第116話 プレゼント撃沈、薫の母性愛
「ねぇ、かおりん…実は…」
小山内はモジモジして薫に思わせ振りな態度をとる。
「なぁに?どしたの清…」
「実は…かおりん…かおりに渡したいものがあるんだ!」
急に凛々しい男の顔になって言った。薫はそれを見てドキッとした。
「はい…」
小山内がポケットから出してきたものは…
「はい…これ…うちの合鍵…」
「え?…合鍵?………」
「うん、かおりがいつでも俺ん家これるようにと合鍵作っちゃった!」
「………これを…渡されても…」
薫は困惑している。もしこれが小山内の単身の家の鍵ならまだ話はわかるのだが…実家の合鍵を渡されたところでどうしろと言うのか…
「き…清?これ…持ってても…どっち道勝手には入れないよ…だって、清だけの家じゃないもん…」
「そうだよ、もちろん俺だけの家じゃなくて、かおりの家でもあるって意味で渡した!」
「い…いや…そういう意味じゃなくて…お母さんとかお父さんが居るからそんな勝手なことができないじゃん…」
「はぁーーーーー!そういうことか!なるほど…なんて失敗をしてしまったんだ…俺はてっきりかおりんがいつでも俺の居ない時でも俺の部屋で待ってて欲しいって思って用意したんだけど…俺ん家には父ちゃんと母ちゃんという邪魔な存在が存在していたのか!」
…薫の肩から服がズレ落ちる…小山内は思わぬ誤算に打ちのめされているようだ…
「やっぱり黒ちゃんの話を聞かず手錠にしとけば良かった…他にクリスマスプレゼント用意してなかったんだよ…これが一番喜んでくれると思ってたから…俺はなんて失敗をしてしまったんだ…」
小山内は絶望を感じてうなだれている。
手錠?手錠って…いったい清の頭ん中はどうなってんの?
「清…ごめんごめん…気持ちはすっごく嬉しいんだよ?それが何よりのプレゼントだから…頭を上げて?ね?お願い…」
薫は優しく小山内を慰める。
「ほんと?ほんとに大丈夫?失敗しても怒ってない?」
「怒るわけ無いじゃん!私は幸せだよ!」
小山内はパァーと明るい表情に変わり薫を抱き締めた。
清…すっごくバカだけど大好きだよ…なんかあのお母さんの気持ちがわかるような気がする…こういうところに母性愛がくすぐられるのかも…
「かおりん…今日は泊まっていく?」
薫には帰っても兄の矢崎透が居るだけで何の問題も無いのだが…そのお泊まりにどんな意味があるのかがわかっているだけに悩んでいた。
「うーん…どうしよう…」
「母ちゃんはあんな感じだから全然問題ないよ?父ちゃんはあんな感じだから気付きもしないだろうし…」
それもそれで凄いな…
「でも、どっちにしても制服のままだし…一旦帰らないといけない…」
「そっかぁ…じゃあバイクで送るよ!」
「うん…それか…ちょっとバイク貸してくれる?」
「え?あっ!そっかぁ~。かおりんレディースやってたんだもんね!いいよ」
「じゃあちょっと借りるね。ついでにお風呂も入ってくるから」
小山内はその言葉に敏感に反応した。お風呂…身体を洗う…綺麗な身でうちに来る…
こ…これは俺を誘っているのか…
小山内は勝手な妄想に胸をときめかせていた。
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