第149話 男を見せる小山内
「かおりちゃん!話がある!」
天斗と小山内が薫の側まで近づき
「かおりちゃん…かおりちゃんの気持ちは痛いほどわかるつもりだ!でも、やっぱりかおりちゃんはこの件から引いた方が良いと思う!俺と黒ちゃんで何とかするから、かおりちゃんは大人しくしててよ!」
そんな言葉でこいつが黙っていられる気性とは到底思えないな…
「清…ありがとう…でも、これは私自身がどうしても決着つけなきゃならない問題なの…お願い…みんなを巻き込みたくない…もう誰も死なせたくない…もう…愛する人を目の前で…死なせたくないないの…」
「それでお前が死んだら小山内はどうなんだよ?今度は小山内がお前の二の舞になるのか?」
薫は言葉に詰まる。
「かおりちゃん…俺は絶対死なねぇよ…約束する!ずっと俺はかおりちゃんの側に居る!」
「そう言ってあの人は私の目の前で死んだんだよ!!!あの時…私も一緒に死ねばよかったんだ…」
「バカヤロウ~!!!」
珍しく小山内が薫に怒鳴った。
薫は涙を流しながらビクッとして小山内を上目遣いに見つめる。
「かおり!俺を信じろ!俺は死んだそいつとは違う!」
「なぁ、重森…俺さっき…武田剛って名乗る男にお前を止めるように言われたんだ…」
その名前を聞いた瞬間薫が固まった…
武田…剛…誰がその名を…そうか…あいつがたかとに会いに来たんだ…
「黒ちゃん…武田剛は…死んだかおりちゃんの元カレの名だ…」
「あ?じゃ、あの男はいったい…」
「とにかく放っておいて!何も知らないくせに関わらないで!」
そう言って薫は走って行ってしまう。
小山内はそれを追いかける。
「小山内!今はそっとしといてやれ!」
「黒ちゃんは先に帰ってくれ!ここは俺に任せろ!」
どいつもこいつも人の話し聞かないやつばっかりだな…
「かおり!ちょっと待て!」
小山内は後ろから薫の肩を掴み止めた。
「かおり!何で一人で無茶しようとするんだよ!俺達を信じろ!仲間を信じろ!」
薫は泣きながら振り返る。
「清…私だってどうしたらいいかわからない…でも…あの時のトラウマが…剛のトラウマが…やっぱり前に進めないよ…どうしてもここで自分自身に決着つけなきゃ…清…」
薫は号泣して小山内にしがみつく。
小山内は優しく薫を抱き締めて
「大丈夫、大丈夫だよ…心配要らない!ハニー…何も心配要らない…お前の仇は俺がちゃんと取ってやる!」
「清…清…」
小山内は震える薫をギュッと抱きしめ頭を撫で続けた。しばらくすると薫の震えが止まり
「わかった…清を信じる…仲間を信じる…」
「よし…じゃ…今夜は家においでよ…一人じゃ心細いでしょ?」
薫は黙って頷く。
「しかし…武田って男が幽霊になってまで黒ちゃんにかおりんのことを託すとはな…何で俺んとこに来なかったんだろう…嫉妬か?」
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