第2話 マスク狂想曲の始まり
その二日後くらいだった。一日一回、一品だけ割引されるクーポンを使用をするために恒常的に私はドラッグストアに通っていた。その日も喉に膿栓が(通称・臭い玉)ができやすいため、対策のうがい薬のストックだか、ヘアトリートメントだかを買いに行ったように思う。
マスクコーナーの一角に貼り紙がしてあった。
「マスクは一家族様一点限り」
よく見ると「一家族」の下には二重線が引かれ、「おひとり」の文言が消されていた。そしていつも愛用している国産品は売り切れとなっていた。
(転売屋と心配性の人達が買い占め始めたな)
そのころから紙面(うちは情報の偏りを防ぐとして紙の新聞も取っている)もコロナウイルス報道が目立つようになり、感染が広がり始めていた。
しかし、それでも一ヶ月くらいでマスクの供給は追い付いて解消すると見込んでいた。その見立てはとても甘かったと今では思う。
まだ夫はウイルスに対して未知の部分が多かったためか、マスクは素直に着けていた。
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