Opening08―迷える猫を探して

 日常パート三日目。残るエルゼン、タービン、テオドールはキングスフォールの街に繰り出すことにした。


GM:三人まとめて日常イベント表をロールしてもらおうかな。

エルゼン:あっ、私行きたい場所があるんだけど。駄目ですかね。

GM:何処ですか。

エルゼン:実家です。

テオドール:どうした、ママの……いや、何でもない。

ドジソン:テオドールさんはそんなこと言わない。

テオドール:言わない。いや、こういう時の常套句かなって。好きなゲームにそういうシーンがあるんだよ。

エルゼン:旅立ちの前に実家に挨拶に行くだけだから。

GM:じゃあ、他の二人はロールをお願いできるかな。


【ダイスロール結果】

タービンが2,4、テオドールが4,4の出目を出した。


GM:うーん……あっ、この組み合わせなら面白いイベントができるな。キングスフォールのイベントも参照するね。

タービン:う、うん?

GM:まずエルゼンさんですが、実家でやりたいことを具体的に聞いてもいいですか。

エルゼン:この街を初めて出るので、両親に挨拶ですね。冤罪を晴らすために冒険者になるという報告も兼ねて。

GM:なるほど。では、貴女は家に猫を一匹飼っているのですが。

ベルク:にゃーん。

GM:家に帰っても見つかりません。

エルゼン:ええっ!?ど、どうしようかな。両親に聞いてみます。飼い猫の名前はレオで。

GM:「いったいどうしたの。」

エルゼン:「レオは何処行ったの。」

GM:「えっ、今さっきまでそこにいたはずだけど。」両親も今気が付いたみたいです。

エルゼン:「旅立つ前だから、一目見ておきたかったんだけどな。」

GM:「いつものことだから散歩に行っていると思うけど……探してきてくれないかな。」

エルゼン:「わかったわ。」

GM:エルゼンさんが家を出て探しに行きます。そこに偶然にもテオドールさんが。

テオドール:ええっ!?

PL一同:(笑)

エルゼン:「おや、テオドールさんですか。奇遇ですね。」

テオドール:「奇遇だな。どうした、こんなところで。」

エルゼン:「私、実家の飼い猫を探してまして。」

テオドール:「猫だと?」

GM:テオドールさんはついさっき移動している列車に猫が飛び乗っているのを目撃します。

タービン:まずいじゃん。

テオドール:「関係があるかは分からないが……」と猫の特徴を説明します。

エルゼン:黒猫ですね。

GM:もちろん、特徴が一致します。

テオドール:「そのような見た目が列車に飛び乗っていったぞ。」

エルゼン:「えっ、列車に乗ったんですか。どうしよう、今から追いかけたら出発に間に合わないかもしれない。でも、放っておくわけには。」

テオドール:「追いかけるなら今から追いかけにいけ。出発の時刻の件は私からピアに伝えておこう。」

エルゼン:「あ、ありがとうございます。急いで行ってきますね。その列車はどちらに行ったか分かりますか。」

テオドール:「ああ。それだったら……」とエルゼンを案内しよう。


GM:そして、実はとある事が起こっていまして。駅の方に戻ると、既に出発しているはずの列車が止まっております。

タービン:ボクの出番だね。

GM:登場早いな(笑)。確かにその場にいるけどさ。

タービン:はーい。

GM:なにやら駅のホームから転落した方がいたそうです。

タービン:お、おう。大変そうだな。

GM:タービンさんはその事情に関して詳しく知っている。

ベルク:ブラック企業に耐えかねて?

GM:違うんだな。今から秘匿チャットでタービンさんに送ろう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――※秘匿チャット

 オンラインセッションツールもしくはボイスチャットサービスを使用して、他のPLには見えないようにチャットで情報を送る行為のこと。オフラインセッションでの耳打ちやメモを渡す行為に該当する。

 今卓では、GMが全てを説明してしまうより、状況に応じてPCにロールプレイの一環として説明してもらったほうが面白いという理由で、時折このような形が取られることがある。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


GM:大丈夫かな。

タービン:なるほど。

GM:エルゼンさんとテオドールさんは騒然とした様子の駅構内を目撃します。そこにタービンさんもその場に居合わせていました。

タービン:「困った人もいたもんだねぇ。どうすればいいんだろう。」

テオドール:「どうしたんだ。」

タービン:「せっかく列車が来たのに、当たり屋の人が線路に飛んじゃったんだよね。幸い事故ってはないんだけど、かなり揉めてるみたいでさ。」

エルゼン:「そうなると、列車は止まってるってことですか。」

タービン:「うん、そうだよ。」

エルゼン:「じ、じゃあ、今のうちに飼い猫を探してきます。」

GM:大丈夫。確かレオ、だったかな。エルゼンさんを見つけるとそちらのほうに駆け寄ってくるよ。

エルゼン:「よかった。もう、変な所に行っちゃ駄目だよ。」


GM:実はこの当たり屋なんだけど、日常風景なんですよね。日常イベント表の中に入ってる。

タービン:当たり屋が日常なのか……

エルゼン:嫌な日常だなぁ。

GM:キングスフォールではよくあるらしい。列車に当たり屋行為をして、必死になってお金をせびろうとしている人達がいるみたい。

タービン:当たり屋にナップを行使しても良いですか。

GM:うーん、許可しましょう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――※ナップ

 ソーサラーが使用できる真語魔法と呼ばれる魔法の一つで、魔法を掛けられて抵抗に失敗した対象は居眠りをしてしまう。

 あくまで居眠りであるため、戦闘中だと他者からすぐに起こされてしまうというデメリットがあるが、こういった戦闘でないときのロールプレイに役に立つ魔法だ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【判定結果】

出目11を出して、魔法行使判定の達成値は18。


タービン:「ああいうの、本当に迷惑なんだよね。」ナップ行使。

GM:うわぁ、出目が高い。出目が荒ぶりすぎでは。

タービン:渾身の5,6賽じゃ。

エルゼン:出目が強い。

GM:えーっと、では。厄介な当たり屋は眠りにつきました(笑)。

タービン:当たり屋、排除ヨシ!

GM:やれやれといった様子で駅員達が居眠りをしている当たり屋を線路から引きあげます。

タービン:「駅員さん、あとは任せたよ。」

GM:ご協力感謝します、と言って遅れを取り戻すために持ち場へと戻っていきます。

テオドール:「あれは真語魔法か。」

タービン:「そうだよ、よく知っているね。」

テオドール:「騎士をやっていた頃にそういった魔法を使う者は見たことがあるからな。」

タービン:「だったら詳しいのは頷けるね。ボクはこの通り、魔法使いだからね。」

エルゼン:「とても魔法がお上手なんですね。」

タービン:「ボク達は有名な神の末裔だからね。魔法が使えて当たり前さ。」

エルゼン:「あっはい。そうなんですね。」

ベルク:出た。タビットあるある。

シア:出た出た(笑)。

テオドール:自分をキルヒアの末裔だと思い込んでいるサイコパス。

PL一同:(笑)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――※神の末裔

 タビットという種族は、兎のような見た目をしている獣人の姿をしている。その理由については分からず、公式の設定でもいくつかの説が提示されており、明確にはされていない。

 そのいくつもある説の中で、タビットが古代神の一人で叡智を司る神である賢神キルヒアの末裔であるというものがある。卓越した魔法の才能があるのにも関わらず、神の力を顕現させる神聖魔法だけが使えないのは自身が使う魔法こそが神の力であるという主張だ。しかしながら、そんな主張がキルヒアを祀る神官達はもちろん、一般人に受け入れられるはずもなく、そう彼らが思いこんでいるだけと一蹴されている。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


タービン:「こういう揉め事ならボクに任せてよ。」

エルゼン:「頼りになりますね。」

タービン:「戦闘の時も後ろからバンバン魔法を当てて援護しちゃうからね。一緒に頑張ろう。」

エルゼン:「私もお力になれるか分かりませんが、頑張りますね。」

テオドール:「まあ、今回は無事に猫が見つかったならよかったじゃないか。」

エルゼン:「そうですね、お二人共ありがとうございました。」

タービン:「ボクは猫に関しては何もしてないけどね。」

GM:以上、キングスフォールの日常イベントでした。二つを複合させてみた。

エルゼン:複合してたんだ。

GM:即興の行き当たりばったりだったけど、上手くいってよかった。


【GMからの評価】

・それぞれがお互いに1回ずつ、"声援"を送る権利を1回分獲得。


GM:今回はお互いに上手くロールプレイをして親睦を深められてよかったね。

エルゼン:確かにそうだね。

GM:さて、これで三日目も終わりだ。ここからはいよいよ試験当日になるよ。一旦休憩してもう一度集まろうか。

PL一同:はーい。


 ここまで早くも経過時間は二時間半。それぞれ一息をついてから、十分後に再度集まることとなった。


(これにてオープニングは終了となります。)

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