第151話 鬼の目にも涙
「かおりーん、お風呂沸いたから入りなさーい!」
「はぁい!」
二人は階段を降りて行く。
「あの、お父さんはどうされたんですか?」
「あぁ、もう寝ちゃったよ。あの人寝るの早いから」
薫が時計を見た時には夜の10時を回っていた。
「かおりん、入っといでよ」
「うん、じゃ、お母さんお風呂使わせてもらいます。」
「うん、そんな遠慮することないから自由に使ってね」
「はぁい」
タカ…最近たかと君から連絡来ないね…なんか忙しいのかなぁ…
ミャアオ…
タカもそう思う?
天斗も家に帰り理佳子に薫のことを相談するため電話をかける。
理佳子の携帯に着信…たかと君って…私の心読めるのかなぁ…
「あっ、もしもし?理佳子か?」
「うん」
「あのさ、重森の事なんだけど…ちょっと今ヤバい事件に巻き込まれてて危険が迫ってんだ…それで重森の事だから無茶しかねなくてさ…」
「うん」
「あいつを…拘束する手段を考えて欲しいんだけど…」
「そっかぁ…じゃあしばらく落ち着くまで家で預かる方が無難かなぁ…」
「おっ!それはいいな!」
「お母さんに聞いてみる!後でかけ直すね」
「あぁ、わかった頼むよ」
「うん、また後で」
「おぅ」
「お母さん、気持ち良かったです。ありがとうございます」
「良かった。じゃ、清も入っちゃいな」
「うん」
「ねぇ、かおりん…家では敬語なんて他人行儀だから止めなよ。私のことを母だと思って接してくれる?」
「お母さん…」
薫は吟子の温かい言葉に思わず涙が目に溜まる。
「私…物心付いた時にはお母さんは居なかったから…お母さんってどういうものか全然わからなくて…」
「そっかぁ…かおりんも色々苦労してきてるんだね…」
二人はリビングの椅子に腰をかけてコーヒーを飲みながら話している。
「お母さんのことを、本当の母みたく思っても良いですか?」
「かおりん…私ね、凄く女の子が欲しかったの…で、清の次は絶対女の子出産しようって頑張ったんだけど、二人目流産しちゃってね…それでもう子供産めない体になっちゃったのさ…」
「そうだったんですか…」
「だから、かおりんが私のことお母さんって思ってくれるのはすっごく嬉しいよ!」
「お母さん…」
その時、吟子が立ち上がってかおりんの側で両手を拡げて
「かおり、おいで…」
そう言った。薫は吟子に抱きつき
「お母さん…」
吟子に抱きしめられた薫は声を圧し殺して泣き出した…
かおりん…よっぽど淋しかったんだねぇ~…可哀想に…母親の温もりも知らずにずっと堪えて来たんだ…甘えたくても甘えるところがなく辛かっただろうねぇ…よしよし…
吟子はずっと薫を抱きしめながら頭を撫で続けた。薫も母親の温もりを感じて、生まれて初めて母の愛情というものに触れた気がした。
「お母さん…お母さん…お母さん…」
薫は泣きながら吟子に甘える
「よしよし…」
吟子も薫の甘えに母性が働いて涙がこぼれ落ちる。小山内が風呂から上がったことに二人は気付かなかった。
母ちゃんが…泣いてる…鬼の目にも涙か…
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