第142話 愛に飢えた狂犬
小山内は加藤の肩をポンと叩き鼻血を垂らしながらニコッと笑った。
加藤はその優しい笑顔を見て胸が熱くなるのを感じたが…
「約束したからにはあんたの子分になってやるが…いつか必ずリベンジして俺があんたの親分になるからな!」
「へへっ…挑戦なら何度だって受けてやるさ…だがな後輩…親分とか子分とか…そんな悲しいこと言うな!仲間には上下なんて要らねぇ!全て許し合えるのが仲間だ!お前の今までの悲しみは全部俺が受け止めてやるよ!もう淋しくなんかないぞ?」
そう言って小山内はガッチリと加藤をバグした。
加藤は不思議とこの男からの気色悪いバグに包まれて温かい気持ちになった。
この男は…まるで太陽だぜ…こんな感覚…生まれて初めてだ…なんて優しい温もりなんだろう…
加藤の目には自然と涙がこぼれ落ちていた…
俺は…何で泣いてんだ…何でこんな男にバグされてこんなに嬉しいんだ?何で…こんなに…愛情?これが愛情ってやつなのか?これが仲間ってやつなのか?俺は今まで…何で仲間を作らなかったんだろう…こんなに温かい気持ちになれるなら…もっと早くに仲間欲しかったよ…
「小山内…先輩…俺を…仲間に…してください…」
「はっ?バカなの?だからもうとっくに仲間だって!お…お前…」
小山内は加藤の涙を見て全てを悟った。
こいつ…ずっと愛情に飢えてたのな…その飢えた愛情が欲しくて、淋しさゆえに狂気の拳を…もう…大丈夫だぞ!お前はもう…一人じゃない!
小山内先輩!小山内先輩!カッコ良すぎッス!俺はあなたの事を誤解してました…小山内先輩最高ッス!
そして信二郎も小山内をリスペクトする。
それから加藤浩司と相澤信二郎は、まるで小山内の舎弟のようについてまわるようになった。
「小山内…お前…お供増えたな!」
天斗は金魚のフンのようについて歩く二人を見て大爆笑していた。
「黒崎さん…例え小山内先輩の親友だとしても、この人の事を笑うのは許さねぇぜ!」
「おうおう、小山内も人垂らしだなぁ~…お前、女にはモテねぇけど、男にはやけにモテるじゃねぇか!」
「黒ちゃん、花には水を!人には愛を!だ。それがじっちゃんの遺言だ…」
「そうかお前のじいちゃんもう亡くなってんのか…」
「いや、まだ生きてるけど…」
「紛らわしいわ!」
「お陰で私との時間は大幅に減ったけどね…」
薫が小山内を睨みながら言う。
「お前ら、俺の彼女が淋しがってるだろ!黒ちゃんの金魚のフン転がししろ!」
「何だよその…金魚のフン転がしって…厄介ごと押しつけてんじゃねぇよ…」
「厄介ごとって…黒崎先輩…そりゃ酷いッス…」
「なぁ、黒崎さん…俺はまだあんたの事を認めてねぇ…あんたが小山内先輩以上の器じゃ無きゃ俺は認めねぇ!」
「あぁ、そうかいそうかい…こっちはその方がめんどくさくなくて丁度良いぜ!」
「俺は黒崎先輩のこともリスペクトしてます!そして…かおり先輩のことも…」
信二郎は薫の方を目を伏せながら見ている。
こいつもしかして…重森のこと…マジか!どいつもこいつもドMばっかりだな…
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