第42話 夏の夜の甘いキス

小山内が


「黒ちゃん、俺ちょっとコンビニでタバコ買ってくるわ、多分土地勘無いからすっごい迷ってしばらく戻ってこれないかも知れないけど…」


そう言ってバイクの置いてある方へ歩いてく。

頭は悪いが気は利く良いやつだ。


俺は小山内の背中に


「小山内、気を付けろよ!」


そう言った。

小山内は振り返らず右手を大きく上げて答えた。


「あの人、いい人だね」


理佳子は言う。


「あぁ、最高の相棒だ」


俺は理佳子の手を握ったまま


「理佳子…公園でも散歩しないか?」


「うん」


月明かりが夏の夜を照らす。

夏の虫の音が優しく鳴り響く静かな夜だ。


理佳子めっちゃ可愛いわ!

その弱々しい声も小さい手も健気な所も全部可愛いわ!


俺達は近くの公園のブランコに二人並んで座った。

ゆっくりゆっくり静かにブランコを揺らしながら


「たかと君………無理を言ってゴメンね…まさか…来てくれるなんて思って無くて…」


「理佳子、俺が来たいって言っただけだろ?お前は来てとは言ってないよ、謝ることはないさ」


「だって私が泣いちゃったから来てくれたんでしょ?私が無理させちゃったんだもん…」


「俺が悪いんだよ…お前の気持ちもっともっと理解してやるべきだったんだよな」


「たかと君………いつも優しいね…今も昔も変わらず…」


「そのさぁ…昔もってすっごい引っかかるから!」


「フフッ、わざと言ってみた(笑)」


理佳子…だいぶ落ち着いたみたいだな。

自然の笑みがこぼれてる。

もう大丈夫そうだ。


「………理佳子」


「ん?」


「ベンチに座らないか?」


「うん」


二人はベンチに座った。俺は右側、理佳子は左側に。

俺と理佳子の間は30センチほど隙間がある。

俺は少しずつジリジリと理佳子の方に寄っていった。

理佳子の腰に俺の腰が密着するまで詰めた。

理佳子の肩に俺は腕を回した。

理佳子は緊張してるのかうつ向いたままだ。

俺はこの先の行動に出ようと頑張っている…


よーし!このまま理佳子の顎に俺の右手を当て、理佳子の顔を覗きこみキスをするんだ!

おぉ~~~!めっちゃドキドキする~!




たかと君…もうダメ…すごくドキドキする…私の心臓の音が絶対たかと君に聞こえてる…どうしよう…

このまま…たかと君の唇が迫ってきたら…私の心臓破裂しちゃうかも…

あんなにいっぱい妄想してたけど…これが現実になってくると…ヤバいかも…




理佳子~、理佳子~、い…いいかな…キスに行っちゃってもいいかな…

そーっと理佳子の方に俺の右手を…




来たぁ~…どうしよう…たかと君にキスを迫られる瞬間…恥ずかしい~…でも…キスしたい…




理佳子~、行くぞぉ~…


俺は理佳子の顎に右手人差し指と親指を軽く当てた。

そしてゆっくりゆっくり理佳子の顔に俺の顔を…

理佳子は目を閉じて俺のキスを受け入れる。

俺はそーっと理佳子の唇に俺の唇を重ね合わせる。

理佳子はとろけていた。

それはとても甘く…優しいキスだった。

唇の柔らかさを感じて理佳子は全身の力が抜けていく…

ずっとずっと待っていた、夢にまで見た甘いキスに理佳子はまた歓喜の涙がこぼれた。

理佳子の身体が熱くなっていく。


感じちゃう…キスだけですごく感じちゃう…

たかと君…もうダメ…

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