2:メスガキは吸血鬼の街につく
「ここがMeの納めるCityにしてブラムストーカーCastleeeeeeee、DESU!」
馬車の中で銀色吸血鬼がポーズを決めて遠くに見える街を指す。そこにはヨーロッパっぽい街並みと大きな城があった。<フルムーンケイオス>でもあったカルパチアの街だ。ゲーム的にはアイテムを買ったりする補給地点的に作られた場所ね。
確か吸血鬼の庇護を受けて生活してるとか、そんな設定だった気がする。半分吸血鬼? なんかそんな人たちの街。
「ダンピールですね。吸血鬼と人間のハーフ」
アタシの説明にコトネはそう説明してくれた。そうそう、確かそんな単語だった。
「たしか吸血鬼を滅ぼせるはずですけど……そう言う人と吸血鬼が生活できるんですか?」
「No Probleeeeeeeeeeem! 殺す殺さないはMoral次第! 法を整備することで理性なき殺人は9割防げMASU!」
「なるほど。種族の違いを法を布いて解決しているのですね」
なんだかアタシのよくわからない話である。
すんごく怪しい上にウザったい銀色吸血鬼。これがただの変態ならスルーするかぶん殴るかしていたんだけど、名前を聞いて愕然とした。
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名前:ブラムストーカー
種族:アンデッド(ボス)
Lv:127
HP:1498
解説:貴族階級の吸血鬼。貪欲で暴食な銀の王。
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ついでにステータスを見て愕然とした。マジでボスキャラだった。ボスを騙る変態ではなかったのだ。
<フルムーンケイオス>では最強の吸血攻撃【暴食】を使うボスだ。HPMPだけではなく、こちらの回復アイテムを奪っていくクソ仕様。しかも範囲で遠距離攻撃。素のステータスも高く、50代後半レベルのアタシとコトネでは天地がひっくり返っても勝てる見込みはない。
言うまでもなくその辺をほっつき歩いていい存在ではないし、買い物ができる町中にいる奴でもない。『血の蔵書置き場』と呼ばれるダンジョン最奥部を徘徊しているはずだ。
「なんで法律決めたり街納めてる偉い人がこんなところをほっつき歩いてるのよ?」
いろいろアタシのゲーム知識と違う非常識な状況に頭を抱えながら、浮かんだ疑問を口にする。以前悪魔の策略で魔王が突撃したことがあるので、ちょっと警戒しているのは事実だ。
「Walking! 城や館に籠っていればMindが滅入りMASU! その際にYou達を見かけたのDESU!
Prettyで! Cuteで! そしてStrong! OH! MeのHeartに激しくStrike! そこでPartyに誘うべくお声をかけた次第!」
言ってることは全然わからないけど、アタシとコトネを見て感激したんだなぁ、ってことは何となくわかった。っていうかそれ以外全然わからない。
誘われるままに馬車に乗った理由は、逆らっても勝てないという事もあるけどちょうど街に戻ろうかと思ったという事もある。騙そうとしている可能性もあるけど……騙すならもう少し普通に喋るわよねってことで一蹴した。あと襲われたらまず勝てないし、騙す理由も必要もない。あと――
「そのパーティとかに出たら、本当に『ブラッドドレス』をもらえるんでしょうね?」
「Yeeeeeees! Youにお似合いのDressですYO! 何ならそのまま吸血鬼にDebutしてもOK!」
それについてきたらレアアイテムの『ブラッドドレス』をくれるっていうし。いい人じゃない。変人だけど。吸血鬼だけど。
「物につられてついて行くとか、さすがにどうかと思います」
「だって『ブラッドドレス』よ? 吸血鬼四大ボスからドロップできるレアアイテムよ? スペックも追加アビリティの【吸血】も超便利なんだもん!」
コトネが呆れたように言うけど、レアアイテムをついて行くだけでもらえるとか言われたらさすがに断れない。<フルムーンケイオス>でもそのためにカルパチアに籠る人がいるぐらいなんだから。
「最悪アイテム使って逃げればいいし。どっちかが逃げれば結婚アビリティで移動できるから問題ないわよ」
「HAHAHAHA! 警戒することは大事ですが、MeをTrustして欲しいDESU! VampireのCountの名にかけて、You達PrettyGirlsに危害は加えません!」
「……貴族が爵位に誓うというのでしたら」
と、コトネも納得してくれたので銀色吸血鬼について行くことにしたのだ。
馬車は街に入り、そのまま城に向かっていく。馬車の外はどこにでもありそうな街並みだった。活気があって、いろんな人がいる。さっきアタシ達が倒したレッサーヴァンパイアもいる。
「モンスターと人間? ダンピール? それが一緒に居るけど大丈夫なの?」
少なくとも<フルムーンケイオス>ではこんなことはなかった。まあ、一般人が画面に表示されることもなかったんだけど。
「Yes! Meの街中ではVampireは血を吸わないようにしてMASU! 活動に必要な血液は、外部からHuntしている分で十分DESU!」
よくわからないけど、それでどうにかなるらしい。
「Meの治世は法によるPeaceとHappiness! ViolenceはBadなFutureしか生みません! Troubleを法律で止め、あらゆるCaseを解決する! これが理想なのDESU!」
ニュアンスだけど、平和が幸せで暴力はバッドな未来だから法律でそうに化しようとしているらしい。なんか言ってることは普通である。吸血鬼とか銀色とか変態とかそういうのを除けば。
「そうですね。それができれば多くの衝突を防げるでしょう。事実、ダンピールと吸血鬼が上手く共存できているみたいですし」
というのは聖女ちゃんの感想だ。アタシもそう見える。見えないところで色々ごたついてはいるんだろうけど、それは人間でも同じことだ。法律を守らない人はいるし、悪事は後を絶たない。理想だけでどうにかならないのは事実だ。
「……そう言えば、かみちゃま的にはこういう街はどうなの?」
アタシはコトネの傍で浮いているかみちゃまに小声で聞いてみる。アタシとコトネ以外には見えていないようにステルスしているらしい。実際、銀色は気づいていないっぽい。
「? 何か問題なんでちか?」
「人間とアンデッドが一緒に居るとか、神とか聖属性的にアウトじゃないの?」
「相手がモンスターでも人間を襲わないなら全然問題ないでち。あたち達の与えたジョブの中には死霊使いもありまちゅから」
「神が動く死者を嫌う理由は、人間の魂が神の元に向かわないからという流れなのでしょうね。この世界のアンデッドは人間ではなく『モンスター』の区分なのでシュトレイン様も嫌悪しない、という感じでしょうか?」
アタシの問いに答えるかみちゃまと、そしてコトネ。よくわからないけど『人間が邪悪なスキルで蘇った』のではなく『死体が動いているモンスター』という考えだから問題ない……ってこと?
「気に入っていただけてVeryVeryHappy! ここまで来るのにかなりの時間と苦労がありました! 今なおTroubleは多いDESUが、初心忘れずに邁進していきMAAAAAAASU!」
アタシ達の会話に気づいていないのか、感極まったように叫ぶ銀色。衣装もあって、すんごくインパクトがある。
「お礼にPrettyGirlsには腕によりをかけてCookingします! 美味しい食材をGetしたので、PartyをEnjoyしてくだSAI!」
そして腕を叩いて胸を張る銀色。
「え? アンタがくっきんぐ……料理するの?」
「YES! こう見えてもMeの腕はtop drawer! BestなFoodを送るDESU!」
…………。
そうだ、忘れてた。忘れてたわけじゃないけど、銀色吸血鬼のあまりのインパクトでどうでもよくなってた。
カルパチアの四大ボスは、元人間の貴族という設定だ。それゆえアタシ達が使うジョブを持っている
ブラムストーカーの持つジョブは『料理人』。
料理を作ってアビリティ効果を生み出す、トンデモ系ジョブだ。
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