行には便利だ。





バスルームこそないが、それは

ファーストクラス専用のシャワールームがついているので

空いている時間ならいつでも使える。





「覗かないでよね」と、他の神様たちに

心で通信(笑)。





「そんなことするかい」と、みんなから返事が来る(笑)。



もっとも、神様だから

見ようと思えば見れるのだけど



そんな事をしても嬉しくもない。



生き物ではないから、である。









備え付けのバスローブと、タオル、シャワーソープやブラシ。



列車のロゴマーク入りのポーチに入っていて

それは、列車のボディそっくりのベージュ。



「こういうノベルティって、欲しがるのよね、マニアって」と、フランスの女神は


さっきの彼の背中を思い出す。





確かに、疑うなら

これを盗みに来たとも考える事もできる。




でも、疑ったところで真実はわからない。



最初から疑っていては、心の交流などできないし




疑う気持ちそのものも、自己防衛、つまり

ノルアドレナリン

系の働きである。







「人間って大変ね。」と、女神は微笑みながら

シャワールームに向かった。


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