クズジョブの遊び人に転生したメスガキは、ゲーム知識で成り上がる! ~あは、こんなことも知らなかっただなんて、この世界のヒトたち頭悪いんじゃない? ざこざーこ。
28:アタシはナマイキでワガママなメスガキ!
28:アタシはナマイキでワガママなメスガキ!
コトネはアタシが世界の在り方を変えたと言った。神と悪魔の絶対性を無くし、この世界の支配体制を完全に作り替えたと。
最初は何言ってんのよこの子、って思ってたけど……。
「なに、これ?」
アタシは目の前に広がる光景に眉をひそめた。場所は厨二悪魔に挑戦できるダンジョン……塔? 柱? とにかくその場所だ。
「クックック。ようこそ『
「旅人よ。闇より生まれた武具を求めるならば、光に回帰することを諦めよ(武器屋のセリフ)」
「最古の英雄も夢の誘惑には勝てぬ。しかしそれも運命。さあ、悪夢の眠りを与えよう……(宿屋のセリフ)」
眼帯付けたり、腕に包帯を撒いたり、無駄にポーズを決めたり、セリフ回しが無駄に遠回りだったり……ざっくり言えば町中が中二病だらけだった。メチャイタイ奴らばかりである。
なお住民の構成としては魔物7、人間3の割合である。神と悪魔の柱付近の街は人と魔物がごちゃ混ぜになっている。神と悪魔のパワーっていうか運営力で、普通の街中みたいに殺し合い禁止になっていた。
「…………えー? なにこれ?」
「アンジェラが支配する街ですから、こういうふうになってるんですね。皆、アンジェラに心酔しているようです」
「全員中二病とか滅ぼしたほうがいいんじゃない?」
「人の趣味と思想は自由ですから」
町中が厨二とか、さすがにドン引いた。コトネも思想の自由を認めながら、あまり近づきたいとは思ってないようである。
厨二悪魔の柱が特別かというとそうでもない。他の悪魔や神の柱の周りに作られた町も大概ぶっ飛んでいた。
五流悪魔の所は魔物による魔物だけの魔物な街だ。パワーこそ力だとばかりの弱肉強食。何かあったら即座にバトル。でも街中なのでHPが0になっても1になって即復活。そして勝負の勝ち負けですべてが決まる。
「力こそすべてと言ったな、悪魔テンマ。ならば吾輩が人間の強さを教えてやりまじょう!」
四男オジサンがそこに行き、無双して人間のテリトリーを作ったとかなんとか。
巨乳悪魔の所は、契約すればアンカーをなぶられて魔物にされるという。ただアンカーは自分の心の根底で、俗にいう性癖だ。つまり自分の性癖を叶えられる町として認識され、TSしたりケモナーになったりロボになったり車になったりドラゴンになったりする人が続出しているという。
「やっぱり人間は愚かです!」
とまあ、巨乳悪魔は相変わらず人間大嫌いであった。これは納得だわ。
天秤ヤロウの所は、なんというか正義一直線だ。人類解放戦線とかそういうのを作っているとかいないとか。ただ活動自体は魔物や山賊などからの護衛が主で、ラノベにある冒険者ギルドっぽい感じになっている。そういう形で人類を発展させる方向にシフトしたのかな、あの正義オタク?
「我が剣はある者に捧げたが、我が正義は常に世界と共にある!」
熱血天騎士おにーさんがそこでいろいろやっているのは、もう予想通り。
コピペ神の大元……マッチョ神だっけ? そこはアクションゲーム並に立体的なアスレチックになっていた。カルパチアで受けた試練を町全体に広げた感じだ。柱に到達するまで大変だったってーの!
「トーカは運動不足ダゾ! この程度、ダーにとっては朝飯前ダ!」
くそぅ。斧戦士ちゃんにドヤ顔されたのを思い出した。ムカつく……!
そしてかみちゃまの所は……普通だった。どこにでもありそうな普通の街。だけど対かみちゃま戦が一番えぐかった。『愛の神なので自分が最も愛している対象と戦ってもらいまちゅ。ニセモノでちゅけどね』とか言って、コトネ(コピー)と対戦させられたのだ!
「トーカ、たっぷりイジメてあげます。トーカの弱いところ全部知ってますから」
やめろぉ! コトネの顔と声でそんなこと言うなぁ! ニセモノとわかっていても力抜けてくるし、それ見てるコトネはものすごく怖いオーラ出してくるし! 偽の愛に打ち勝つ試練とか言ってたけど、絶対アタシをメタッてたでしょうが!
「……ホント、めちゃくちゃ世界が変わったわね」
「新たな国が6個もできたようなモノですからね。しかもそれぞれが人間にはない特色を持っているわけですから」
「元世界の<フルムーンケイオス>にもこの動きがアップデートされたんだって。大型アップデート『神と悪魔の降臨!』とか」
この情報は天秤ヤロウから聞いたことだ。こちらの世界の動きをゲーム開発者? そういう人の脳内に流してゲームの内容に反映させたらしい。
「どうなってるのか見てみたい気がするわね」
「元の世界に戻ります? アミーさんやソレイユさんみたいに」
アタシの言葉にコトネが問いかける。
デバッグモードの時に『元の世界に戻れる門を作れ』という願いをして、世界の中心にそういう建物ができた。それを使って元の世界に帰った人もいる。アイドルさんやおねーさんもその中の一人だ。
「元の世界でもアイドルアイドル! それがアミーちゃんだ!」
アイドルさんはこの世界で引退ツアーを行った後、そう言って元の世界に戻っていった。ちょっと寂しくはなるけど、その笑顔を見たら止めるのもなんだかなぁ、って感じになった。何ていうか、無粋? そういう気持ちになったのだ。
「お? 寂しいのかがきんちょ」
「そんなわけないでしょ。うるさいのがいなくなって清々するわ。とっとと帰って歌でもアイドルでも好きにすればいいでしょ」
「いえすいえす! スキルも何もないけど、生きてればなんだってできるさ! 進めアミーちゃんのアイドル道! ゴーゴー!」
最後までうるさく騒がしいアイドルさんだったわ。ここではない場所で、変わらず歌って踊っているのだろう。
「それではワタクシも」
おねーさんはアイドルさんの数日後に元の世界に帰って行った。元の世界に戻って服の修行を続けるようだ。
「服なんてどこで作っても同じでしょう? むしろこっちの方がステータスとアビリティの恩恵があるから楽なのに」
「はい。そうですね。その経験を生かして、針の世界を進みたいのです」
アタシの言葉に、強い意志で答えるおねーさん。大事なのは楽をして服を創る事ではない。ステータスやスキルに依らない、自分の手で服を創る事だという。
「でも大丈夫? 元の世界に戻ったらおねーさんガチ犯罪者よ? ロリショタ見て悶えるとか、通報されても文句は言えないんだから」
「うぐぅ……! ファンタジ―世界の治安の緩さがなくなるのは……監視カメラがない世界観……! ロリショタに触れてもなあなあで許される倫理観……! いいえ、でも、みぎゃあああああああ!」
「早く帰れ。キモいし」
「あぎゃあああああ! ガチ突き放し! ロリに冷たい目で罵られるとかご褒美です! ワンモアプリーズ!」
こっちもこっちで最後までうるさいロリショタおねーさんだった。変わらず服を作り、針を動かし、ロリショタに悶えているのだろう。……本当に捕まってなければいいんだけど。
「夜はこの世界から消えはしない。そういう事だ。けして現実に戻りたくねぇとか、仕事やだなぁとかそういう事ではないぞ。ないったらない」
そして誰にも聞かれていないのに、鬼ドクロはそう言ってどこかに行ってしまった。いや別にアンタのことなんかどーでもいいんだけど。とりあえずこっちの世界にいるらしい。
「努力する者を讃える神として、やるべきことができたぜ」
コピペ神はそう言って『レベルキーパー』と呼ばれるコンテンツを作った。アタシがレベルドレインされて力を取り戻したように、今のレベルを1にしてその力を預かる場所だ。レベルが上がりにくい環境を改善し、スキルポイントを多く割り振れるようになったとか。
「自分達だけが二重でレベルとスキルポイントもらって強いのは卑怯っておもってるだろ? ゲームで自分だけ優遇されるのはイヤだっていうのがアンタの信条らしいしな」
勝手にアタシの信念を解釈して、勝手にアタシ達と別れていった。ふん、好きにしなさいよ。どのみちアタシがサイキョーでサイカワなのは変わりないんだから。むしろ成長の幅が広まって考えることが増えたから、面白くはなったけど。
帰った人もいれば、帰らなかった人もいる。それぞれいろんな思いを抱いて、それぞれの人生を歩いているのだ。
そしてアタシは――アタシとコトネは、
「コトネは、元の世界に帰りたい?」
「未練がないとは言いません。ですけど、今はトーカと一緒がいいです」
「っ、あ、あ、もう! そういうこと言うの禁止!」
「イヤです。トーカとずっと一緒に居ますから。トーカはイヤですか?」
「う、その……イヤなわけないでしょ! 分かってて聞くのも禁止!」
「じゃあ、ずっと一緒ですね!」
嬉しそうに言うコトネに、アタシは顔をそむけてしまう。ずっと見ていたら、ぎゅーって抱きしめたくなる。だめだめ。今は厨二悪魔戦に集中するって決めたんだから!
「とにかく今はエンドコンテンツをフルコンプよ! 厨二悪魔、首洗って待ってなさい!
行くわよ、コトネ!」
「はい。行きましょう」
アタシは今やりたいことをやるだけだ。それがたまたまこの世界にあるだけで、それが終わったらどうしようかをまた考える。面白い事ややりたい事を求めて、ずっとずっと走って行く。
好きな子と一緒に、思いついた事を。やりたいだけやる。邪魔する奴らは罵ってこき下ろす。これまでも、そしてこれからも。ずっとそうしていくのだ。
ナマイキにワガママに。好きなことを好きなだけやる。それがアタシなんだから!
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