第21話 大人の階段
その日の放課後俺はドキドキしながら佐々木の姿を探した。
帰り支度をし混雑する廊下で佐々木日登美が遠くから俺に向かって手を振っている。
俺も照れながら軽く手を振る。
人混みをかき分けながら佐々木が俺の所へ来た。
「タカやんかーえろ!」
凄く懐こい性格のようで数時間でこれ程距離を縮めて来た。
「お…おう…」
俺はニヤニヤしながら返事をする。
そして…いきなり俺の手を握って来た。
なんて柔らかい小さい手なんだ…これが女子の手の感触か…気持ち良い…
俺は少し緊張して手が汗ばんでいる。
「悪ぃ…俺…手汗かいてるわ…」
「全然平気(笑)」
佐々木は可愛い笑顔でそう言った。
ほんと男の心をえぐりまくる女だなぁ…
どこまでも虜にされちまうぜ!
佐々木は帰り道の中ずっと喋り続ける。
今日あったこと、世間話、話しもオチを付けて面白おかしく話す。
俺はただただチラチラと彼女の楽しそうな笑顔を見ていた。
駅に着いて佐々木が
「タカやん私ここで電車乗るからまた明日ねぇ~、バイバーイ」
そう言って俺は駅の改札に向かう佐々木を見送っていた。
俺はどうしちまったんだ…一瞬にしてあいつの虜になって…
理佳子のことはどうすりゃ良いんだ…
まだ心の奥で理佳子のことを忘れられずにいる。
優柔不断は良くないとわかっていても、あの魔性の女の魅力にとり憑かれてしまっている。
もう自分では制御不能状態だ…
そして俺はズルズルと佐々木との関係を絶ちきれずにいた。
あれから毎日登下校を共にしている。
誰から見ても完全に二人は恋人関係に見える。
そして一週間経った。
「タカやん…あのね…ちょっと相談したいことがあるの…」
佐々木は神妙な面持ちで俺にそう言った。
「ん?どした?」
「あのね…最近~…ちょっと恐い人達に付けられててぇ~…困ってるの…」
猫なで声で俺に甘えるように言う。
「え?何で?何かトラブルに巻き込まれた?」
「よくわからないんだけどぉ~…ちょっと恐いから今度ウチに泊まりに来てくれない?来週の土曜日家誰も居なくってぇ~」
うぉー~ーーー!マジかぁ~ーーー!
あり得んあり得んあり得んあり得んあり得ん…
こんなシチュエーション絶対あり得ん!
そんなこと言われたら俺の闘争心マックスじゃねーか!
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!
落ち着けぇ~、落ち着けぇ~…
駄目だ…興奮し過ぎて鼻息が荒くなってる…
「い…家に?良いのか?」
「うん!来て来てぇ~」
こ…これは…もしかするともしかするのか…
女が男を家に誘うってことは…何も無いわけが無いことを十分承知してるってことだよな…
お…俺は…とうとう大人の階段を駆け上がることになるのか…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます