第133話 暗闇の中の光明
「理佳子、何で来るなら来るって言ってくれなかったんだよ…理佳子来るなら学校なんか行かなかったのに…」
「だって…サプライズでって思ってたから…」
「サプライズ?って?」
「ほんと鈍いよね…バレンタインじゃん…」
薫が言う。
「あっ!そうか!今日バレンタインデーか?俺はそういうの縁が無かったから忘れてた…」
「じゃ、うちらはお邪魔だから行こうか?」
薫が小山内の腕を引き帰ろうと促す。
「私は全然大丈夫だよ…」
理佳子が言った。
「そう?じゃあせっかくだし…」
小山内が空気を読まずに居座ろうとする。
「理佳子ちゃん、さっきさぁ~、新入生が黒ちゃんに…」
ドスっ
「うっ…」
薫が小山内の脇腹をド突く。
「いいから帰るよ!」
これ以上小山内がやらかさない内に退散しようと薫は強引に小山内を引っ張っていき
「お邪魔しましたぁ~」
そう言って二人は家を出ていった。
「何だか賑やかそうねぇ…いつもあんな感じなの?」
天斗の母が言う。
「ま…まぁな…いつもコントみたいな感じだ…」
「たかと君楽しそうだね」
理佳子も笑いながら言った。
「いや…どっちかって言うと…正直疲れる…」
「天斗お腹空いたでしょ?理佳ちゃんも一緒に夕飯にしましょうね?」
「ありがとうございます。」
「じゃ、用意出来たら呼ぶから」
二人は天斗の部屋でくつろぐ。
「理佳子、ビックリしたよ…」
「たかと君、凄く会いたかった…」
理佳子…
たかと君…
二人は抱き合い熱いキスを交わす。
「たかと君…私…前にたかと君が助けに来てくれた時…たかと君が変わっちゃったことに凄く淋しい気持ちになったの…」
俺は自分自身でもその事で悩んでいた…理佳子に言われたこと…そして薫から教わった言葉…自分の中で複雑なものが胸を締め付けてきて、俺を苦しめていた。だから理佳子からそう切り出されたとき…俺は暗い気分になった…
「うん…」
「でもね…それは私が薫に嫉妬してただけなんだって気付いて…たかと君に責めるようなこと言ったけど…ごめんね…たかと君は何も変わってはいなかったんだよね…ずっと私のことを強く想い続けてくれてたんだよね…だから、それを謝りたかったの…」
「理佳子…」
俺は理佳子の言葉に救われる思いだった…俺は怒りで我を忘れて石田にやり過ぎてしまった…もし、あの時重森が俺を止めなかったら…最悪の事態になっていたかも知れない…敵にも…情けは…必要なんだ…怒りの感情に呑まれて拳を振るえば…それはただの暴力でしかない…俺は人を傷つける為に力を欲したわけじゃないんだ…
「理佳子…ありがとう。あれからずっと俺は悩んでたんだ…俺のしたことは…正しかったのか、間違っていたのか…でも、何か答えが見えてきた気がするよ…俺は、理佳子を守れる力があればそれだけで十分…お前を…あい…」
そう言いかけたとき
「ご飯出来たよ~!」
下から母さんの声が飛んで来た。
「フフっ…行こ、たかと君」
「あぁ…」
二人は照れ笑いをしながら階段を降りていく。
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