第138話 railwaywith

顔つきが、どうであれ

理想を得たひとの表情は、美しい。



それは、もちろん生物的な行動だから

生まれ持って記憶、遺伝子に残る[人間的な]

肯定的な人生を歩むひとの姿である。




言ってみれば、寄り添って互いに

人生を生きていくべき人類の在り方である。




彼の心の中には、それまで自己防衛の為の

戦う気持ち、ノルアドレナリンが満ちていたけど




理想の為に戦える彼となったいま、

心には壮大な気持ち、ドパミンが

満ちていたりした。




目的の為なら、どんな事でもできる。



幼い頃から意味もなく罵られていたせいで

彼は、自信を無くしていたけれど




女神に認められたせいで、その自信を取り戻した。









女神は、彼の未来を少し、覗いてみた。





田舎のローカル線の小さな駅で、委託駅員として


働く彼の姿が見えた。




笑顔で、駅舎からトイレまで掃除でき


嫌な気持ちにもならない。



それは、彼の[理想]がそこにあったから。






以前の彼だったら、自分を守る気持ちだけが

先に立って



ひとのつかったトイレ掃除など、とても

できなかっただろう。




でもいまは、自発的にそれをしている。




「これは、僕の駅舎なんだ」




そういう思いで、誰に指示されるでもなく

する、そういう姿は利用者をも感動させる。



列車が駅につくと、乗り降りに不自由する


おばあちゃんの手を引いてあげたり、荷物を持ってあげたり。




他ならぬ[鉄道]を愛する気持ちは


人々の社会を

愛する事でもあった。





そんな彼を、恋しい気持ちで見る

女学生の姿も、背景に生まれたりして。





そう、魂のある人は引き合うのだ。








フランスの女神は、一瞬で彼の未来を見て





「やっぱり、人って理想が必要なのね。損得みたいな相対じゃなくて、絶対的な」と




なんとなく、そう思ったり(笑)。



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