6:メスガキは戦争に参加する

「GoooooodMooooooooorning! よく眠れましたKA?」


 朝一番から濃い挨拶をする銀色吸血鬼。吸血鬼なのに朝起きてるとかどうなのよ。あともう少しキャラ薄めにしたほうがいい。絶対にいい。


「はい。よく眠れました。ありがとうございます」

「あ、うん。寝れた寝れた」


 ものすごくいい笑顔で言うコトネ。適当に返すアタシ。いろいろ恥ずかしいので深くこの件は追及されたくない。


「……なんでジョブレベルアップ時のが大丈夫で、二人の時はだめなんでちか」

「あ、の……いや、違っ……あぐぅ……」


 ぼそりと言ったかみちゃまの言葉に、アタシは顔を真っ赤にしてフリーズする。何かを言い返そうとして、いろいろ思い出してさらに言葉が詰まる。


 ジョブレベルアップ時のは単純にそう言う感覚だと割り切れる。でもコトネに触れられていると意識したらそれだけで全身が蕩けて、しかも耳元でささやかれて耳にかかる吐息がくすぐったくて、しかも手の動きが優しくてそこから熱くなって、抱き合ってるから全身が柔らかくて暖かくて……記憶を失えー!


「どうしたのですかGirl? いきなり机にDownして、BadConditionなのですKA?」

「あまり触れないでください。慣れない環境に適応できないだけですから」

「アンタが言うな」


『慣れない環境』の原因そのものであるコトネに文句を言うアタシ。アタシとコトネの関係が変わってから、アタシの環境は一変した。何をするにもコトネを意識してしまい、朝から晩までドキドキで頭がグルグルする。


「えへ。トーカが可愛いからいけないんですよ」


 ほらまたこういう追い打ちをかけるぅ! アタシは完全に机に顔を突っ伏した。今の顔を見られたら絶対に立ち直れない。なんなのなんなのなんなのよー! 好きすぎて困るとかなんなのよー!


「熱があるならSleepしていてもOKですYO。Girlsは大事な大事なGUESTです。それを持て成すのがMeのPride! せっかく作ったBreakfastですが、消化の良いものをCookingしまShow!」

「いや、朝食は食べるわ」


 昨日の食事を思い出し、アタシは顔をあげる。この濃い性格はともかく、コイツの作る料理はマジでおいしい。昨日結構食べたはずなんだけど、お腹がすいてきたし。


 運ばれてきたのは紅茶とパン、そしてサラダ。昨日の豪華さと違って簡素なものだが、鼻をくすぐる香りが食欲をそそる。パンを口にすると、口の中に味が広がった。


「なんなのこのふわっと感!? コンビニパンとかと全然違う!」

「焼き立てのパンですね。サラダも採れたてを調理したようです」

「Fresh! 自然の力を損なわないには新鮮であることがBestPoint! EarlyでSpeedlyでQuick!

 エェフ! アァル! イィィ! エェス! エイチ! それはCookingにおける最高のSpice!」


 叫びながらポーズを決める銀色吸血鬼だけど、アタシはそれが気にならないぐらいにパンとサラダを貪っていた。本当においしすぎてそっちを気にする余裕もない。


「ごちそうさまでした」

「あー、美味しかった」


 ほぼ同時にコトネとアタシは食べ終わる。食器を下げるメイドさん(多分レッサーヴァンパイア)。それがいなくなってから、銀色はアタシ達に一礼する。


「感謝の言葉、ありがたく承りました。この食事がGirlsがLevelUpするための活力になれば、これに勝るHappinessはありません」


 喋り方はともかく、優雅と言ってもいい一礼だ。腐っても銀ハデでも変人でも貴族なんだなぁ、と感じさせる。


「その件なんですが……しばらくレベルアップは控えるつもりです」

「正確には、レベルアップはするけど戦争に協力させてもらうわ」

「WHY? GirlsがVampireWarに?」


 コトネが切り出した後で、アタシが要件を告げた。いきなりの言葉に面食らう銀色。そりゃそうだろう。こんな子供が戦争したいとか言い出したら、普通は罠か何かを疑う。


「戦争が終わるまで100年? そんなに待ってられないのよ。だったらアタシ達が手伝って早く終わらせた方がいいってだけよ」

「素人が口を出すのは良くない事なのはわかりますが、皇帝<フルムーン>の進攻を考えれば躊躇している余裕はないのです。どうか協力させてください」


 いろいろコトネと話し合った結果、最善はこの戦争を早く終わらせることだという事になった。その為にアタシ達はこの戦争に介入し、戦争を終わらせることにしたのだ。


「OH…………! 確かに皇帝<フルムーン>の覇道はカルパチアまで届いてMAUS! 悠長なことをしている余裕はNothing!

 Buuuuuuut! まだ幼きGirlsに手を汚させるのは先達としてVerySadness!」

「いや、ヴァンパイア倒すのとかアタシからすればフツーのことだから。あいつらモンスターだし」

「それはそれでINSANE!? これが現在のChildrenなのDESUね。少しFutureが心配DESUよ!」


 至極まっとうなアタシの意見に体をひねって頭を抱える銀色吸血鬼。なによう、あいつら経験値じゃない。死んでも死なないみたいだし。


「そういう意図ではないと思いますが、トーカの考えを子供全体に当てはめるのはやめてください。あらぬ誤解を受けます」

「そうでちね。さすがにN=1で全体を計るのは良くないでち。まちてやトーカちゃんはかなり特異でちから」

「アンタら、さりげなくディスってない?」


 銀色吸血鬼の言葉にため息をつくコトネとかみちゃま。何よ、アタシが普通じゃないっていうの? っていうか呆れられてない?


「とにかく戦争とかに参加するわ。そんで聖杯をパクってアホ皇帝に挑むのよ」

「確かに聖杯Getは血の皇帝対策DESU。Drainされないための加護を生み出せますからNE! それがPowerのあるGirlsが使えるのなら、NoProblem!

 Vampireとしても聖杯を授けるのに異論はNothing! むしろ皇帝に挑む際にはSupportする所存!」

「聖杯は後で返すとして、よろしいのですか? 吸血鬼同士の戦争は聖地を求める戦いで聖杯はその象徴……と思っていたんですが」


 コトネの質問に銀色はくねくね踊りながら答える。


「YES! 世界に対して正しい使われ方をするのに、何の問題がありまSHOWか! 大事なのは聖地を得た伯爵が、世界のためにServiceすること! 貴族とは、民と国と世界のためにWorkingするモノ!

 皇帝<フルムーン>は世界をBloodにして飲み込むことで支配しMASU!  それは世界全てをStorageしてFriezeする行為! Stopされた世界では美味しいCookingはないのDEEEEEEEEEESU!」


 相変わらず派手でよくわからないけど、聖杯を持っていくことは問題ないようだ。


「YES Girls! You達の参加をAdmit! 共に戦いまSHOW!」

「ええ。賃金は美味しい食事で十分よ」

「よろしくお願いします。ブラムストーカー伯爵」


 アタシ達は皇帝を倒すため。銀色吸血鬼は戦争に勝つため。こうしてアタシはこの吸血鬼戦争に参戦するのだった。


「そんなGirlsにBadNEWS! UnhappinessでILL LuckでDisaster! まさにまさにThe End of Life!」


 そして額に手を当てて叫ぶ銀色。英語とか全然わからないけど、ポーズと声色でものすごく嫌な予感がする。


「MeのTerritoryは、絶賛追い込まれてMASU!」


 HAHAHA! と擬音が付きそうなポーズで、追い込まれてるとか言うあんまり聞きたくないことを言う銀色吸血鬼。


 え? いきなり負けてるの?

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