12:メスガキはズルしたと言われる
言うまでもなく、ガルフェ湿地帯の敵は、アーチャーシェルだけではない。
ゲコッゲコッ!
「アシッドトードね」
アシッドトード。アタシと同じぐらいの背丈のカエルだ。その名の通り、強力な酸を持っている。
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名前:アシッドトード
種族:動物
Lv:29
HP:108
解説:狂暴なカエル。酸性の唾液で嘗め回し、獲物を溶かして食べる。
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酸を吐く、とは言うけど要は毒属性の攻撃を持っていて、何割かの確率で<毒>のバッドステータスを受ける。攻撃も近距離攻撃のみだけど、アーチャーシェルと違って結構な速度で飛び跳ねてくる。
「トーカのあそこ、嘗め回したいのかなぁ? かえるさん」
太ももとお腹に手を当てるアタシ。その台詞に反応したのかはわからないけど、こちらに向かって跳躍してくる。
はい、【早着替え】&【カワイイは正義】! フロッガーハットから着替えるのは、これ!
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★アイテム
アイテム名:狼パーカー
属性:服
装備条件:ジョブレベル11以上
筋力:+2 敏捷:+5 攻撃&回避判定に+30%補正。被ダメージ+30%上昇
解説:狼の力を宿したパーカー。狂戦士を模した服。野生の力を開放し、前のめりになる。
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白い狼の頭を模したパーカーだ。胸と腰に白い水着……っていうか布っていうか紐っていうか。そんなのがつけられている。防御力のない……っていうか受けるダメージが増える装備だから、まあ正しいのかな?
「やーん、こっち来ないでよぉ」
ついでに【微笑み返し】発動! 運よく<困惑>になってくれたわ。
【カワイイは正義】の効果で回避判定に+60%の補正が付く。おまけに<困惑>状態なので、カエルの舌はアタシには届かない。
……まあ、当たったらダメージ60%増しだから絶対耐えられないけどね。トーカはカエルに舐め回されて、どろどろのぐちょぐちょになっちゃうわ。やだぁ。
「うおおおおおおお! 【投げる】!」
まあ、二回目の攻撃が飛んでくる前に四男オジサンが連続で【投げる】してくれた。『格上殺し』と『勇猛果敢』の補正もあって、ダメージが跳ねあがってる。
「次はあっち! シャンピングピラニアよ!」
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名前:ジャンピングピラニア
種族:動物
Lv:30
HP:98
解説:水場から跳躍して襲い掛かるピラニア。一撃必殺の鋭い歯を持つ。
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水場から陸上には上がってこないけど、ジャンプすることで陸上にいる人に襲い掛かってくるモンスターだ。
ピラニアのイメージ通り、鋭い歯で噛みついてくる。バッドステータスとかはないけど水に潜っている間は影だけの状態で、物理魔法共にダメージが90%カットされるわ。
なのでジャンプしたところを狙うのが基本なんだけど……。
「そんなの待ってらんないわ!」
またまた【早着替え】&【カワイイは正義】! 今度は、これ!
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★アイテム
アイテム名:ペンギンローブ
属性:服
装備条件:ジョブレベル15以上
耐久:+2 抵抗:+2 確率で<凍結>のバッドステータスがかかる。
解説:ペンギンを模したパーカー。凍える力を与えてくれる。
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黒いローブにペンギン頭巾。腕の部分は羽根のようなオーバーオール。そんなローブよ。ポイントは『確率で<凍結>のバッドステータスがかかる』こと。この確率も【カワイイは正義】の補正がかかるの。
水の中にいるジャンピングピラニアがダメージは90%カットされるけど、バッドステータスはかかる。2倍に確率が跳ね上がった<凍結>攻撃よっ。えいえいっ!
「やだぁ。こんなに硬くなっちゃって。もー、カチコチじゃないの」
そして<凍結>などで動かなくなったジャンピングピラニアはダメージカットが解除される。ぷかーっと、凍ったまま水の上に浮いてきた。そこをオジサンが掴んで――
「うおおおおおおおお! 【投げる】!」
はい、トドメ!
こんな調子で、どんどん沸いてくる湿地帯モンスターを倒していくアタシ達。
「まさか。ここまで強いとは……」
「そーよ。このカイカンを知ったら、やめられないでしょ?」
「むむむ、確かに。しかし、あまりいい目では見られてないようだな」
? オジサンはきょろきょろと周りを見回す。
アタシも周りを見ると、狩りに来ていた人達はこっちを見てぼそぼそと何かを言っていた。3人のおにーさんだ。剣と槍を持った近接系軽戦士かな。
「遊び人がターゲット取り? なんだそれ?」
「しかもメインアタッカーが【投げる】? ありえねぇ」
「レベルも低いし……なんか特別なアイテムを持ってるんじゃないか?」
「ああ、何かしらのズルしてるに違いない。でないとあんな狩りできるはずないからな」
聞こえてくるのは、大体そんな内容。
意図して公開しなければ、他人のステータスは見えない。簡易的に名前とレベルとヒットポイントが分かるぐらいだ。
自分よりレベルの低いカワイイ遊び人(アタシの事よっ)と重戦士っぽい投げ格闘家が、自分達よりも効率よくモンスターを狩っているのだ。まともに考えたら、ズルしてるとしか思えない。
「なーにぃ? おにーさん達嫉妬してる? トーカのこと嫉妬してるぅ?」
大声を出して叫び、手を振ってやる。聞こえていたと思ってなかったのか、驚いたおにーさん達はびくりとしてから叫び返してきた。
「なぁ!? ガキが何言ってるんだ。この『赤の三連星』と言われた俺達が嫉妬なんかするはずがないだろうが」
「そうとも! 俺達はレベル不足のお前達が死なないか見てるだけだ!」
「オルスト皇国に召喚された栄えある英雄として、恥じぬ戦いをだなぁ!」
うんうん。必死になって否定している。ぶっざまー。
「そ。でも大丈夫よ。適正レベル狩場でしか戦えないよわよわおにーさん達と違って、トーカは頭いいから」
「よ、よわよわ!?」
「だっておにーさん達、『格上殺し』も『勇猛果敢』もないんでしょ? 自分と同レベルか3ぐらい上のレベルしか相手してない、よっわよわ英雄さん」
「ふざけんな! っていうかそれが普通なんだよ!」
きゃー、怒ったー。
「お前のような遊び人如きがこんな狩場に来ること自体が間違ってるんだ!」
「たまたま上手くいってるだけで、モンスターが一気に沸いたらすぐに死ぬだろうな!」
「その時は俺達みたいな安定した戦術をとっている者が生き残るんだ。ざまあ!」
顔を真っ赤にして叫ぶおにーさん達。ぷぷぷ、必死になってる。そんなに自分のやり方否定されたのが悔しかったんだ。ざーこのよわよわ狩りなのに。
「その……世話になっている身で言えた義理ではないのだが、あまり周りと波風を立てない方がいいのではないか?」
「えー。あのおにーさんたちが先に馬鹿にしたのよ。むしろトーカは被害者なんだからね。こんなか弱い女の子に威圧するように言うだなんて、酷いと思わない?」
「貴族の立場として中立だ。喧嘩両成敗を主張させてもらおう」
涙をためて言うアタシに、肩をすくめるオジサン。
ちっ、ウソなき通じなかったか。
「平穏無事な生き方なんてトーカには似合わないのよ。さあて、次は――」
「ザ、ザリガニが出たぞぉ!」
次のモンスターを探そうとしたアタシの耳に、そんな悲鳴が聞こえてきた。
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