第63話 小山内、薫を抱く
電話を切って理佳子は天斗の部屋に戻る。
「ごめん、薫大丈夫だって。小山内君ちゃんと薫の家まで送ったって」
「そっか、それなら良かったけど。なぁ、理佳子…前に言ってた思い出して欲しいことってなんだったんだ?」
「フフッ…別にそんな大したことじゃないから」
また理佳子はそうやって思わせ振りな態度を取る。
一方薫は
理佳には強がってあぁやって言ったけど…そんな簡単には気持ちなんて切り換えられるもんじゃないんだよなぁ…
薫は机に向かい両腕を机に乗せて伏せている。
小山内に対しての気持ちに嘘も偽りも無いのだが、それでもまだどこか整理しきれない気持ちが薫の胸を締め付け続ける。
「バカヤロウ…何でたかとはアイツに似てるんだよ…」
かおりちゃん…今日はほんと不思議だったなぁ…
まさか、かおりちゃんからキスして来るなんて…いやでも、あの掴み所の無いフワフワ感が堪んないんだよなぁ~。
でも、これでかおりちゃんの家もわかっちゃったし…いつかかおりちゃん家で…
小山内は自分の部屋で布団に寝転んで今日の出来事を思い出してニヤニヤしている。
薫との妄想に頭の中はピンク色に染まっていた。
小山内…私を抱いて…
かおりちゃん…
そっとかおりちゃんを抱きしめ唇と唇を重ね合わせる。
それから俺はかおりちゃんの首もとに舌を這わせた時かおりちゃんが思わず吐息を漏らす…
そして徐々に俺の舌は首もとから胸の方へ下がって行き…
「清~ご飯出来たよぉ~」
母ちゃん…ナイス!これ以上行ったら俺鼻血出るところだったわ!
「はぁい」
小山内もまたバッドタイミングな邪魔にピンク色のハートを打ち砕かれるのであった。
時刻は既に18時30分を回っていた。
天斗の家の一階部分では話し声と物音が聞こえて来る。
天斗の父親が仕事を終え帰宅したようだ。天斗の父親は大手自動車販売店の経理をしている。たまに残業もあるがわりと定時に帰ることが多い。それほど口数が多い方では無いが、かといって寡黙なタイプというわけでもない。
下から母さんの声が聞こえて来る。
「理佳ちゃーん、天斗~ご飯よぉ~」
俺と理佳子は
「はぁい」
と返事をして階段を降りていき食卓テーブルを囲んだ。
親父が理佳子に話しかける
「理佳子ちゃんいらっしゃい。ずいぶんとべっぴんさんになったねぇ」
母さんも割り込んで
「ほんとよねぇ~、あんなにちっちゃくて見えないぐらい小さかった女の子がこんなに女らしく成長してビックリだよ」
理佳子は恥ずかしそうにうつ向いている。
「天斗のお嫁さんになってもらう為に今のうち理佳ちゃんのご両親も取り込んでおかなくちゃね(笑)」
母さんが言うと
「でも、天斗にはちょっと勿体ないなぁ…こんなべっぴんさんにはもっと相応しい男も沢山居るだろうに…」
親父…余計なお世話だ!理佳子は絶対俺のもんだぞ!
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