第129話 一番大事なことは何?

2月に入って寒さのピークを迎える。

理佳子と本田麻衣はバレンタインデーに向けてデパートへ買い物に出かけた。


「理佳子、黒崎君にね…この前、もし理佳子に何かあったらすぐに連絡欲しいって番号教えられてたの。きっと黒崎君…何か虫の知らせみたいのがあったんだと思う」


「…そうなんだ。あんなに早く助けに来てくれたのが不思議だったんだ…あのときは…凄く怖くて…もう絶対私助からないって思って…」


理佳子の中でその時のトラウマは今でも残っている。思い出すと自然と涙がわき上がる。


「黒崎君…男らしいね…私の知ってる黒崎君は、凄く弱くて理佳子を守ってやれるような人じゃ無かったイメージだったのに…」


「うん…転校してから…何かたかと君変わっちゃったみたいで…優しさは変わらないんだけど…あんなに恐い顔見たこと無かったから…」


「でも、そのお陰で理佳子は何もされずに助かったんでしょ?私の彼なんか、そういう状況だったら絶対私を助けられないと思う…私が言うのもなんだけど…顔は超イケメンだし、凄く優しい…でも、やっぱり男なら守って欲しいなぁって思う…」


「麻衣…私だってそこは感謝してる…たかと君が居なかったら、あの時私は…想像するだけで怖い…でも…たかと君が遠くに感じちゃって…」


「ねぇ理佳?たしかに黒崎君は向こうの環境で何か変化があったのかも知れない…でも、やっぱり黒崎君は黒崎君だよ?理佳子を一途に思ってるからこそ、心配して私に託したってことでしょ?」


「そうなんだけど…」


「だったら別に理佳子が心配に思うことは無いんじゃない?理佳子は全てを知ってなくちゃ気が済まないの?」


「そ…そういうわけじゃ…」


「だったら、黒崎君の全てを受け入れてあげるべきじゃん!理佳子の知ってる黒崎君も、今の黒崎君も、全部同じ人間なんだから、理佳子は全て包んであげるべきじゃない?」


「麻衣…」


たしかにそうよね…たかと君は何一つ私に対して変わった所はない…私をずっと大切に想ってくれてるし、私を大事にしてくれてる…変わったのだって、私の為にたかと君自身がいろいろ悩んで、苦労して強くなったんだもんね…それを私が不信感抱いちゃったら…たかと君がかわいそうだよね?


「そうだね、麻衣ありがと!」


「何か吹っ切れたみたいだね」


「うん、ずっと妬んでたかも知れない…私の従姉妹に…でも、たかと君は何一つ変わったわけじゃない!私に対する気持ちが一番大事だもんね!」


「ハハッ、いつもの理佳子に戻った!ヨシヨシ」


そう言って本田麻衣は理佳子の頭を撫でた。

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