19:メスガキは三頭犬と戦う

「駒として使っていいって言ったわよね。どんぐらいの強さなの? 【影歩き】使ってたから【闇狩人】8は確定で、あとは【呪具同化】あたり?」

「抜け目ない。その小賢しき態度こそ汝の原罪か。闇を狩り、呪いと同化する。それを極めるには至らぬが、その歩みはいずれ真なる夜に至るであろう。

(訳:察しがいいですね、さすがメスガキ頭いい。【闇狩人】【呪具同化】の二点上げです。スキルマックスにはいってないけどね)」

「あー、もう! いいからステータス見せなさい!」

「ふ、事を急くか。焦りは尖りすぎた刃の如く。それが己の気性と知れ。ワシを知りたくば、拝見するがいい。

(訳:焦って叫ぶ姿もメスガキかわいいよ。もっと命令して! 見せてあげるね、はい)」


 会話が成立しない会話にイラっと来て、命令する。鬼ドクロは『ふ』と鼻で笑ってステータスを見せてくれた。……意味不明の上から目線発言だけど、もっと別のおぞましさを感じるわ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


★ハリオ・トウヤ


ジョブ:夜使い

Lv:86

HP:230/230

MP:55/55


筋力:80(+80)<+45>

耐久:45(+90)

魔力:30<+45>

抵抗:25(+90)

敏捷:75<+45>

幸運:20


★装備

無影断骨

夜叉ヘルム


★ジョブスキル(スキルポイント:5)

【闇狩人】8

【呪具同化】9


★アビリティ

【呪斬】:MP3消費

【闇撫】:MP10消費

【死棘】:MP25消費

【影歩き】:MP50消費


【呪詛同調】:常時発動

【滅びの手】:常時発動

【呪言暴走】:常時発動

【深淵からの声】:常時発動


★トロフィー

『英雄の第一歩』『駆け出し英雄』


★状態異常

<死呪> <弱点>物理攻撃:50% <弱点>魔法攻撃:50% 追加属性:アンデッド


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 見せられたステータスは、さすが高レベルレアジョブとばかりの数値。ちなみに(+●●)が武器防具補正で、<+●●>が【呪詛同調】の補正。【滅びの手】はバステ付与率アップで【深淵からの声】は即死確率アップ。【呪言暴走】はバステが乗ってる相手に対してのダメージ増加。バステと即死を軸にした超攻撃特化ね。


【呪斬】が一定確率で相手が動けなくなる<呪い>付与攻撃。【闇撫】は遠距離範囲の<足止><猛毒><困惑>付与攻撃。【死棘】は単体即死攻撃。【影歩き】は直線五歩分に対する即死判定(ダメージなし)。全部呪い武器がないと使えないアビリティよ。まあ見事にバステと即死特化ね。


 ステータスも筋力と敏捷高め。ただしここに無影断骨の『<弱点>物理攻撃:50% <弱点>魔法攻撃:50%』やアンデッド属性となる<死呪>がのる。簡単に言えば、防御力はスカスカ。普通の回復手段は受け付けないという超ピーキー構成。


 結論を言えば、雑魚狩り特化の即死系キャラ。アタシ以上に攻撃されるまえに即死ヤるのが最適パターン。ボスには即死が効かないから、トロフィーにボスキラー系がないわ。……ザコだけでレベル86まで行くとか、どんなマゾプレイよ。


「……いや、ワシを知りたくばではなく、深淵を覗くなら、が良いか。

 深淵を覗き、絶望するがいい」

「あー。アンタは後ろから【闇撫】使ってて。固定砲台ってことで」


 この構成をボス戦で生かすなら、それしかないわ。聖歌の範囲内に入ったらアンデッドなんで弱体化するし。


「常道だな。やはりその結論に至るか。如何に闇を知る者でも、ワシの真価に至るにはまだ若いということよ。

(訳:ですよねー)」


 上から目線で貶されたけど、とりあえず言うことは聞いてくれるらしい。ぶっちゃけ、呪いデメリットを無視できる位置から放たれる高火力バステ攻撃はありがたいんだけど。


「おなかすいたおなかすいたおなかすいた」

「ちょうだいちょうだいちょうだいちょうだい」

「のみこみたいかみたいのみたいすすりたい」


 三種三様。頭と手の犬頭が連続して斧戦士ちゃんと聖女ちゃんに迫る。斧戦士ちゃんはそれを回避し、聖女ちゃんは聖衣と使い魔HPでそれを耐えきる。その間にも【太陽は東から】の効果で斧戦士ちゃんとケルベロスの攻撃力は徐々に上がってきている。


「いってこーい」


 アタシもクイーンオブハートに【早着替え】し、トランプ兵を繰り出す。ぶっちゃけ囮だ。攻撃目標を少しでもそらすため。隙を見てカグヤドレスに着替え、<魅了>とアイテムドロップ。聖女ちゃんのHPがやばくなったら、近づいて【スパイス】+【ピクニック】でケーキを食べて回復を――


「おかしいいいいいいいいいいいいい!」

「けえきいいいいいいいいいいいいい!」

「あまいものおおおおおおおおおおお!」


 ……は?


 三つの首が攻撃をやめて、何かを咀嚼する。それがアタシが<収納魔法>から出したケーキだということに気づいた。回復するケルベロスのHP。そしてアタシと聖女ちゃんは回復していない。


「もしかして、回復アイテム使うとその効果を横取りされる!?」

「もっともっともっともっと」

「おかしおかしおかしおかし」

「ちょうだいちょうだいちょうだい」


 やっばい。回復手段の一つが無効化された。アタシは慌てて聖女ちゃんに作戦変更を告げる。


「防御にシフトして! 【深い慈愛】と【人に善意あれ】!」

「はい!」


 アタシの指示をくみ取った聖女ちゃんは【人に善意あれ】を歌い、【守護天使】は【深い慈愛】を歌う。できれば速攻で倒したかったけど、回復の一つが使えないんじゃ仕方ない。


「噛みつき攻撃に叫び声ブレス。んでもって回復アイテム封じ? 何よそれ、アタシ達の天敵じゃないの」


 攻めながら相手の強さを考察するアタシ。ケルベロス自身の攻撃は単調だ。三つの首で噛みついてくる物理攻撃と、おぞましい食欲を叫び叩き付ける魔法攻撃。バステもなにもない力押し。


 だけど回復アイテムを使うと相手が回復する。これが地味にアタシ達にとって厳しい。アタシの【スパイス!】&【ピクニック】による範囲回復が封じられているのもあるけど、一番響いてるのは斧戦士ちゃんだ。MPポーションが使えないと、もともとMPが少ないこともあってすぐに枯渇してしまう。


「悪魔メ、しぶとイゾ!」

「地の底より伸びるかいなに抱かれ、番犬よ冥府に帰れ」


 斧戦士ちゃんと鬼ドクロがダメージを重ねているが、一向に倒れる気配がない。結構なダメージを与えているはずなのに、それが響いてる様子もない。昨日のエキドナみたいに、分かりやすい弱点も見つからな――


「あ」


 あるじゃん、分かりやすい弱点。っていうか結構あからさまだった。むしろアタシ達がコイツの天敵だった、ってぐらいに。


「鬼ドクロさーん。ちょっといいかなー?」


 アタシは鬼ドクロの方に振り向き、笑顔で迫る。


「ワシの名はトバリ。見た目を名称にするとは不遜なり。しかし今は許そう。何用か?

(訳:ワシの名前はトバリです。名前覚えてね。でもそういう冷たい態度もメスガキらしくて好き! で、何の用?」

「これ、あげるわ。一気に飲んで? トーカからのお・ね・が・い♡」


 アタシは<収納魔法>からポーションを一本だして渡す。かなり高価でHPもかなり回復するヤツだ。


「児戯。稚拙な誘惑よ。呵々大笑とはまさにこの事か。しかし、あえてそれに乗ろう。

(訳:ロリ誘惑あざとサイコー! ワシ乗っちゃうぜ!)」


 アタシの意図を察したのか、鬼ドクロは急ぎポーションを受け取った。言葉ではああいいながらも、躊躇なく一気飲みする。


 説明してないけどアタシの意図は読んでくれたのだろう。だってアンデッド状態のコイツがHP回復ポーションなんて飲んだら――


「ぎああああああああああああああ!」

「あぐあぐあぐあぐあぐあああああ!」

「まずいいいいしぬしぬしぬしぬう!」


 途端に苦悶の声をあげるケルベロス。


「……どういうことダ?」

「このワンコがアイテム回復の効果を奪い取るなら、『アンデッド状態にHP回復ポーション与えてダメージを与える』効果も奪い取るかな、って思って試したんだけど。まさか本当に効くなんて」


 アンデッドは回復効果が逆転する。アイテム回復の効果も逆転し、ポージョンを飲んだらダメージを受けるのだ。そのダメージを奪い、ケルベロスはのたうち回る。


「察するに、アイテム回復を奪う効果は常時発動で解除不可のようね。エキドナのお腹みたいに、このダメージは防御無視ってカンジ。むしろ三つの頭とは別に『本体HP』みたいなものがあって、そこに素通しみたいね」


 あんだけ食べる食べるって言ってるんだから、弱点もそういう形かなって思ったらドンピシャだったわ。外部からどんだけダメージを与えても本体HPには届かない。あんだけダメージ与えたのになんともないのは、おかしいと思ったのよ。


「不遜な小娘め。ワシの体質を悪用したか。逆転効果を奪われるなど賭けであったろうに。違えばどうなっていたか。

(訳:え? もしかしてワシ死ぬところだったかもなの? 下手したらあんな感じでのたうち回っていたかもなの!?)」

「上手くいったんだからいいじゃない。大体、アンタもうまくいくと見込んであっさり飲んだんでしょ? あそこでゴネられたらやばかったわ」


 怒りの言葉をぶつける鬼ドクロに、笑みを浮かべるアタシ。あそこで『アンデッドだから回復ポーションは飲めない』って言われたら説得に時間がかかって、最悪斧戦士ちゃんが倒れていたかもしれないのだ。


「そんじゃ、ポージョンがぶ飲みしてもらうわよ。時間がないからイッキイッキ!」


 かくして前の二人が足止している間に、鬼ドクロにポーション一気飲みしてもらう作戦開始である。気分を出すために、アタシも応援するわ。


「鬼ドクロさんの、ちょっといいとこみてみたいなー♡」

「きゃー。さいこー。トーカ、その飲みっぷりにメロメロになりそー」

「ふ、茶番にもほどがある。しかしこれが最良の策であることには変わりない。

(訳:演技と分かっていても、逆らえない……!)」


 アタシの応援に納得した鬼ドクロがポージョンを一気に飲む。その度にケルベロスはのたうち回り、そして――


「ぽんぽんいたいいいいいいいいい!」

「でも、おおないっぱいぃぃぃぃ……」

「ごちそうさまぁ、おやすみぃぃ……」


 苦痛であえいだ後になぜか安らかな顔になって、ケルベロスは力尽きた――

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