第127話 有名人?
「理佳子…怪我は無いか?」
理佳子は俺の顔をじっと見つめる…
「たかと君…ありがとう…怪我…大丈夫?」
理佳子の俺を見る目が、今までとはどこか違って感じた。
「あぁ、俺は大丈夫だ…」
「たかと君…もう喧嘩なんてしないで…たかと君は強くなくたっていいの…」
「でも…お前を守れる力が無きゃ…お前のことを…」
「たかと…」
「ううん、たかと君の優しいところが好きだから…たかと君らしくいて欲しい…」
「理佳子…」
「でも…助けに来てくれてありがとう…凄く怖かった…」
俺は理佳子を優しく抱き締めた。
「小山内…行こう…」
薫は小山内の手を引いてドアを開けて出ていく。薫の仲間も続く。
「理佳子…昔の失くした記憶を思い出したよ…全て思い出した…俺は…本当はずっと弱い自分が嫌いだった…お前を守れなかった弱い自分が…心のどこかで強くなりたかった。お前を守れるぐらいに…でも…あの時の恐怖が…俺を臆病にさせてた…俺はもっと大きな人間になりてぇ…全てを包み込んでやれるくらいビッグな男に…」
「うん…たかと君ならなれるよ…絶対…だって…たかと君は誰よりも優しくて…誰よりも強いもん…」
「理佳子…」
俺は理佳子の手を引いて外に出た。
小山内、薫、そしてその仲間たちが二人を待っていた。
「みんな…ありがとな…無事に理佳子を救出することが出来た。本当にありがとう」
そう言って頭を下げた。
「皆さん…本当にありがとうございました」
理佳子も深々と頭を下げた。
「理佳…良かった…」
「理佳子ちゃん!良かったね!」
理佳子は笑いながらうなずく。
「姉さん…」
薫の仲間が薫にそっと耳打ちをする。
「アイツ…何なんすか?あの石田を倒すなんて…ちょっと話が出来すぎじゃないですか?だって…アイツは喧嘩したことないんすよね?信じられない…」
「誰が鍛えたと思ってるの?それに…あいつは元々人並み外れた力はあったから…」
「姉さん…そんなんで石田に勝てるくらいなら誰も苦労はないっすよ…」
「フッ…確かにあいつはバケモンかも知れない…」
理佳を守りたい一心で…あの弱虫だったあいつが…とうとうあの石田まで…
天斗が石田という絶対的存在を倒したという話はあっという間に広まった。
そして理佳子の通っている高校では
「なぁ、聞いたか?あの伝説とも言われる黒崎天斗の影武者説…まさかあの天斗じゃねーよな?」
「無い無い!絶対無い!だってアイツいつも土下座して謝ったりして情け無かったじゃん」
「確かになぁ…あんな奴があの石田をやれるわけがねぇよなぁ…」
「誰かが黒崎ですって名乗ってんじゃねぇ?」
「いやいや、本物の黒崎がまた石田とやり合ったとか…」
「いや…それは無いらしい…全くの他人だったって話だ…」
この手の話はこの近隣の県の高校生達の中で面白おかしく広まる。
そして天斗達の間でも…
「なぁ、黒崎さん!聞いたか?」
それは小山内の側近にして小山内を上回る天然キャラ…清原勇気。
「あっ?何が?」
「今、あんたは時の人となってるんだぜ!」
「ん?どゆこと?」
「石田ってメチャクチャ有名な奴がいるらしくて、そいつを黒崎天斗と名乗る男が落としたって!あれ…黒崎さんだろ?」
へぇ…隣県での出来事がこっちでも噂となってんのか…俺も随分と有名人になったもんだな…
「んで…どんなこと言われてんだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます