第47話 印象とはどこまでもアテには出来ないらしい
と、まぁ落ち着いたと思ったのもつかの間。俺の不幸は堰を切ったように重なり始めた。
ひとーつ。廊下を歩いているとアキケンに捕まり、大量の書類を運ぶのを手伝わされる。
ふたーつ。4限目の体育でバスケットをしていたのだが、味方のパスが敵に当たってイレギュラーし顔面でキャッチ。その上鼻血まで出る。
みーっつ。クラスメイト達に八つ当たりといういちゃもんを付けられる。
よーっつ。5限目の英語で予告にない場所を当てられてマジで困惑。さらに秀翔が適当な答えを教えてきて、そのまま答えたら先生が呆れて追加でもう一個当てられた。
ホントにここまで不幸が重なると、帰りに事故に遭うとか急に倒れるとか何かもう色々怖くなる。そんなこんなで放課後。もはや挙動不審な俺の元へやって来たのは、同じく文化祭実行委員になった矢野さんだった。
「どーも、鷹司君」
「あ、矢野さんか。お疲れ様」
「お疲れ様~、ところで鼻大丈夫?まだちょっと赤いよ?」
「え?マジか」
俺が鼻をこするとクスクスと笑っている。俺初めて矢野さんと話したと思うけど、第一印象大人しそうな彼女は意外とフレンドリーだった。
何というか話しやすい雰囲気を持っている。
「せんぱ~い、生徒会室に集合ですよ~」
「あ、わかりました。すぐ行きますね!」
優里さんが生徒会の子に呼ばれて教室から出て行く。生徒会役員も大変だと思いつつ、俺もこれから大変なわけだ。まぁ今日は特に何も無いんだけど。
「これから生徒会室に行って書類貰いに行くけど鷹司君も一緒に行くかな~って」
「あぁ、行くよ。流石にいきなりサボるのも矢野さんに悪いしさ」
「・・・それっていずれ私に押しつけてサボるって事で良いのかな?」
「あー・・・、ちゃんとやるよ。任命された限りはね・・・」
ハァっとため息を吐くと矢野さんはまたクスクス笑った。何か勝手に印象づけてたけど随分と予想が外れたイメージだな。
黒髪ボブで眼鏡をかけている矢野さん。誰かと話しているところもあまり見たことがない。いつも本を読んでいるか、絵を描いているイメージだったが、立った今俺の中で彼女はおしゃべり上手に変わった。
「それじゃぁ文化祭までよろしくね。鷹司君」
「オッケー、よろしく。矢野さん」
「じゃぁ早速生徒会室だね」
「んんぅ~、行くか」
本当に面倒くさかったが、仕方が無いから大きく伸びをしてから席を立った。
ついでに帰る気だったから鞄を持つ。窓の外を見ればすでに雨が降り出していた。天気予報も的中。占いも的中。全くもって嫌になるよね。
――――――――――――――――――――
「失礼します。3-3の鷹司です」
「矢野でーす」
ノックして生徒会室に入ると、何やら会議の最中だったっぽい生徒会の主要メンバーが揃っていた。
生徒会長の八神、副会長の優里さん、会計の安宅さん、書記の横野楓華さん、あとは各委員会の委員長たちだ。ようはここにいる全員が八神に認められた超人軍団ということになる。あと気になっているやつはいると思うが、会長以外女子ばかりの名があがっているが、ちゃんと男女比率は半々になっている。各委員会の委員長は男子の方が多いからそこは安心して欲しい。
「鷹司か、お前達が3年生では最後だぞ」
「いやぁ~悪い悪い。ちょっと話してたら遅れたわ」
「まぁいい。一度会議は中断だ。これからこの2人に文化祭のことを説明してくる」
実は八神とは少し付き合いがある。といっても1年の時にクラスが同じで、何故かこんな完璧超人と波長が合いそれからはちょくちょく遊んだり話したりしている。まぁ八神が生徒会長になってからはまったく会わなくなったわけなんだがな。
「いやいや、いいって。会議中だったんだろ?さっさと書類貰って帰るから」
「何を言っている?書類と一緒に色々話すことがあるから文房具を持ってくるよう担任に伝えたはずだが?」
聞いてねえわ。何か言ってたっけ?矢野さんを見ても首を振っている。
背後にいる優里さんが手を合わせて謝っているのが見えた。まぁ優里さんは悪くないだろ。どう考えても伝え忘れた先生が悪い。
まったく、予定が変わってしまった。何か他の生徒会役員にも注目されてるし・・・。
「まぁ知らなかったとはいえ、話を聞いて貰う必要はあるんだがな。時間は大丈夫か?」
「まぁ俺はね。矢野さんは?」
「私も大丈夫です」
「そうかじゃぁこっちの部屋で話すからついてきてくれ」
不幸はまだ終わっていなかったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます