サブストーリー(1) みなみのもりのすかー①
※ 南の森でわかれた
南の森は、オトモ蜘蛛のスカー視点になります。
ぼくは蜘蛛だ。名前は、すかー。
どこで生まれたかは全然わからない。森の浅いところで、がじがじとネズミをかじっていたことだけは覚えてる。ぼくはここで初めて上位者というものを感じた。しかもあとでわかったのだけど、それは《アルケニー》という上位者の中で一番危険で傲慢な種族だったそうだ。
彼女は彼女より大きな魔物だろうが、何でもそのおそろしい毒牙で喰らう。だけれど、初めて感じたその時はなんの考えもなかったから、べつにこわいとも思わなかった。ただ彼女のにおいにつられてフワフワした感じがあっただけだ。近くに来て彼女のゴブリンを喰らうドウモウな顔を見たのが、女王というものの姿を見たさいしょだ。
「あいぼーは、行ってしもうた。これからは、お主がわらわを支えておくれ」
そう言ってなみだを流した女王さまに、ぼくはみじかい首を何度もフンフンと振ってうなずいた。
女王さまのなかよしの蛇は、どこかに行ってしまった。やりたいことがあるみたい。あの蛇はつよかった。女王さまと戦ってもおなじくらいつよかったし、おそろしいくらい大きい。
さいごは女王様みたいなすがたの、小さい体になれるようになったみたいだ。あのすがたでもつよかったし、なんだかすごくよろこんでいた。
かなしんでいる女王さまのやくに立ちたかったし、もともと女王さまのためにはたらくのはうれしかったけど。
あの蛇がいなくなってから女王さまは、すごくわがままになってしまったんだ。
「はらがへったのじゃー。魔物五十体用意してまいれー」
「ここから100本ぶんの魔物をぜんぶたおしてまいれー」
「きもちよく眠れる巣の張り方を考えるのじゃー」
「はらがへったのじゃー。魔物七十体用意してまいれー」
「ここから150本ぶんの魔物をぜんぶたおしてまいれー」
「おいしく食べるための、火を点ける方法を考えるのじゃー」
「はらがへったのじゃー。魔物百体用意してまいれー」
がんばってようきゅうにこたえたぼくは、えらいと思う。
なんとか女王さまに追いつけたけど、ぼくはここの森の深さでは弱い方だった。ぼくの《蜘蛛巣》じゃこのあたりの魔物は破ってしまう。
女王さまが前に張った巣をとって、いろんなばしょにしかけて、時間をかけてたおした。
巣はまだまだ弱いけど、ぼくのまえあしはけっこう強い。女王さまの《蜘蛛巣》と《毒牙》は強すぎるから、ぼくはほかのことでやくに立ちたいと思って、ツメで魔物たちを狩っていた。
そうすると、ほかのなかまの蜘蛛たちより、ツメのこうげきが強くなった。それを続けて女王さまを追いかけていったから、もっと強くなったみたいだ。
巣はいろいろためして、なんとか気に入ってもらった。木と木のあいだに吊るすと、ゆらゆらして気もちいいみたいだ。
火はたいへんだった。《邪眼の大蛇》をつかまえて蜘蛛巣でしばったんだけど、
「あいぼーを思い出しちゃう」
といって、女王さまが毒牙でころしちゃった。毒が強すぎたのか、蛇はあとかたもなくなった。
《魔炎草》っていう、火の花を咲かせる草を見つけて、ようやくよろこんでもらえた。
ひさしぶりに、あたまをなでてくれたんだ!
それでやっぱり、ぼくはキラキラしてて、きれいでかわいい女王さまがよろこんでくれるのが一番うれしいっておもった。
だから、これからもがんばっていこうっておもったんだけど……女王さまはかわってしまった。
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