第197話 救世主
たかと君…クリスマスイヴだよ…明日の予定どうなるの?まだ何も決まってないのに…やっぱり何かあったのかなぁ…
理佳子は自分の部屋の机の前で椅子に座り、肘を机上に乗せて写真たてに写っているたかとを見ながら独り言を言っていた。
せっかくたかと君の為にクリスマスプレゼント用意したのに…
理佳子はたかとの喜ぶ顔を想像しながら選んだプレゼントを渡す日を楽しみにしていた。それが自分に隠し事しているような、そして本来なら今日この日に会えてもおかしくない状況で何の連絡も無いことに落ち込んでいた。そしてその時…たかとから誕生日プレゼントと言って渡された木彫りの可愛いフクロウの壁掛けの飾り物が、ゴトンと音を立てて落ちた。理佳子がビクッと飛び上がった。
たかと君…まさか…たかと君の身に何かあったの?あの時の胸騒ぎ…そしてタカも理佳子の足元に来て
ミャア…ミャアオ…
何か理佳子に語りかけているような鳴き方をした。
タカ…教えて…たかと君の身に何が起きてるの?タカはただ理佳子に向かって何か訴えている。
やっぱりタカも普段と違う…絶対おかしい…
一方小山内家では
「かおりん、そんなに心配?」
吟子は薫とリビングのテーブルを囲んで座っていた。
「お母さん…元はと言えば…」
「かおりん、あんたが落ち着かない気持ちはわかるよ…でも、あんたが行ったら余計に話がこじれて状況が悪化したりするってことはないかい?この前のトラブルの時みたいに…そしてみんなに心配かける…あんたはもう守ってくれる仲間が沢山いるんだろ?まぁ、今回の件は特別ヤバい山かも知れないけど、でも私が大丈夫って言ったら大丈夫さ!だからあんたをここに留めた。もしそうじゃ無かったら私が出てるさ!」
「お母さん…どうしてお母さんはいつも何もかもお見通しなの?どうしてそんなに全て解決してくれるの?」
「かおりん、くぐった修羅場の数も、人生経験も、かおりんとは比べ物にならないほど私も経験してる。こんなんでも一応人並み以上には苦労してきてるつもりさ!」
そう言って笑っている。何となく薫もそうなのかと思い始めた。その矢先…どこかで救急車のサイレンの音が鳴り響く。薫はその音に過敏に反応した。
「お母さん!」
「心配要らないって!どこかその辺で事故でもあったか何かだろ?」
「でも…」
「まぁ、そのうち嵐が去っていつもの日常生活が始まるよ…清が母ちゃんただいま~ってね」
それならいいんだけど…今この瞬間にも…誰かの身に何か起きてたとしたら…
薫は胸騒ぎがして、いてもたっても居られない…
そして暴力団関係事務所では、日本刀の鞘を払った山口が、その白刃をキラリと光らせ天斗達に迫る!
「ここまでヤクザ者がコケにされたとあっちゃ、他の組にも示しがつかねぇよ…これもお前らがこんなド派手に暴れてくれたせいだ!悪く思うなよ!」
そう言って山口が日本刀を振りかぶった瞬間
「御免くださーい!警察の者ですがぁ~」
それは太くドスの利いた声だった。山口は慌てて日本刀を鞘に戻して壁にかけ直した。
天斗達、高校生軍団は流石に一瞬日本刀にたじろいだが、救世主の声に胸を撫で下ろした。
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