第五章 お祭りと料理

第45話 女子会再加入

 1位 フォンゼル・エルベアト・ポレーレン ロード 284点

 2位 リリー・ファン・シェインデル ハイプリーステス 280点

 3位 ニル・アドミラリ オールラウンダー 279点

 4位 デスグラシア ダークロード 270点

 5位 クーデリカ・コールバリ オラウ 266点

 6位 セラフィン・モンロイ ルーンナイト 264点


 9位 ドロシー・ムルトマー ハイメイジ 230点


 11位 セレナーデ・アンダーウッド マジックアーチャー 213点

 14位 レオンティオス・キャルタンソン バーンナイト 185点


 19位 バルト・コリント ウォリアー 157点

 20位 ステイフ・シーデーン ビーストテイマー 153点


 150点以上を合格とする。


「ははは! やっぱり3位だ!」


 俺は順位表を見て大笑いする。

 虹色の魔石を最短で渡さないと、絶対1位にはなれないのだ。


 となると、今回はリリーの女子会加入は無しか。


「まあ、仕方ないか」


 彼女達との合同練習は結構メリットがあったのだが、今回は成長速度が上昇している。問題は無い。

 護衛官選出については懸念が残るところだが、全力で結果を残していけば何とかなるだろう。


「おお……デスグラシアは4位か……今回は減点がなかったからな」


 その時、周囲にいる生徒たちがざわめく。

 何事かと後ろを振り返ると、満月のローブを着たデスグラシアと通訳のババアが、こちらへ向かってくるのが見えた。


「おいおい、魔王太子が女の恰好してるぜ……」

「え、何あれ? 可愛くない?」

「女化したのかしら? でも、胸ないわね……」

「ツルペタだけど、なんかエッロ!」


 予想通り、みんなビックリしている。うんうん、その反応が見たかった。


 デスグラシアが俺の元へとやって来る。


『なんだか、凄く注目されているような気がするのだが……』

『ああ。みんなお前の話をしている。可愛いとか、セクシーとか言われているぞ』


『やっぱり恥ずかしい! 着替えてくる!』

『待て待て!』


 どこかへ去ろうとしたデスグラシアの腕をつかむ。


『人間と友好を深めるのなら、絶対にその恰好の方が良い。前の服は威圧感があったからな』

『む……そうか……では、我慢してみるか……』


『すぐに慣れるさ。――あそこにいるドロシー・ムルトマー侯爵令嬢も、露出度の高い服を着ているが、全然恥ずかしがっていないし、周りも気にしていないだろ?』

『た、確かに……』


 ドロシーが俺の視線に気付き、睨んでくる。

 隣に立っていたリリーがそれに釣られて、こちらを見た。

 彼女の目が見開き、クーデリカ達と何やら相談し始める。



『――む、王太子殿下が来たか。通訳よ、彼に挨拶をしたい』

『私・分かる』


 ひっでえ魔族語だ。

 デスグラシアは通訳のババアを連れて、フォンゼルの元へと歩いていく。

 あいつ、ちゃんと挨拶していたんだな。


『王太子殿下、本日より貴方の級友となった。よろしく頼む』

「今日からよろしくな!」


 おいババア! お前絶対わざとだろ!


「う、うむ……こちらこそ……よろしく」


 フォンゼルは目をぱちくりさせながら、掲示板の前へとやって来る。

 お? よく怒らなかったな。


『通訳よ、王太子はなんと?』

『魔族・黙れ』


『何だと……?』


 ババア! いい加減にしろよ!

 スキル兎の耳でバッチリ聞こえているからな。


 俺はデスグラシアの元へと向かう。


『デスグラシア、フォンゼルはよろしくと言っていたぞ。この通訳は解雇した方が良い。意図的に誤訳して、お前と周囲の仲を引き裂こうとしている』

『ほう……』


 デスグラシアは通訳のババアを睨みつける。


『違う・わざと・違う・勘違い』


 ブオッ!

 デスグラシアの魔斧が、ババアの首スレスレでピタリと止まる。


『さっさと失せろ。さもなくば、次は止めぬ』

「ひ、ひいいいいいい!」


 ジョバババババ!

 ババアは盛大に失禁しながら逃げ去った。


『ニル、そなたに感謝を』

『いや、構わない。それより通訳はどうする? すぐに代えの者は用意できないはずだぞ?』


 デスグラシアは髪をクリクリといじりだす。

 1回断った手前、頼みづらいのだろう。


『……お前に頼みたい』

『お安い御用だ。護衛もセットで付けておくよ』


 デスグラシアの顔がぱあっと明るくなる。

 これで彼女のプリンセスガードとなる事ができた。良かった。


『そうか! 助かったぞ! 報酬はどうすれば良い?』


 無料で構わないのだが、それだと逆に気を遣わせてしまう。


『週1くらいでいいから、お前の手料理を食べさせてくれ』

『そ、そんなものでいいのか?』


『ああ。俺には金なんかより、よっぽど価値がある事なんだ』

『え……? それって、どういう事……?』


 彼女の顔が赤くなり始める。――可愛い。


「あの……」


 丁度良いタイミングでリリー達が来た。


「ニル様、魔王太子殿下の通訳の方は……?」

「つい先程解雇となり、私が代わりを務める事になりました」


「そうですか。――では、ニル様。わたくし達は、お互いを高め合う事を目的としたグループを作るつもりです。それに加わらないかと、殿下にお伝えしていただけますか?」


 さすが性欲モンスター。もう食いついて来た。切り替えはやっ!

 俺はうなずき、デスグラシアにリリーの言葉を伝える。


「――こちらこそ、よろしくお願いしますとの事です」

「まあ! それは良かったですわ! うふふふふ!」


 クーデリカ達は苦笑いを浮かべている。リリーの魂胆がわかっているのだろう。


「ニルも通訳として入りなよー」

「そうですね。ニル様がいないと、お話ができませんもの。よろしくお願いします」

「いえいえ。こちらこそ、よろしくお願いします」


 リリーが深く頭を下げるので、俺はさらに深く頭を下げる。

 前回とまったく同じやり取りだ。



 こうして俺は100周目も女子会に加入する事になった。

 それも、デスグラシアと一緒に。

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