代々天才の家系に生まれてしまいました。

@JOJO520

第1話なんか思い出せないんだけど

ロザリオを首から下げ、祈る婆さんが最初の光景だった。別の一人が

「元気な男の子ですよ!!」

と叫ぶ。その次は杖を持った若い女性が静かに何か呪文のような言葉を唱えてから強めに

「ヒール」

と言う。杖を持つなら隣のババアだろうに。どうやら俺は生まれたらしい。が、何かを忘れた気がしてならない。生まれたそばから忘れている気がするというのもおかしな話だが、何か思い出せないのは確かだ。

生まれてからおよそ1ヶ月が経過した。窓の外には石やレンガ造りの街が広がり、男の子達が手から水を噴射したり、口から火を吹いたりしている。危険であることは間違いない。

生まれてから約1年が経とうとしている。その間に気づいたことがいくつかある。

一つ目は、自分が国王の第四王子として生まれ、やたらと第二、第三王子に嫌われているということだ。因みに国王の名は

ミナティ・ウェザーズで、第一王子から順にレアシス、クライエ、ネクレム、そしてこの私がラグゾロ・ウェザーズである。

二つ目は、この国には魔術というものが存在するということだ。私の出産に立ち会っていた若い女性が杖を婆さんに譲らなかったのも彼女が魔術を生業にしていたからだろう。

三つ目は私の頭脳の発達が著しく早いことだ。自慢ではなく、第二王子が教育係に教えられている計算問題が、物心すらついていないというのに頭の中だけで解けてしまう。そして絶対に合っているという謎の自信があった。四つ目はしつこいようだが、何か忘れているということだ。本当にこれが何なのか、なぜ思い出せないのか、何もわからない。

そんな私はとうとう生まれてから三年の月日が経った。この歳になり初めて誕生日会というものが開催された。さすが、親が国王なだけのことはある。城に仕えるものは当然のこと、国の重役、国中の魔術師を束ねる長、剣聖と謳われ信頼される剣士、上流階級の貴族達が合計500名ほど集まっていらしい。とは言っても、レアシスの誕生会は、今回の4倍は集まっていただろう。

「ラグゾロ様。」

振り返ると魔術師の長と剣聖が立っていた。二人とも他に挨拶に来た貴族などとは違い、一言の挨拶の言葉からも獣のような恐ろしくもあるが強く、且つ気高い威圧感を感じた。

魔術師の長はまだ30才くらいの若い女性だ。額から目にかけて傷のある剣聖の男は、50は超えているだろう。

これが二人との最初の出会いであった。


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