8/12 夏の号哭

 がらくた塗れの夜を歩いていた

 深い闇に落ちるような感覚ばかり痛いのだ

 虫の声が嫌に耳に障った

 もう死んでしまおうか、なんて


 そう言えたならいくら楽なんだろうか

 割り切れない安っぽい心が邪魔をしてくるんだ

 僕の号哭よ

 どうか消えないままで

 夏の暮れの 最後の夕まで残っていて


 気が触れるような夏を歩いていた

 硝子ガラスの破片で指を切る

 心も同じく痛いのだ

 

 カラスの声が嫌に耳に障った

 もう帰ろうよ、あの駅まで


 そう言えていたら今が楽なんだろうか

 割り切れない自尊心が愛を邪魔してしまったんだ

 夏の号哭よ

 どうか褪めないままで

 夏の暮れの 最後の夕まで彩って


 僕の人生の 最後の夕まで残っていて

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