7:メスガキは策を練る
「MeのTerritoryは、絶賛追い込まれてMASU!」
明るく笑う銀色吸血鬼。いや何? 追い込まれてるとかいろいろ聞き捨てならないことなんだけど?
「そう言えば昨日は風前の灯火と言ってましたよね。籠城とも言ってましたし、ブラムストーカー伯爵は他勢力に押されているのですか?」
「Yes! Meの領土はもうこのCastleを除いてはNothing! 籠城してDefenseしてますが、VictoryするChanceはNo! まさにぃ、The ENDなのDESU!」
うわー。負けそうなのね、この銀色。
歴史シミュレーションゲームで言うところの、残り一国で回りの国は全部敵だらけ。城の強度あげてガン耐えしてるけど、リソースがガンガン削られていずれ尽きる。そんな状態っぽいわね。
「なので聖杯を得たいのなら、他のCountに行く方がBest!
But……他の伯爵はHumanへの風当たりはHate&Despise! NegotiationもできないでShow!」
「ヘイトでねご? ヘイトを取る猫がなんなの?」
「他の伯爵……おそらくトーカが言った吸血鬼のボス3名は人間に対して悪感情を持っているか見下しているので、交渉にもならないと言っています」
「あー。なんかそんな感じよね」
アタシは<フルムーンケイオス>での吸血鬼ボスの事を思い出す。いろいろ趣味が悪いというか、吸血鬼っぽい感じだったわ。
先ず『ドラキュラ』。コイツは『紅き城』というダンジョンにいるボスだ。ボスエリアは血まみれで、多くのNPC死体が転がっている。部屋のどこからもザコ敵がポップするから、陣形も限られてくる。いかにも人間の血を吸った吸血鬼、という感じだ。
そんで『ブラムストーカー』事この銀色。前も言った『血の蔵書置き場』と呼ばれるダンジョンにいる。背景は古びて崩れた図書館っぽい感じ。だけどボス部屋は整理されているわ。……なお、銀色でもないし変な叫びもしない。
『ノスフェラトゥ』は吸血鬼っていうよりは獣っぽい感じね。『白き森』という雪国の森っぽいダンジョンにいるボスだ。ボス部屋にはちぎれた手足などが落ちていて、いかにもパワー系のケモノを思わせる感じだったわ。
最後、『カミラ』は女性吸血鬼。『竜牙砦』と呼ばれる砦にいるわ。砦内には多くの拷問具があり、それがトラップとして邪魔してくる。ボス部屋はそのオンパレード。純粋な実力よりも周囲トラップが厄介な相手よ。
この銀色もそうだけど、どれもこれもまさに吸血鬼って感じのボスだった。人間と話をするなんて考えられない。まあゲームだと交渉の余地はないんだけど。レアアイテム寄越せってばかりに攻めるんだけど。
「つまり、協力するならアンタしかいないってことじゃない」
「OH! それは確かに!
But! 何度も言いますがMeのTerritoryはEndも同然! 籠城し、味方なく、逆転の手段はNothing! 早々に逃げないとGirlsの命はDangerous!」
「つまり、今囲んでる奴らをどうにかするのが最初のイベントってことね」
なんだ単純じゃない。アタシはゲーム脳的に考えて頷いた。コトネとかみちゃまは何か言いたげだったけど、それを飲み込んだ。
「些か楽観的ですが、それしかないのも事実ですね。ブラムストーカー伯爵を戦争勝者にしないと聖杯は手に入りそうにありませんし」
「モンスター同士の戦争に介入するのはお勧めしまちぇんけど……まあトーカちゃんが決めた事なら止めまちぇん」
同意するコトネとかみちゃま。どうあれアホ皇帝を倒すために聖杯とやらが必要なら、この戦争に勝つしかないのだ。
「……わかりました。ですが危険と思ったらすぐにEscape! Girlsが捕まり、SacrificeされるなどMeは望みませんから。最悪、Meが全てのVampirePowerを使ってでもRescueしMASU!」
説得は無理だと諦めたのか、銀色はそう言って頷いた。そうとわかればまずは情報だ。何をどうすればイベントクリアになるか。それを理解しないとね。
「で、どいつを倒せば勝ちなの?」
「ですから戦争はそう単純な話ではありません。相手の知識にもよりますが、ある程度の損害を与えれば不利を悟って撤退するでしょう。3割辺りが撤退ラインですね」
「包囲網を敷いているのは『カミラ』配下のVampireです。名前はリザ。レッサーヴァンパイア300体とヴァンパイア5体が手勢DESU!」
「ヴァンパイアかぁ……ちょっと今のアタシのレベルだとキツイわね。1体だけならどうにかなるけど、5体はさすがに厳しいわ」
レッサーヴァンパイアならコトネの【主よ、憐れみたまえ】を使えばどうにかなる。だけどヴァンパイアはさすがにそうはいかない。有効ではあるけど、純粋にレベルが足りない。ヴァンパイア3体相手をすれば、力の差で押し切られるだろう。
「……そう言えば、アンタは戦わないの? スペック的に余裕で勝てそうじゃない」
「MeはこのCastleのバリア維持がありMASU! Meが戦えばそのバリアが解けて、コウモリ化したヴァンパイアが蹂躙してくるでSHOW!」
「あー。はいはい。そう言う設定で戦えないのね」
強キャラが戦えない理由あるあるね。イベントとかでよくツッコまれるわ。『お前が出ればすぐに勝てるだろうが』的なシチュエーション。
「レッサーヴァンパイアはコトネとアタシでさばききれる。……問題はヴァンパイアよね……うーん……」
「無理ですか。トーカ?」
「無理じゃないけど……運の要素が大きいのよねぇ。でもこれ以外に勝ちルートないわ。レベルがもう少し上がればヴァンパイアぐらいどうにかなるんだけど」
今のアタシ達はレベル60前半だ。二人でヴァンパイアを複数相手するにはレベル70は欲しい。足りない部分を補うには、ちょっと……どころかかなり運要素が必要になる。
「包囲していると言いましたが、城の周りに陣を敷いている様子はありませんでしたよね。どこかに拠点があるのですか?」
「Yes! あそこにあるTowerをBaseにしてMASU! あそこは交通の要所で、DistributionがDeadEND! StoreもStopしてVeryWorrrrrrrrrrrrrrrry!」
城から見える塔を指さす銀色。何言ってんのかニュアンスでしか分からないけど、あの塔があるとすとあがすとっぷ? 店が止まるから大変っぽい。
「とりあえずあの塔をどうにかしないといけないみたいね」
「相手はこちらが疲弊するのを待っているようですね。迂闊に攻めれば反撃をくらって削られるだけです」
「迂闊って?」
「真正面から攻めるとかですね。おそらく足止め用の壁が設置されているでしょう。それで動きを止められている間に塔の上や壁から遠距離から攻められる……という感じですよね、伯爵?」
「YES! そのおかげでOffenseできないDESU!」
真正面から攻めるのは愚策。待ち構えられて殴られる。アタシは地図を見て、塔の近くにある山を指さす。
「ねえ。この塔って横から回り込めないの? 山の中を突っ切っていくとか」
「Impossible! 山道は急こう配過ぎてMarchingできまSEN! 何度か試しましたが、Give Up!」
「逆に言えば、あっちもそう認識してるってことよね」
アタシはにやりと笑みを浮かべた。
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