第201話 不思議な子

その日の夜


「もしもし、理佳子か?」


理佳子はずっと天斗の心配をしていた。何の連絡もなく、ただ一人不安な気持ちで待つ時間はまるで永遠に続く地獄のような感覚だった。そして急に天斗から着信があって声を聞いた瞬間、理佳子は張りつめていた糸がプツンと切れたかのような感覚になり、ペタンと床に座り込んでしまった。


「……………」


理佳子はすぐには言葉が出ない。


「理佳子?どうした?」


「どうした?じゃないよ…」


そう言って涙がこぼれ落ちる。


「何も言ってくれないし…たかと君もかおりも様子おかしいし…タカはいつもと違うし…どんだけ心配したと思ってるの?たかと君の身にもしものことが起きたらって…」


そう言ってシクシク泣いている。


「理佳子…ごめん…でも、本当に何でもないからな?」


「じゃあどうしてクリスマスのこと何も言ってくれないの?私…凄く楽しみにしてたのに…」


「いや、ほんとにごめん…ちょっと忙しくて…まだ何もプレゼント用意出来てなくて…」


「そんなのどうでもいいの!プレゼントを楽しみにしてたんじゃないの!たかと君に会えるのを…このイベントに会えるのを女の子は楽しみなんだよ?どうしてわからないの?」


「いや…その…なんつーか…悪かったよ…」


「たかと君…私に隠し事しないで…そんなに心配させないで…一人で悩まれたら…返って辛いよ…置いてきぼりにされてる側の気持ちがわからないの?」


「理佳子…」


「私じゃ何の役にも立てないから?だから何も言ってくれない?そして、もしそのままたかと君に何かが起こってそれっきりだったとしたら?私どうすればいいの?もしあの時知ってれば何か出来たかも知れないとか…知ってるのと知らないのでは覚悟だって違ってくるんだよ?どんな状況でも私はたかと君の邪魔はしないから…だから隠し事だけはしないで…お願い…いつも側に置いて…」


理佳子が泣きながら訴えるその悲痛の叫びに天斗は涙が出そうになる。


「わかったよ…本当にすまないと思ってる…」


「もう今回のことは何が起きたのか聞かないよ…でも、たかと君のその様子からして…また何か危険な目にあったのはわかる…約束して…もう私を一人ぼっちにしないで…」


「あぁ、約束するよ…」


「明日は…会えるの?」


「もちろん!ゆっくり…会おう」


「うん…」


理佳子は電話を切ってその場に座ったまま放心状態だった。そしてタカが理佳子の膝元に居たのに気付く。

タカ…

タカは理佳子にベッタリ甘えて理佳子の涙を舐める…

タカありがとう…たかと君大丈夫だったみたい…もう心配要らないよ…

タカはミャアオと鳴いて返事をした。

タカって…ほんとに私の気持ちが全部わかってるみたい…いつもそうだよね?不思議な子…

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