第203話 厄介事

「こんにちは~!」


「あら小山内君、いらっしゃい。天斗なら部屋に居るわよ」


と言うが早いか、階段を降りてくる天斗。


「よう!来たな!」


「黒ちゃん!この間のかおりんの父ちゃん、凄かったなぁ!マジ感動したわ!カッコ良かったよなぁ!何度も思い出しては眠なくて寝不足だわ!」


興奮気味に話す小山内。その会話を聞き


「えっ?薫ちゃんのお父さん?」


天斗の母美知子が天斗に聞いた。


「うん、ちょっとこの間、世話になった人なんだけど、それが重森の父ちゃんだったらしくてさ!」


「小山内、今日重森はどうしたんだよ?」


「何だか父ちゃんとお母さんを会わせるって言って出かけちゃったんだよ。」


「えっ?薫ちゃんのお母さん?」


また美知子が口を挟む…


「母さん、重森のお母さん知ってるの?」


「ううん…薫ちゃんのお母さんの話は聞いた事無かったから…」


そう言って誤魔化した。


「そっか」


そう言って天斗と小山内は2階の部屋に行ってしまった。


「あなた!どうしよう…」


動揺した美知子がリビングに居る天斗の父、正男の元に駆け寄る


「天斗が…天斗が…」


オロオロする美知子に何事かと正男が


「天斗がどうした?2階に居るだろ?」


「違うの!違うのよ…あの人に…」


「美知子、落ち着いて話しなさい。話しが見えて来ないじゃないか!」


美知子が顔を引きつらせながら


「天斗が矢崎拳に会ったって…」


そう言ってその場に座り込んでしまった。


「美知子…聞きなさい」


正男は落ち着いて優しく穏やかな口調で美知子に話す。


「美知子、天斗の父親は誰だ?」


「………あなた…ごめんなさい…そうよね…天斗の父親は…黒崎正男…そうよね…」


美知子はすがるように正男を見つめた。


「そうだろ?誰が何と言おうと天斗の父親は俺だろ?何も間違ってないだろ?天斗が誰に会っても何を知っても何も問題ないんだよ。何も怖くないんだよ。」


正男はそう言って美知子の頬を手で包み込んだ。


そして2階の天斗の部屋。


「重森が居なくて暇だから来たのか?」


「違うんだよ!実は黒ちゃんに相談したい事があってさぁ…ちょっと黒ちゃんの知恵を貸して欲しいんだよ!」


「相談?ちょっと待て!また厄介事か?」


「いやいや実は…俺、かおりんにプロポーズするって決めたんだよ」


「えっ?今更か?」


「そうなんだよ!今更って思うだろ?でもかおりんが、ちゃんとプロポーズしなきゃ認めないって…だから頼むよ…」


そう言って土下座する小山内。


「え?ちょっと待てって…何で土下座?」


「かおりんが嬉しくて思わず涙するようなロマンチックなプロポーズ、一緒に考えてくれよ!」


「………マジか……」


「ここ数日ずっと考えてるんだけど、どう言ったら喜ぶのか…女心なんかわかんないし…」


「まぁ、そうだろうな…俺でもわかんないんだから小山内なら尚更だわな…」


「だろ?だろ?だから一緒に考えてくれよー!一緒に考えたら良いこともあるんだしさぁ!」


「ん?良いこと?何で?」


「だって黒ちゃんもいつか理佳子ちゃんにプロポーズするだろ?俺がかおりんにするプロポーズを黒ちゃんも使えばいいじゃん!これぞ一石二鳥!」


小山内は胸を張って言った。



「えーっ?」


いやいやいや…マジないし…小山内に背中を見せてため息をつく…


そして天斗の提案で理佳子に助けを求める事にした。


「もしもし、理佳子か?」

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