第29話 達見さん、来るべき第三波に備えを始めるが思いが伝わらない
秋になり、第二波が収まって小康状態となった。各国ではワクチン開発競争が始まっていた。日本は出遅れた形だが塩野義製薬が開発している。インタビューでは「確かに遅れているし、生産量も少ないだろう。しかし、海外のワクチン輸入が何らかの形で止まった時、国内で生産ゼロや備蓄ゼロはまずいと思う」と言っていたのが印象的だ。
確かに輸入頼みが多い我が国。何かあったらたちまち干上がる。
令和三年五月時点では塩野義製薬はベクターワクチンを開発し、治験が始まったと聞いた。日本人としても頑張ってほしい。
一方で海外のワクチン開発はものすごいスピードであった。通常は開発に早くても一年から一年半かかるという。
しかし、ファイザー製薬はじめいくつかの海外製薬会社ウイルスの存在が騒がれはし一年ほど年内に作り上げてしまったのだ。
一年足らずで開発? mRNAワクチンって初めて聞く。大丈夫なの?
緊急事態だから、治験もいくつか省くのはやむを得ないが、素人の私には疑問だらけだった。
Twitterの医クラスタの皆様の解説記事を読み漁って、看護師のハマダさんにもいろいろ聞いていた。今思うと大変だったろうに完全に聞いてばかりだったな。こちらは何も出来ないからバカ話をしてクスッと笑わせるくらいだ。
一方でやっと規制が入り、マスクのみならずアルコール、小麦粉など「生活必需品の転売」が規制され、市中には出回り始めていた。結局一部の卑怯者が買い占めていた訳だ。今書いているギャグファンタジーにも主人公が一般人だけど、転売ヤーとわかった瞬間に凶暴チートでボコボコにする展開があるのは転売ヤーが嫌いだからだ。
あいつらのせいで普段から推しのチケットなども苦労しているのもあるが。
そうしてやっと日本製不織布マスクが売られていたので購入した。そして消毒アルコール代わりの66度の焼酎も少し買った。
「やっと日本製があったよ。着用して……」
「やだ」
またか。少し鬼嫁モードに切り替えることにした。
「コロナコロナと大袈裟なんだよ。死ぬ年代じゃないし」
「ほほう、貴様、自分の両親が感染して重症化しても同じセリフが言えるのか? 指定感染病だから最期も看取れない、棺の顔も見られない(※最近は緩和されて最期の顔は拝めるようです)」
「そ、その時はその時だよ」
ウソだ。絶対に安全性バイアスがかかっている。「自分及び周りの人には感染しない」という謎のバイアス。偏見かもしれないが、中高年男性に多い気がする。
ちなみにこんな状態でもノーマスク集会などには参加しなかった。答えは簡単。「人混み嫌い」だからだ。後に主催者逮捕されてるし、ロクな輩ではなかったと思うが。同じ理由でノーマスクピクニックも参加しなかったと思われる。
行ったら行ったで閉め出すつもりだが。
そして相変わらず夫は〇ノ〇ニュースを見て「米大統領選は怪しい」「別にあの国を攻撃してませんよ。正直どうでもいいくらいです」とかよく分からないことを言っていた記憶しかない。
「ウイルス漏らし、なおかつ隠ぺいした国だからかばう気はないが、闇の政府ではなく中国に置き換えただけの陰謀論を信じている。いろいろと夫はやばい方向へ行ってるな」
楽観性バイアス、陰謀論二つも中二病のごとく患っているのか。
恒例の頭痛が痛くなる中、参考になりそうな本を片っ端から借りていた。
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