4:メスガキは吸血鬼戦争を知る
血の皇帝<フルムーン>。
あのアホ皇帝の持っている盃から出てきた赤い液体。あれを血とみるなら確かにそれっぽい名前だ。厨二っぽくて指さして笑いそうだけど。
「ちょっと待って。あのアホ皇帝と何か関係があるの?」
アタシとコトネからレベルとアイテムを全て奪い、その力でいい気になっている。おかげでレベルアップのやり直しと言う手間を取っているわけだ。いつか殴ると思ってた相手なだけに、問いかける言葉に怒りがこもっていた。
「OH! Girlsはかの皇帝にHomeを奪われた難民DESUか? 或いはFamily? さぞかしSadなEpisodeがあるのでしょうね! 涙なしではNoTalk!」
ハンカチを顔に当ててさめざめと泣きだす銀色。なんとなく単語で意味は分かるけど、別にアタシ達は家も家族も失ってない。奪われたのはレベルとアイテムだ。
「あのアホ皇帝を蹴ったらレベルが奪われたのよ」
「What?」
「色々端折りすぎですトーカ。ブラムストーカー伯爵、少し信じられないかもしれませんが……」
アタシの的確かつストレートで分かりやすい説明に疑問符を浮かべる銀色吸血鬼。コトネが説明して、ようやく合点が言ったようだ。
「Amazing! まさか皇帝<フルムーン>にChallengeした勇者とはGirlsだったとは!」
「思いっきり負けたけどね。何とか逃げたけど、次は勝つわ。その為のレベルアップよ。
……問題はもう一回レベルドレインされるかもしれない事だけど」
驚く銀色に胸を張って言うアタシ。とはいえ、勝ち筋は見えない。何せ相手の情報が不足しているのだ。
分かっているのはこっちのレベルを吸収して強くなること。経験値とアイテム泥棒をどうにかしないと、レベルアップも意味がない。むしろ相手を強くするだけだ。
<フルムーンケイオス>にアイテムや経験値を盗むヤツはいない。そんなのいたらブーイングよ。クソゲー認定されてみんなゲームしなくなるわ。オフラインの個人でやるRPGとかでも、もうやらないんじゃないの?
「つまりGirlsは一度LevelをDrainされたということでOK?」
「だからそう言ってるじゃない」
「I see! これは予想外のDevelopment! 条件を満たした人間が存在するとはなんというMiracle!」
「でぃべろっぷめんと?」
「進行とか発展とか言う意味ですが……この場合は『展開』でしょうね」
疑問符を浮かべるアタシに答えるコトネ。予想外の展開? 条件? ミラクルは……奇跡?
「Girls! 改めてYou達をWelcomeネ! あり得ない可能性を為し得たMiracleにThanks! かの皇帝を打破するRouteが見えてきましたYO! Yahoooooooooooooo!」
感極まって自分を抱くようにして踊る銀色吸血鬼。なんかハイテンション過ぎてついて行けないわ。
「どういうこと?」
「よくわかりませんが、私達が皇帝<フルムーン>を倒せる可能性があるようです。推測ですが、レベルを奪われたことでその可能性が出てきた……のでしょうか?」
「YES! GirlはWisdom! 皇帝<フルムーン>をBreakするには、盃のInsideとOutsideからAttackする必要があるのDESU!」
「いんさいど。あうとさいど」
「GirlsはそのConditionsをClear! あとはSameTimeでActionできるようにすれば――」
「ごめん。ちょっと、その、理解が追い付かないから」
英単語のニュアンスを理解するのにいっぱいいっぱいで、情報が入ってこなくなるアタシ。別に単語の意味が分かんないわけじゃないの。単に銀色がウザったくて濃ゆいだけなんだからね!
コトネに要約してもらったことをまとめると、こういう事だ。
「要するに、あのアホ皇帝は普通に殴ってもダメージを受けない。
だけどあいつにレベルドレインされた人間ならダメージを与えられるという事ね」
「YES! GirlsにUnderstandingしてもらえて、VeryVeryNice!」
「皇帝<フルムーン>自体と、血の杯の内部。双方から同時に攻撃することが必要なんですね」
よくある条件付きな無敵効果ね。ギミック付きボスとかマジでウザい。今時そんなの流行らないわよ。
「つまりアタシ達は条件満たしてるからそのまま殴りに行けば勝ち確じゃない。無敵を解除されてあたふたして泣き叫ぶ顔を容赦なく踏んずけてあげるわ」
『こーてーはむてきだぞー。傷つけることなどできな、うわぁ。なんでだ!?』『ごめんなさいとーかさま、にどとさからいませんからゆるしてー』……ふ、気持ちよさそうじゃないの。
「NONO! 今のまま挑めば、またLevelをDrain! 皇帝<フルムーン>はさらに強化されてMissionはImpossible! それを防ぐ為には聖地にある聖杯が必要DESU!」
「せいち? せいはい?」
「YES! First<フルムーン>が持つ杯の支配を断ち切れるとされてMAAAAAAAAAAAAAAASU!
MeたちVampireは聖地を支配するKINGを決めるためにWarしているのDESU!」
脳内で銀色が言った単語をまとめて……面倒になったのでコトネの方を見た。
「つまり、吸血鬼たちの持つ聖杯がないとまた皇帝<フルムーン>にレベルを奪われます。その聖杯は吸血鬼の聖地と呼ばれる場所にあって、その土地をめぐって戦争をしているようです」
アタシの視線を受けて説明してくれるコトネ。うん、以心伝心。
「あー、戦争はどうでもいいわ。じゃあその聖地に行って聖杯をパクってくればいいのね」
「OH! それができればVeryEasy! But! 聖杯はVampireのWarが終結しないとNotAppearance!」
「吸血鬼たちの戦争が終わらないと聖杯は現れないそうです」
「あー。そう言う条件付きなのね」
どういう原理なのか理解できないコトネだけど、アタシは腑に落ちた。イベントなんてそんなもんだし。
「戦争の終わりって要するにヴァンパイアボス3体を倒せばいいの? 頭がみんな死んだら戦争終わるでしょ?」
「流石にそれは乱暴です。
基本的には条約ですね。相手に『これ以上戦争しても損の方が大きい』という段階で交渉して、条約を結んで戦争を終わらせる……という形ですよね?」
「YES! Bloodで結んだPledge! Violenceな結末など、Nobleとして恥ずべき行為DESU!」
なんか野蛮だってバカにされた気がする。分かりやすいじゃないの、ボス撃破。そりゃアタシのレベルじゃまだボス撃破できないけど。
「……待って。その方法だとどれぐらいかかりそうなの?」
「YES! 100YEARSまでにはEnd of War!」
100YEARS。それぐらいはアタシにもわかる。
「百年も待ってたらお祖母ちゃんになるわよ。どうにかしなさいよ!」
「OH! その問題はVampireになればSolution! InfiniteなLifespanをEnjoyできMASU!」
「よくわからないけど、吸血鬼になれば不老不死とか言ってるんならパス!」
「流石にそれは困りますよね」
アタシとコトネは同時に手を振って銀色の提案を断った。まあ可愛いアタシが吸血鬼になって、コトネと無限に生きられるというのは悪くはない。悪くはないんだけど、パス。
だって成長しないと……その、胸が……身長も……! ぐぬぬぬぬ……!
でも100年待つのも問題外。となればやっぱりボス撃破しかなくない?
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