焼き物
【初めてのハンバーグ】
僕の家には料理の本がたくさんある。
僕は昔から料理本を買うのが好きだった。
写真を見て、材料を見て、作り方を見て、どんな料理が出来上がるんだろう? どんな味がするんだろう? なんて想像するのが楽しかった。
ルナがこの家に来てからというもの、その料理本を眺める日が増えた。それに合わせて彼女もまた、書棚から引っ張り出して眺めている日が増えた。それ以外の本が無くて申し訳なかったが、次々にページをめくっては熱心に眺めていた。
「なにか食べたいものはあったかい?」
ルナは小さくうなずくと、一番年季の入った一冊を取り出してきた。まぁ偶然かもしれないが、それは僕が初めて買った一冊で、今も一番のお気に入りだった。彼女はページをパラッとめくり、両手で開いて僕に見せてくれた。
「お、ハンバーグか! いいね。これは作ったことあるよ。すごくおいしかった」
そう、この本は理解しやすかったので、載っていたレシピを色々と作ってみたものだよ。どれも写真通りの要領で作れて、どれも僕好みの味だったんだ。僕が料理の楽しさを知ったのは、この本のおかげだ。
そこで閃いた!
僕は本を受け取り、クルリと回してルナに見せてから提案した。
「あのさ、このハンバーグ、自分で作ってみたらどう?」
「…………!」
あれ? なんか白くなってる?
どうやら想定外で思考がパンクしているらしい。LUNAの容量は無尽蔵なのに。
「あのさ、料理ってね、食べるばかりじゃなくて作るのも楽しいんだよ」
「…………」
「それにさ、この本の通りに作ればちゃんと美味しくできるんだ」
どうやらその言葉が効いたらしい。ルナはコクリと頷くと、決意の表情も凛々しく自分でエプロンを巻いたのだった。
さて、ルナはどんなハンバーグを食べさせてくれるのだろう?
今日は僕のお腹がぐぅと鳴った――。
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