空へ

勝利だギューちゃん

第1話

私は今、病院にいる。

もう、何年になるだろう・・・


今、私がいるのは10畳ほどの個室。

他に患者はいない。


家族も、友達も来ない。

ていうか、いない・・・


いなくなったのだ・・・


元は都会の病院にいた。

でも、私の体には空気のいいところがいい。

そう判断されて、ここに来た。


しかし、神様は時に残酷だ。


窓から見える空。

空だけが優しく微笑んでくれる。


鳥たちが元気に羽ばたいている。


鳥はどう思っているのか、わからない。

隣の花は赤いではないが、私には鳥が羨ましい。


今にも、あの窓から空へと羽ばたきたい。


でもそれは、無いものねだり。

なら、せめて空想の中ででも、あの空を飛ぼう。


私の枕元には、ぬいぐるみがある。

蝶のぬいぐるみ。

バカでかいのは、言いっこなし。


このぬいぐるみは、私のオリジナル。

友達が、お金を出し合って、ぬいぐるみにしてくれた。


世界にひとつしかない。

名前は、パピ。


私の数少ない話相手。


「さすがにあなたでは、私を運べないね」

そう、声をかける。


その夜


私は夢を見た。

パピの背中にまたがり大空を飛んだ。


それが、すぐに夢とわかった。

いわゆる明晰夢。


なら私の自由。

明晰夢は誰もがもっている超能力だ。


私は、夢の中でお花畑を作り上げた。

そのお花畑には、両親や友達もいた。


もう、会えないと思っていたので、

再会に私は涙した。


このまま、ここにいようかとさえ思った。


すると、仲の良かった男の子が、花で指輪を作ってくれた。

それを、左手の薬指にはめてくれた。


「君はまだ、ここに来ては行けない。」

そういい、背中をおされる。


「パピ、頼んだよ」


気が付いたら、私は病院のベットにいた。

明晰夢とは言っても、さすがに命までは自由に出来ないか。


私の左手の薬指には、花で作られた指輪がはめらていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空へ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る