第136話 新学期、新入生

4月に入り桜も満開を迎え新学期に相応しいピンク色の花びらが風で舞い散る。春らしい風が新入生達の頬を撫でる。


黒崎先輩!今日から憧れの黒崎先輩と同じ学校だ!数々の伝説を作り上げたあの人に、奇妙な噂が沢山あるが…そんなの関係ねぇ!俺は絶対あの人に弟子入りするんだ!

相澤信二郎あいざわしんじろうは黒崎天斗に憧れてこの学校に入学した新入生だ。数多の伝説を作った男に心から崇拝している。

そして新入生の中では、野望を抱く者達が沢山いた。もし黒崎を倒せば、一気に名をはせる!彼らにとってこれ以上のビッグなチャンスは他にない。淡い夢を見てそれぞれ地元で名の通った猛者達が黒崎天斗を虎視眈々と狙っていた。

他にも、黒崎天斗の名前に惹かれたミーハーな女子達もそれぞれの想いを胸にときめいていた。


「黒ちゃんおはよう!」


「おう!小山内、今日から新入生とご対面だな…」


「おう!可愛い新入生達の熱い視線をビンビン感じるぜ!」


その時後ろから


「あのぉ…」


小さな震えるような声で呼び止める声が聞こえてきた。


「はい!何でしょう?」


小山内は振り返り元気よく返事したが…


「あのぉ…これ…」


照れ笑いしながら新入生の初々しい女子が三人並んで天斗に何かを差し出した。


「え?俺?」


そう言って三人から何か小さい封筒に入ったものを受けとる。


「それじゃあ…」


三人は目を伏せキャーキャー言いながら足早に消えてしまたった。


「黒ちゃん…」


小山内は恨めしそうに俺を睨む。


「きっとそれ…果たし状じゃないか?」


小山内…そうひがむなよ…こんなのもらったって嬉しくねぇよ…


「小山内…お前は重森がいるだろ?」


そこへ後ろから


「何の話?」


重森が声をかけてきた。


「たかと、さっき可愛い後輩達から何かもらってたみたいだけど…」


「あぁ…何かもらったな…」


「かおりん!こいつ浮気者だよ!女子からキャーキャー言われちゃって…」


「あんたもキャーキャー言われたいわけ?」


「そりゃ、男なら女子からキャーキャー言われたら悪い気は………し………しま………せん…」


小山内は薫の冷たい視線に気付きタジタジになっていた。


「俺は全く興味ねぇよ…前の佐々木日登美の件で懲り懲りだからな…」


「そうだよね…理佳子を泣かせたら許さないからね!」


「わかってるよ」


薫は小山内をずっと睨んでいる。小山内は声には出さずごめんなさい、ごめんなさいと口パクで謝っている。


そこへいきなり背後から


「黒崎先輩!!!おはようございます!今日も良い天気ですね!」


見ず知らずの新入生が元気よく挨拶してきた。


三人はキョトンとして


「お…おはよう…」


天斗が言った。


「では!失礼します!」


そう言って相澤信二郎は走って学校へと向かう。


「誰だあれ?黒ちゃん知り合い?」


「さぁ…全く知らん…」


「たかと…何か厄介なことになりそうだね…」


その時は薫が言った言葉の意味がよくわからなかった。

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