日仏露蒙戦争
第49話 モンゴル帝国攻略作戦 Ⅰ パリ会談
日仏露連合 パリ
「お久しぶりです。」
「久しぶり、桜。」
「桜さん、お元気でしたか?」
「はい、この通りです。」
「それは、良かった。では、お茶会といたしましょう。」
桜たちはボナパルトらと共にフランスのパリに集まっていた。もちろん、会議のためである。でも、今はそんな堅苦しくなる前の些細な一息を紅茶でも飲んで話そうとParc du Champ de Mars( シャン・ド・マルス公園)の管理者区域に設けられたガセボでカチューシャとジャンヌ、桜は警護の兵士に囲まれながらジャンヌが持ってきたスコーンと紅茶を楽しみながら談笑していた。場所的にはこちらかた一方的にエッフェル塔が見えるがエッフェル塔からは見られない。そんなひっそりとした場所だった。
「そういえば…昇(のぼる)さんはどうですか?」
「バルロー曹長によると身体の損壊はなく、自己修復作用でなおる程度だから大丈夫みたいよ…。」
「なんとか、与那国島奪還作戦は終わったしここからモンゴルに上陸してもらうわ。」
「それは、良かったです。少なくとも身体への負傷がないならあとは、届けるだけですね。」
「そうね、あの人達にも昇の姿を見せてあげないと…。」
「カチューシャは何か言いたげですね。」
「まあ、なんていうかちょっとしたイレギュラーが起きたのよ。」
「イレギュラー?」
「ええ、C分隊に一人負傷者です。治療して戦線への復帰は可能ではありますが別命を与えたいのですが…。」
「どんなの?」
「はい、昇さんと一緒に来た他の人達と会わせて見てはどうでしょう?」
「いい考えですね。でも、自衛隊の人達には会わせたくないと思います。」
「桜、私もそう思うわ。だから、一人だけ良さそうな人が居るのよ。」
「誰ですか?私としては、刑部(おさかべ)さんや、中間(なかま)さんなら自衛隊員の中でも比較的良いとは思いますが、桜は?」
「佐戸川(さとがわ)さんですね。ある程度落ち着きはありそうですし…。」
「なるほど、2人はその人達がいいと思うのね。ちなみに、私はジム・ホワイトさんにレフを当てようと思うの…。」
ジャンヌは、カチューシャがそう言うと紅茶を一口飲んだ。
そして、ティーカップをソーサーにゆっくりと置いた。
「ジムさんは、先日横浜で移民居住区を見せたばかりですけど…カチューシャの推薦するジムさんにレフを当ててみることにしましょうか…。桜さんは、それでよろしいですか?」
「少なくとも日本人ではないので同じ国の人々というくくりというか、感情的に偏るのではなくジムさん本人の目線から昇君がしたことがどう映るのかは気になるところです。李さんや、Ackermann(アッカーマン)にもこの情報を少しは流して見てはどうでしょうか?」
「いずれにしろ、国内の新聞に書かれちゃうから今回はジムさんだけにしましょう。今、どうこうするよりはモンゴルとのこの戦争をどう終わらせるかよ。」
「それは、私達が考えることではありません。それに、この戦争の終わりは…。」
「わかっているけど…その…。」
「カチューシャは、心配性ね。大丈夫よ、あなたが鍛えたんだもん。たぶん、戦場から帰ってきたらあなたを抱いてくれるわよ。童貞を捨ててきたわけだし。」
「私よりも桜か、ジャンヌ…あんたに抱き着いてきそうだけど…。」
「まあ、少しくらいはいいとは思いますよ。」
「でも、ジャンヌ…昇はせっかく私が整備してあげたM1886を戦車に突っ込んだあげくぶっ壊したのよ…。」
「はい、知っていますよ。今は、レフ君のモシンナガンを使っています。」
「船にも積んであるから…まあ、銃を壊すのはあまり良くないけど…。」
「ええ、そうですね…。」
今日は、日差しが良く風も少ない外でこうやって話し合うにはちょうどいいくらいの天気だった。こういう日は、多くはないので本当に今日は運が良かった。
桜はそう思った。
「さて、カチューシャ、ジャンヌ。やることはわかっていますね。」
「忘れるわけないっしょ。」
「予定通りにことは運んでいます。あとは、イレギュラーがなければこのまま結果を向かい入れることができます。」
装甲艦波照間(はてるま)
与那国島奪還作戦は、無事成功した。
上陸艦隊の30%ほどを与那国島の防衛として駐留することになった。
艦隊はこのまま、日仏露連合の支配領域下にある釜山(ぷさん)で補給を行い。
そのまま、海岸線沿いを進み航空艦隊に再び合流することになっている。
既に戦艦Arc de Triompheは釜山に入港しているそうだ。
俺とC分隊は、釜山から列車にのり最前線へと向かうことになっている。
連合は、旅順(りょじゅん)、大連(たーれん)と南部から北上してモンゴル帝国の首都カラコルムを目指していた。そして、最前線はウンドゥルハーンという地域だ。
連合と帝国は、現在そこで膠着状態にある。
日仏露連合は、黒海からの横断作戦を当初計画していたが桜達は首都であるカラコルムを陸と海の両方から攻撃する作戦を出し、航空母艦屠龍(とりゅう)などの数少ない航空戦力を投入することになった。
最初のモンゴル帝国を黒海からアレエフカまで横断する作戦は却下されることになったのは意外なことだったらしい。
なぜかと言うと、モンゴル帝国は首都カラコルムの付近に航空基地を設けていた。そして、旅順から釜山にかけては工業地帯が多く存在し陸上部隊、海上部隊も多く存在していたため侵攻は絶望的な状況だとされていた。
しかし、現在はその予測ををよそに連合は内陸への侵攻に成功し首都カラコルムへの道は開けていた。
そして、そのカラコルムへの最後の要衝がノモンハン、そして…モンゴル帝国軍機動部隊だった…。
「今日もいい天気だな…。」
「そうね…日焼けしそうなやな天気ね。」
昇(のぼる)は、波照間の右舷から海を覗き込むように身体を傾けていた。
海は、穏やかで風も穏やかな向かい風だった。
「…レフは元気かな?」
「大丈夫よ…たぶんもう与那国島を離れて陸の医療施設に居ると思うわ。」
「それなら、いいんだけど…。」
「ねぇ…戦死者の数聞いた?」
「いや…聞いてないけど…。」
「そう…負傷者の数はいつも通り発表されないけど、死者数は増加するたび発表されるわ…レフはラッキーだと思うの。うちの隊には、まだ衛生兵が居るし…。」
「…まだ…そう考えるの?」
「衛生兵は、先に狙われるものよ…。」
「…それと、負傷者や死者が関係あるってことだよね。」
「ええ、帽子を被っていても防げない所はあるし、技術は進歩しても私達は中世の鎧のまま弱点を克服できずに戦場に立っているものよ…。」
「…どうにかならないのかな。」
「無理ね、絵空事を叶えれば別だけど…。」
杏樹(あんじゅ)は、ただ海を見つめていた。
まばらな雲が影を作ることはなく、光は水面を照らすことなく、ただ単色で描いてしまったような海が広がっている。
「ねえ、昇?」
「なに、杏樹?」
「あなたは何で戦っているの?」
「…。」
「驚いた?」
「うん…もちろん…。」
「今更よね…この海はどこまでも広がっていて、どこかに島があって人々が暮らしている。けれど、私達が生きているうちはそんな大きな世界じゃなくて小さな地域でしか生きていかない…この星をどこまで行っても結局は狭いまま…そんな気がするわ。ずっと前からこの世界はこんな感じで…世界規模での戦争だって存在しないと人々は思っていたの…でも、毎回この世界の人達の認識を変えるようなことが起こって、この世界の人達はそれを学んで生きてくの…。」
「それは、どこも同じなんじゃないかな…。」
「…ええ、確かにそうよね。…この戦争もそうよ。」
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