第196話 奇襲

「あぁ知ってるよ!先ずは佐々木日登美を解放してもらわなきゃ喋れねぇな!」


「オイ!調子に乗るなよ!俺達とお前は対等な立場でもないんだからな?」


「あぁ、十分わかってる!いい大人達がたかだか高校生相手にこんなに大勢で囲まなきゃならないほど小さい奴らだってな…」


「なるほど…お前なかなか肝座ってんな…卒業したらウチ来ないか?こいつらよりよっぽど使えそうだ!」


そう言ったのは芹沢だった。子分達はこれにムッとして


「くそガキ!さっさと言わねぇともう2度と家には帰られなくなるぞ!この意味がわかるか?」


「ハナからその覚悟で来てるに決まってんだろ!だが、佐々木日登美は家に帰してもらうぞ!お前らみたいないい大人が寄ってたかって少女に薬なんか売らせて…それを何の恥じらいもなく偉そうに…テメェらみたいな奴を見るとむしずが走るんだよ!」


「このガキ…おもしれぇことを言いやがる…ヤクザ相手に説教するとは…」


そう言って子分達は高笑いした。その時芹沢の上と見られる貫禄のある中年の男が現れた。


「君、なかなか面白いねぇ…いやぁ大したもんだ!君に免じてここは俺が収めてあげよう。どうだ?重森って女の子のことは諦めてあげる。その代わり佐々木日登美のことは君達も諦めてくれ!悪くないだろ?俺は山口という者だ」


「いいや、納得出来ない!こっちは何も譲歩する理由がない!」


「ハハ、いゃあ参ったな…こっちはいい条件出したと思ってるんだが…どうやら五体満足で帰りたく無いらしいね…」


「くたばれ!ドブネズミ!」


「いいねぇ…この世の怖さを知らない若者ってのは…昔を思い出すよ…俺達も向こう見ずにヤンチャしたもんだ!ヤクザ相手にだって怯むことはなかった時代もあったよ…」


「それ以上喋るな…お前らの言葉を聞いてると吐き気がする!」


「わかった!」


山口がそう言って芹沢に向かって首を振って


「殺れ!」


と一言


天斗と小山内が身構える。その時外が騒がしくなってきた。


「ん?何だ?ちょっと外の様子見てこい!」


山口と名乗った男が芹沢に言いつけた。


「はい!」


そう言って芹沢が素早く部屋を出ていこうとした時…


ボコォ~ッ


芹沢が物凄い勢いで部屋の中へぶっ飛んで来た。


そこにいた暴力団関係の男達が敵の奇襲かと思い一斉に懐から短刀に手をかける。


「何事だ!」


山口が怒鳴った!


「何だよ…ヤクザってのも大したことねぇな…拍子抜けだ!」


そう言って入ってきたのは伝説黒崎天斗だった。


この男…武田剛と名乗った男…いったい何者?天斗は奇妙な縁だと思い黒崎を見つめていた。


「おっ!黒崎じゃねーか!薫は無事か?」


伝説黒崎が天斗に向かって言った。


「お前…確か武田剛の亡霊だったよな…」


「ハハ、そういやそうだな…」


「何しに来たんだよ!」


「お前一人じゃ心細いと思ってな…駆けつけて見りゃ物凄い数が集まってるじゃねーか!」


「何?」


天斗と小山内が顔を見合わせた。そしてぞろぞろと見知った男達が天斗達の居る部屋に押し寄せてくる。


「何でお前ら…」


小山内が言った。


「とりあえずまだ生きてるみたいだな…」


仲間達がそう言った。


ヤクザ相手とはいえ、圧倒的な数の違いに高校生軍団が押していた。流石にこの状況に山口というヤクザ者も黙ってはいられず


「このガキ~!ブッ殺してやる!ヤクザをナメるなよ!」


山口が壁に掛けてある日本刀を掴み鞘に手をかけた!

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