18:メスガキは天使に襲われる
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名前:エンジェルナイト
種族:天使
Lv:80
HP:689
解説:降臨した天使兵。地上の汚れを祓う神罰執行者。
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エンジェルナイト。同レベルの80レベルモンスターと比べても段違い。アルビオンのデーモン達と対になる存在だ。確か剣の祭壇を守るモンスターとして出てくるやつで、こんな幽霊劇場にいるはずがない。
スペックは80レベルモンスターの中でもインチキレベルに高い。八回攻撃の【乱れ切り】に加え、天使系だけが使える<盲目>を付与してくる聖魔法【ホーリーライト】を使って遠距離攻撃したり、聖歌の【深い慈愛】で範囲回復したりと面倒な相手。対策も何もなしだと対処の仕様もない。レベルが上がり切っていないアタシなど、通常攻撃でやられてしまう。
「あ、っぶなー!?」
アタシは目の前で止まっている剣を見ながら冷や汗を流していた。エンジェルナイトが攻撃を止めた、というわけではない。とっさに【早着替え】で『白蝶オーバード』に装備を変え、【カワイイは正義】で聖属性防御を高めて属性攻撃を止めたのだ。
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★アイテム
アイテム名:白蝶オーバード
属性:ドレス
装備条件:魔法系ジョブレベル45以上 or 【ドレス装備】習得
抵抗:+30 速度:+20 <耐性>聖属性:50% クリティカル発生時、対象の付与をランダムに一つ解除する
解説:夜明けに舞う貴婦人のドレス。夢を解く魔法の羽ばたき。
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前に行っていた『黒蝶セレナーデ』の対になるドレスよ。例によってクリティカル時に相手のバフ解除効果がある。対アイドルさん用の為に買ったんだけど、まさかコンサートで使う以外で役に立つなんて思わなかったわ……!
「防いだか、卑怯者め。天使の刃を受けないとは不遜にもほどがある。涙を流して感謝しながら死ねばいいのに。面倒だからとっとと死ね」
言いながら切り付けてくるエンジェルナイト。性格悪いな、こいつ!
「トーカさん!?」
「アンタは回復以外何もしないで! 相性最悪だから!」
【神の鉄槌】を使おうとする聖女ちゃんを制するアタシ。天使が聖属性である以上、聖女ちゃんの攻撃はほとんど通じない。聖女はガチガチの聖属性ジョブだ。最悪、聖属性攻撃を吸収して回復とかしかねない。
「そうそう! ここはアミーちゃんに任せてよ! 何が何だか分からないけど、妖精達がお相手だよ! 天使相手にダンスダンス!」
言うなりアイドルさんがアタシとエンジェルナイトの間に割って入る。同時に【妖精舞踏】のアビリティ【風のバレエ】【水の舞】【炎のベリーダンス】【大地のステップ】を使う。回避力アップ、ヘイト上昇、攻撃力上昇、バステ抵抗力上昇。そして、
「まだまだ! こいつも行くよ! みんなで楽しくコンサートスタート! いぇいいぇい!」
アイドルさんを中心に、火と水と風と土の妖精が円を描くように回転する。赤青白茶、四重の輪がアイドルさんを祝福するように回転していた。
【妖精舞踏】レベル10で覚えることができるアビリティ【フェアリーサークル】だ。秒単位でMPを消費するけど、先の四つのアビリティ効果を2倍にするわ。雑だけど強い妖精衣最高の付与。
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★アビリティ
【フェアリーサークル】:妖精達よ、輪となって踊れ。発動中、【妖精舞踏】アビリティの効果を2倍にする。MP消費10/秒
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「妖精とは惰弱貧弱脆弱軟弱。男なら体一つで挑め。そして死ね。下らん手間を煩わせるな下等生物」
「やんやん。アミーちゃんはか弱いけど、死んじゃうのは御免だね。お返しだよ! きらきらっ!」
攻撃を避けると同時に【幻想術衣】のアビリティ、【羽衣武舞】が発動。妖精ドレスに合わせた攻撃がエンジェルナイトを襲った。地面から生えるように伸びた土の腕がアッパーを決めるように叩き込まれる。いい感じでダメージを与えたけど、倒すには至らない。
「効かぬ。所詮はゴミクズの児戯。疲弊するまで足掻き、枯渇してあえいだ所を嬲り殺す。死を望んでもなお許されぬと知れ」
「あらあら。あまり効いてない? アミーちゃんのライブはここからなんだけど、今日の所は譲っちゃうよ。ではトバリの先生お願いしまーす! どうぞどうぞ!」
「ふ、ここは古の風習に従い、こう答えよう。
女子供を斬るのは趣味ではないが、これも仕事だ。悪く思うなよ」
「流石流石! お願いしまーす! 決めて決めて!」
なんだかよく分からないやり取りをするアイドルさんと鬼ドクロ。天使って女なの? ともあれ鬼ドクロは刀を手にして――その瞬間に戦いはもう終わっていた。【闇狩人】レベル10アビリティの【魔星一刀】だ。
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★アビリティ
【魔星一刀】:その一刀、星の命すら絶つ。対象一体に攻撃。最終攻撃力が(対象のレベル×3)以上の場合、即死耐性を無視して即死させる(BOSS属性には効かない)。MP80消費
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アタシに視認できたのは、一閃の光。鬼ドクロが刀を抜いて振るい、戻したのだと脳が理解したのはその後。アタシがそれを認識した瞬間には、エンジェルナイトの手から剣が落ち、HPバーは0になっていた。
夜使い即死アビリティの最高峰。最終的な攻撃力が相手レベルの三倍以上だった場合、ボス以外なら本来即死しないアンデッドだろうが
「即死攻撃とかふざけるなちょっ、ま――!」
鬼ドクロに斬られたエンジェルナイトは最後まで悪態をついて――光の欠片になって消えていった。
……? おかしなやられ方ね。今までのモンスターはあんなやられかたしなかったのに。って言うかドロップ品もない。そもそもやられる直前まで悪態付くとか何なの? 痛みとか感じてないみたいだったし。
「何だったのよ、今の? こんなところにエンジェルナイトがいるなんて――」
「ありえないでち」
アタシの言葉を継いだのはかみちゃまだ。確かにあり得ない。ここはアンデッドとかなホラー系モンスターがいる場所だ。天使とかメルヘンなのは似合わない。何がどうなってるのよ。
「ここ、デミナルト空間でち」
だけどかみちゃまがありえないと言ったのはそっちではなかった。
「え? なんて?」
「ここはデミナルト空間でち。あのエンジェルナイトはリーズハルグの眷属でちけど、消滅のパターンと空間の在り方はギルガスに似ていまちゅ。でも二人が地上に干渉できるはずはありまちぇん。
それ以前に空間干渉の瞬間を感じまちぇんでちた。あたちがいくら弱っているからと言って、デミナルト空間が展開される揺らぎを感知できないわけがありまちぇん。まちてや、その中に囚われるなんて!」
どういうことかわからずにアタシは聖女ちゃんを見た。
「私もよくわかりませんが……シュトレイン様にも予想外の事が起きているようです。
他の神様が関係しているようですが、そうではない……という事しか」
「ふん。こんなことできそうなやつって一人しかいないじゃない。あの病みカワ悪魔に違いないわ」
ここがデミなんとか空間だというのなら、それを作れるのは神か悪魔だ。となれば容疑者は厨二悪魔に違いない。
「どうせ天使とか好きっぽいからこんなことしたとかしょーもない理由よ。とっちめてやらないとね」
「安易な決めつけは危険だぞ、我が盟友。話を聞くにかの悪魔は闇への造詣が深い。ならばあのような正道な天使ではなく、漆黒の羽根を持ち赤と青の魔眼を持つ闇パワーを持つ天使を選ぶであろう」
「闇パワーとか適当言ってるんじゃないわよ」
アタシの推理にケチつける鬼ドクロ。っていうか盟友じゃない。そしてなんなのよ、その痛すぎるエディットキャラ。
「まあまあ。確かに怪しいし空間関係の話を聞きに行くのもいいんじゃない? それができればなんだけどね。剣呑剣呑」
アイドルさんが見る先には――
「……う、わぁ」
光の粒子と共に10を超えるエンジェルナイトが現われ、剣を構えてアタシ達の方を見ていた。
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