ドライヤーと寝台列車

その列車は僕を乗せてゆっくりと動き出した。

目的地は知らない。


雨の中を走り、慌てて乗車したものだから

個室に荷物を入れ終えた頃には、

僕は疲れ果てて眠りたい気分であった。


枕を濡らさぬように、

ドライヤーで髪を乾かしてからベッドに横たわった。



 その列車は夢を乗せて走り行く。

 目的地は誰も知らない。


 幼少期に抱いた夢を 大人に成った誰かへと送る。

 挫折して捨てた夢を 立ち止まった誰かへと送る。


 終着駅に佇む誰かの

 枕を濡らさぬように、

 その列車は夢を乗せて走り行く。



僕は目覚める。

と同時に列車が停まった。

窓のカーテンを開けると、どうやら終着駅であることが分かった。

ここで降りなければならない。



どことも知れないその地には、

梅雨の合間の清々すがすがしい晴天が降り注いでいた。

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