13:メスガキは快進撃する
「よっし! ブラッドウィップゲット!」
アタシは真っ赤な鞭を手にして歓喜の声をあげる。【笑う門には福】でレアアイテムゲット率が上がってるとはいえ、一発で手に入れられるとは思わなかった。ヴァンパイア3体ぐらい倒さないといけない覚悟していたけど、これもアタシの日ごろの行いよね。
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★アイテム
アイテム名:ブラッドウィップ
属性:鞭
装備条件:レベル50以上
筋力:+10 与えたダメージの5%(端数切捨て)だけHPが回復する
解説:血液を吸血鬼の魔力で固めて作られた鞭。
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わずかだけどHP吸収効果がある鞭ね。正直、素の攻撃力が低いアタシが持っても微妙な武器。回復量もポーション飲んだ方が高いし、これだけだと倉庫行き確定。両手武器な軽戦士でネタ武器として使えなくもないぐらいだ。
ただしこの武器は隠された効果がある。ブラッドドレスと同時に装備することで、その真価が発揮されるのだ。
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★アイテム
アイテム名:ブラッドウィップ
属性:鞭
装備条件:レベル50以上
筋力:+50 与えたダメージの10%(端数切捨て)だけHPが回復する
解説:血の鞭は吸血鬼の力を得て真価を発揮する。血をもって喉の渇きを潤そう。
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★アイテム
アイテム名:ブラッドドレス
属性:ドレス
装備条件:【ドレス装備】
耐久:+50 抵抗:+50 【精吸血】【霧化】【コウモリ乱舞】使用可能。
解説:汝は夜の貴族。闇夜を統べる吸血鬼なり
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攻撃力防御力が一気に増し、HP吸収量も増えた。そして何よりもブラッドドレスで使えるアビリティが一気に変化し、ヴァンパイア三大アビリティの【精吸血】【霧化】【コウモリ乱舞】が使えるようになった。
「待たせたわね」
アタシは【ただいま】を使ってコトネのいる場所に移動する。コトネの方は直接囲まれているという事はなかったけど、アタシの3倍ぐらい多いヴァンパイア兵士が、壁の向こうから攻撃してきていた。【主、憐れめよ】の範囲を考えてか、適度に散開している。
「トーカ!」
「もう大丈夫よ。一気に攻めるわ!」
赤いブラッドドレスを翻し、レッサーヴァンパイアの方に向き直る。防御力自体は金糸服より弱いけど、それでも【カワイイは正義】を使えばダメージはほぼ受けない。そして何よりも――
「ざこはなにしてもざこなのよ」
掌をレッサーヴァンパイア兵士が密集しているところに向け、アタシはアビリティを発動させる。【コウモリ乱舞】。アタシが向けた掌から無数のコウモリがうまれ、それが一直線に飛んでいく。
「ぎゃああああああ!」
数名のレッサーヴァンパイア兵士が悲鳴を上げる。各兵士に対して10回ダメージ。しかもそのダメージもブラッドウィップのHP吸収効果が発動する。さっきの戦いで減ったHPが一気に回復したわ。さいこー!
「吸血貴族様のアビリティだと!? あんな子供がなぜ使えるんだ!」
「しかも血を奪われた……!」
「直線に並ぶな! ……まて、聖魔法の範囲も考えろ!」
突然のアタシのパワーアップに困惑するレッサーヴァンパイア兵士達。アタシはその困惑を見ながら、兵士の一人に近づきその胸に手を当てる。
「おにーさんの、ちょうだい」
微笑むと同時に【精吸血】を行う。HPは満タンだけど、MPがかなり減っていたのでそれを補充する。【コウモリ乱舞】は結構MP使うから、適度に回復しないと使いにくいのよ。
当然、攻撃をするのはアタシだけではない。
「
コトネが祈るように囁き、レッサーヴァンパイア兵士を中心に淡い光が迸る。白く清い光が爆発するように広がり、その範囲内にいた兵士達を巻き込んでいく。生きているならば防御力をあげて同時にHPが回復するが、死者であるヴァンパイアは効果が反転する。防御力が下がったところにダメージを受け、一気に壊滅する。
「ブラムストーカー軍にまだ吸血鬼の貴族が残っていたのか!?」
「しかも聖女を伴っているだと! おまけに結婚しているとか!」
「聞いてないぞそんな情報!」
「吸血鬼貴族と聖女のロリカップル……尊い……!」
アタシとコトネの快進撃に動揺が広がる。あと一歩というところまで追い込んだ相手に、こんな切り札がいるなんて思ってもなかったのだろう。あと最後はなんかどこかのおねーさんぽいこと言ってるけど、吸血鬼も変態がいるのね。
「レーゼン卿を倒したというのは本当のようアマスな、人間の子供達」
「しかしレーゼン卿は我ら五貴族の中で最も格下デース。いい気にならない方がいいデース」
「我ら三兄弟の圧倒的な実力と隙のない連携を前にひれ伏すがいいゾイ」
そんな快進撃を続けるアタシ達の前に、三体のヴァンパイアがやってくる。レッサーじゃないヴァンパイアだ。レッサーヴァンパイア兵士では止められないと判断して、ヴァンパイアが出向いてきたようね。
「なんと!? レーンロート三兄弟がやってきてくれた!」
「カミラさまの信頼高きレーンロート卿の三兄弟! ブラムストーカー軍をここまで追い込んだ立役者!」
「その智謀、その軍略、そしてその実力! まさにカミラ軍の切り札的存在!」
そして周りのレッサーヴァンパイア兵士がモブっぽく説明してくれる。とりあえずこの中で一番偉そうなのはわかったわ。
「トーカ」
「問題ないわ。作戦通りいくわよ」
問いかけるコトネに、アタシは答える。これだけでアタシ達の動きは決まった。コトネが頷くより早く、アタシは動き出す。
「我らレーンロート三兄弟の連携攻撃アマス! 必殺デルタアタック!」
「三方向からの【コウモリ乱舞】をくらうデース!」
「人間如きがこの攻撃に耐えられるはずがないゾイ!」
なんとか三兄弟はアタシに向けて同時に【コウモリ乱舞】を撃ち放つ。なおデルタアタックなんてアビリティはなく、同時に放っても別タイミングで放っても全然威力は変わらない。ただの演出っていうかカッコつけである。
「|
ヴァンパイアの攻撃に合わせてコトネが【主、憐れめよ】をアタシとコトネを中心に放つ。アンデッドに向けて撃つのではなく、アタシとコトネを守り同時にHPを回復するように。
「防御力上がってるけど痛いもんは痛ーい!」
【主、憐れめよ】の防御力アップで何とか耐えるけど、【コウモリ乱舞】は結構効いた。想定内だけど痛いものは痛いのよ!
でも問題ない。あとは前の吸血鬼戦と同じだ。なんとか三兄弟は【精吸血】以外の回復手段はない。対してアタシとコトネは回復手段が潤沢だ。攻撃手段も聖魔法や吸血鬼アビリティ、そして何よりも――
「デルタアタックとか言って仕留められないとか恥ずかしくないのぉ? 必殺技って必ず殺す技って書くのに、殺せてないじゃないの? 嘘つき三兄弟さん?」
【笑裏蔵刀】による確定クリティカル攻撃。そのダメージの1割分HPを回復しながら、一気に相手のHPを削り取る。
「そんな現実を突きつけるのはやめるアマス! 必殺技はロマンなのでアマス……!」
「デース!? 男のロマンを否定するとはなんという非道デース!」
「ゾイゾイ! これだから女はいけないゾイ!」
……えーと、なんだかよくわからない理由で怒られてるんだけど?
「どうでもいいわ。とにかくのこのこ出てきたんだからとっととやられなさい!」
「どうでもよくないアマス―!」
「ロマンのために戦うデース!」
「負けると分かっていてもひいてはならない時があるゾイ!」
アタシ達と変な語尾三兄弟の戦いは、アタシの予想よりも長引いた。
「ふん。ロマンとかくだらないことに拘ってるからやられるのよ」
まあ言うまでもなくアタシが勝ったけどね。三兄弟は最後まで『ロマンは負けないアマス』『必殺技は、戦いに欠かせぬのデース』『我ら滅びるとも、ロマン求める心は死なぬゾイ』とか言いながら倒れていったけど、所詮戯言よ。
「勝負はデータと知識量! ロマンとか意地とか根性とかいう精神論に拘るとか、頭の悪いざこのすることなのよ」
「どっちが悪役なのかわかりませんね」
アタシの勝利宣言に、何故かコトネはため息をつくようにして額を押さえていた。
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