第27話《智ある猛毒大蜘蛛》




 しばらくして、相棒が目を覚ました。


 まだ俺は蜘蛛糸に絡まったままである。《粘着耐性LV2》が《粘着耐性LV5》まで上がったのに。


 さすがは相棒の《蜘蛛糸》だ。レベルが気になる。


 相棒は起きるなり、縛られたように滅茶苦茶に絡まった俺を見つめて、


「……ドM?」


と訊ねてきた。


「違うわ」


 違うのだ。


 相棒に爪を突き立てさせていた時も《苦痛耐性》と《痛覚軽減》取得のためだった。


 実際、ちゃんとゴブとの戦いでも役に立ったのだ。違うのだ。


「つーか、相棒もすっかり姿変わっちまったな。かっけぇ」


 基本保護色となるような、白っぽい茶色(だと思う)なのだが、ところどころ警戒色のような赤い線が入っている。


「せやろー? てか相棒こそ、よう見たらめっちゃかっこよぅなってるやん! ナニその角!」


 相棒はサイズこそ俺と同様小さくなったが、また同様に身体の密度を増している。


 こんな目で見るのもアレだが、食べるなら断然今だ。


「脚の先変わってない?」


 色覚が相変わらず微妙だが、脚先はすべて黒っぽく存在感がある。


「あー《毒攻撃付与》と《毒爪》ってスキル覚えたわ。何これ食ってええん?」


 集めていた魔物たちを見て涎を垂らす。やはり《存在進化》後は腹が減るらしい。


「召し上がれー。お前が倒したヤツらだし」


「あぁ昨日のヤツらか。じゃ遠慮なく」


 相棒がカサカサと食事をし始めた。手持無沙汰なので、俺は《解析LV6》を使ってみた。




  《智ある猛毒大蜘蛛 ♀》

   ステータス

    LV 1

     弱い


    スキル

     閲覧条件を満たしていません。



 どうやらパーティメンバーは、ステータス等が半端に見れるらしい。そしておにゃの子だったのね。口の中で唾液まみれにしてごめん。


 にしても『弱い』かぁ。


 強くなるより先に《解析LV》が上がったため、自分のものは数値で見れるようになったが『激弱』や『弱い』では表示されなくなった。


 しかし、俺もきっと『弱い』だったのだろう。


「……ん? 今何かしぃひんかった?」


「あぁ。気ぃ悪くしたか? 《解析》がレベル上がってたから、ちょっとお前を見てみた」


「《解析》? 相手のことがわかるーみたいな?」


「そうそう。つっても、種族名しかわからなかった」


 微妙に嘘を吐いた。結果も言い辛いし。


「ほぅかー。でもいい気せぇへんから、やめた方がええで?」


「あぁ。悪かった、もう見ない」


 やはり《解析》を使うと使われた方にもわかるらしい。


 夜の魔物たちに使わないでおいてよかったー。



    ―復讐期限まで、あと8時間です―




 相棒がむしゃむしゃ食い終わると、もう陽が傾いていた。


「さて、これからどうする?」


「どうするって、もう決めてんのやろ?」


 バレているらしい。相棒がどうしたいかを聞いて考えたかったのだが、言っていいようだ。



    ―復讐期限まで、あと6時間です―



 ↑これが気になっているのだ。あのムカデを殺したい。


 その経過で得られるものには、相棒にもメリットがあるはずだ。


「一昨日一緒に隠れていた場所で、夜に参加したい」


「おっけー」


 二つ返事だったので、逆に困惑する。


「返事早いな?」


「あのムカデに仕返しってか、食うんやろ? 噛まれた時めっちゃ殺気立っとったし」


 そこまでバレているとは。


「で、あいつ探す過程で狼の群れやら猿やら猪やら、狩れるだけ狩って食えるだけ食うたろうってんやろ?」


 思わず笑ってしまう。予定まで見透かされてしまっていた。


 そうだ。俺がこいつに最初に好意を持ったのは、その賢さからだった。


「ははっ。俺も相棒に恩売ったけど、その分は返してもろうた。強くなり方教えてもろた分含めれば、まだ返し足りんわ」


 だから、お互いにメリットのある強者たちを共に狩るのは、賛成だと。その過程で復讐をしたいなら、ついでに手伝ってやるということらしい。



    条件―《報復と報恩》を達成しました。

    称号―《復讐者》は変化します。

    《報いる者》の称号を獲得した!


    称号―《憎む者》は変化します。

    《情恐じょうこわき者》の称号を獲得した!



「何か天の声流れた」


「ん。俺もや。よう意味はわからんかったけど」


 聞いた感じ、悪いことは起きていなさそうだった。今はそれより、時間の方を気にした方がよさそうだ。


 急いて事を仕損じる気はない。少しだが、今よりも北へ行くことになるのだ。


 プランを相棒に提示して、相棒が意見を出す。蛇が新たに出来るようになったこと、蜘蛛が新たに出来るようになったことを共有した。


「いけそうか?」


「いけそうや。ほな、行こか? てか、いつまでそのカッコしてんねん」


 さらに成果は出ており《粘着耐性LV5》から《粘着耐性LV7》まで上がっていた。まだ力ずくでは取れない。どんな粘っこいねんな。


《毒牙LV6》で蜘蛛糸をすんなり溶かすと、相棒は少し驚いた顔をしていた。



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