第121話リターンEX3-メラクル合コンに行く(とある日の記憶)
「先輩。
どうでした、姫様」
私が城を出て、集合場所にしていた広場に到着するとコーデリアが早速、姫様の様子を尋ねてきた。
「ん〜、どうにも寂しそうな顔またさせちゃった」
笑ってて欲しいんだけどなぁ……。
「こうなったらタイチョー。
タイチョーが姫様の婚約者のところに潜入して、その美貌で籠絡するのが良いと思うよ!」
「ヒョッ!?」
私は思わずよく分からない声をあげてしまう。
そこにキャリアが更に畳みかける。
「ほら! 姫様にはお付きの侍女って居ないでしょ?
誰かが姫様と旦那の夜のサポートをしてあげないといけないでしょ!」
任務で出掛ける時は、近衛兼護衛騎士としてローラたちが居るけど姫様にお付きの侍女は居ない。
大公様の側には侍女が付いているが、愛人候補としての側面もある。
考えてみると確かに貴族である以上、それはお付きの者の大事な仕事の一つではあるかもしれない。
家の考え方次第ではあるが。
「寝取りだ、寝取り!」
キャリアがとんでもないことをほざいたせいで、サリーがそれに興奮したように囃し立てる。
「そして姫様に泥棒猫と言われて、キシャァァアアアとキャットファイトが始まるのね!」
ソフィア、それは実体験かしら?
そして姫様がそんな言い方をする想像がカケラも出来ない。
……私は言うかもしれないが。
「寝取りは死あるのみ……」
ボソっと言わないでクーデル。
怖いから。
彼氏持ちのクーデルもここに居るのは、単純に彼氏との待ち合わせもこの場所なだけだ。
私たちが合コンの時は、いつもここで一緒に待ち合わせをしている。
それなのに、何故、私はクーデルの彼氏を見たことがないのだろうか?
不思議〜?
「だって、彼氏がメラクル隊長に惚れちゃったら困るし……」
そう言うがクーデルよ、私はこの中で1番モテないぞ?
そう答えると、何故か全員で満面の笑みでにっこりされる。
コーデリアに至ってはニッコニッコしている。
そんな下らない話をしながら、合コン会場に移動。
いつの間にかクーデルが居ない。
聞くと彼氏が迎えに来たらしい。
おかしいなぁ、私は同じ場所に居たはずなのに見てないぞ?
エア彼氏?
同じ彼氏持ちのソフィアがしれっと参加しているのはこれまた単純な話、今回の合コンはソフィアの彼氏の紹介だからだ。
お酒と料理を並べ、男女5:5で交互に座る。
今回は城の財務課の男性。
貴族は居ない。
他国とは違って、大公国ではそこまで貴族との隔意はない。
良くも悪くも大公国が田舎であることも影響している。
貴族関係なく昔からの顔見知りなことも多いせいだ。
だからこんなことも。
「ダート! なんで貴方がここに居るのよ?」
「キャリア姉こそ、なんでだよ。
彼氏出来て今度こそ結婚するって言ってただろ!?」
「そんなのとっくに別れたわよ!」
財務課の若手のホープのダート君。
キャリアの従弟。
当然、家族ぐるみで姉弟みたいなものらしい。
サリーは両隣のイケメンぽい男2人から口説かれるように話しかけられている。
ソフィアは当然、彼氏の横。
両手でお酒のカップを持って、可愛らしく笑顔で彼氏の話に相槌を打っている。
おお……、これが女子力か……。
コーデリアの隣の男は、誰とも話さずに黙ってお酒を飲んでいる。
「ささ、先輩。
飲んで飲んで」
何故か私の隣はコーデリア。
あれ? 私の彼氏候補はどこ?
適度にお酒が回り始める頃、ようやく私のところにも男が話しかけて来た。
キャリアの従弟のダート君だ。
年下かぁー、と贅沢言ってはいけない。
将来性で勝負よ!
「メメメメメ、メラクルさん!」
「何かしら?」
私もソフィアの真似してカップを両手持ちして笑顔を浮かべてみるわ。
あれ? 何故かダート君が真っ赤になって動かなくなったわ?
「はい、脱落〜」
「じゃ、次の人ー」
キャリアがダート君を私の前から跳ね除け、サリーがイケメンの内の1人を私の前に置く。
「メメメメメ、メラクルさん!」
「何かしら?」
両手持ちだとなんとなくお酒が飲み辛かったので、片手でカップを持ち相手のお酒のカップに軽〜くコツンと当ててニッコリ笑ってあげた。
「あっ、あっ、」
顔を真っ赤にし、よく分からない声を漏らすイケメンA。
変な声を出すんじゃありません!
「ダメかー」
「もう1人〜」
ダート君と同じようにアウト。
何が起きてんの?
「メラクルさん!」
「何かしら?」
今度はどもらなかったね?
期待出来る?
「今度、ママに会って下さい!」
いきなりママに?
そしてなんでママに?
「彼女になる人はママが判断するって!」
「……ごめん、無理」
私はそっと首を横に振る。
「私もちょっと無理、かなぁ……」
「あー、私もちょっと……」
「先輩をママには譲れません!」
コーデリア?
なんでこの彼のママと張り合ってんの?
「最後はー……」
いつの間にか隅の方に移って、ちびちびとお酒を飲みながら食事を1人する男。
さっきから覗き込むようにチラチラ、私の方を見ては目を逸らし、見ては目を逸らし、している。
ちょっと怪しい……。
「おおおおおお、おれ、酒飲みに来ただけだから……」
聞かれもしないのに、そう言ってお酒を1人飲んでこちらをチラチラ。
「あれは……、無いかなぁ……」
サリーは苦笑いで呟く。
なんだか私のせいで雰囲気が悪くなるのも嫌なので、お酒を手に持ってその男の隣へ。
「どうぞ?」
そう言って、お酒を注いであげると男は真っ赤な顔して。
「おおおおおお、おれに惚れたらヤケドするぜ?」
そう言ってきた。
「……そうみたいね」
今、ヤケドしたわ。
「なんでこんな男ばっかりなの!?」
そう言ってソフィアが何故か、彼氏の首を笑顔で締め出した。
やめてあげて……。
結局、この日も私の運命の相手は現れなかった。
「ああ……、運命の相手は何処?」
「せんぱいわぁ〜、ずぅ〜っと、わたしと一緒れす〜!」
落ち込む私に反してコーデリアは超上機嫌。
「隊長!
ごめんなさい!
私の『元』彼がロクでも無い男ばかり連れて来て!」
ソフィア、アレだけで別れたの!?
早過ぎない!?
悪女? 悪女なの!?
「良いんですよ、あの男、浮気してたみたいですから。
それでも隊長に良い男を紹介出来たら許してあげようと思いましたが、やっぱりダメでしたねー」
浮気はダメね、万死に値するわ。
「今日もまたタイチョーのお眼鏡に叶う男は居なかったかー」
「メラクル隊長はねー……」
キャリアとサリーにもため息を吐かれる。
ごめんよぉ〜、モテなくて。
そう呟くと何故か、全員から無言で見つめられた。
な、何?
キャリアは額を抑えながら、絞り出すように言う。
「もうこうなったら、タイチョー。
自分の好みの相手が居たら、笑顔で抱きついて下さい。
それで全部解決しますから」
「そうね、メラクル隊長には待ってても春は来ないかも。
それが良いわね」
「そうですよ!
良い男が居たら、その時に振り向かせたら良いのです」
サリーも何故か、それに同意してソフィアはモテ女らしい意見。
それで解決するわけないじゃーん!
「ダメれす!
メラクル先輩は世界に羽ばたくのれす!」
コーデリア、貴女は私を何処に行かせようとしているの?
それはとある日の記憶。
そして……。
グロン平原の決戦から1夜明け、目覚めた私は昨日のハバネロとのことを想い出し、頭を抱えた。
「……やっちゃった」
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