第131話 お義理さんの学校生活①
「琴葉さん。本当に大人しくしておいてくださいね」
「任されよう」
昔の映画版ジャイ○ンかよ……。
不安な返事と共に通い慣れた正門を潜る。
琴葉さんも何故か通い慣れている風に正門を通ると後ろから「お二人さん」と可愛らしい声が聞こえてくる。
振り返ると四条と冬馬が一緒に登校してきており、俺達に近づいてくる。
俺は咄嗟に「六堂 冬馬と四条 純恋。友達」と琴葉さんへこっそり伝えると彼女は何だか嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「今日もラブラブ登校ですかー?」
「全く……朝から見せつけてくるなよな」
四条がからかう様に言ってくると冬馬が眼鏡クイをしてくる。
「お前らが――」
言葉の途中で左腕にムニュっとシオリでは絶対に考えられない感触が俺を包み込んでくれる。
「私たちはラブラブ」
どこかシオリを思わせる端的な台詞だが、それと行動が伴っていない。シオリは学校でいきなりこんな事しない。
だが、言葉が出なかった。
――これが中年女性の乳……だと……!? こんなもんに触れてたら理性が保たない。それにシオリと同じ美しい顔……。
太一さん……あんたよく二人目を耐えていたな……。ほんと、すげーよ……。俺には真似できねーよ……。
「――え、ええっと……昨晩はお楽しみでしたね?」
「恐らくラスボスを倒した後にお姫様抱っこで宿に泊まったのだろう」
「つまり……」
「
冬馬のクールな眼鏡クイをすると四条があわあわとする。
「い、行こう冬馬くん、二人の邪魔しちゃ悪いし」
「ああ……。俺達は安易とそんな行為はしないからな」
「う、うーん……あはは……。冬馬くんが――」
「う、うぬぅ……」
二人はイチャイチャしながらスタスタと校舎へ入って行く。
「――ちょっと!! なにしてんすか!?」
ようやく気持ちがツッコミに回れそうだったので琴葉さんへ言い放つ。
「ラブラブ」
「離れてください!」
言いながら無理くりに剥がすと琴葉さんが聞いてくる。
「どうだった? ロリ巨乳人妻の制服添えは」
「どこのAVだ! つか、あんたは娘の彼氏になにをしとんねん!」
「シオリでは体験できない世界だったでしょ?」
「ま、まぁ……。――って、ちっがーう! そうじゃないでしょ!」
俺のツッコミに「あははー。まぁまぁ」と手首をクイクイとしておばさんみたいな事をした後に言ってくる。
「どうやらシオリのお友達にも私がシオリじゃないってバレていないみたいだね」
「見た目にはほとんど同じですからね」
「それを見破ったコーちゃんは流石だね」
「許嫁で恋人ですからね」
「きゃー! きゃー!」
俺の肩をぽんぽんと叩いてくる琴葉さん……。シオリも歳を取ればこうなってしまうのだろうか……。
「バレてないのなら良かった。ほら、まだ学校の細かい所聞けてないでしょ? クラスとか席とか。それなのに友達と一緒じゃ怪しまれるでしょ? ああやって大胆な行動してたら、普通の人なら邪魔してこないと思って」
「なるほど……追い払う意味でやったと?」
「その通り」
言いながらピースして「カニカニ」と言っている。
何だろうな……何か古臭いんだよな……。
「おかげで俺のあだ名が無事に
「まだシオリとヤッてないの?」
「あんたは娘の彼氏によくそんな事言えたな!」
「早く孫が見たいものじゃのー」
「あの……色々と反応に困るのでやめてもらって良いですか」
「冗談、冗談。にゃはは」
明るく笑う彼女は本当に病気で長くないのか疑うレベルである。
「――まぁ、何やかんや結果オーライって事で……。もぅ……。次からは気をつけてくださいね」
「任されよう」
このロリ巨乳人妻の制服添えは本当に大丈夫なのかな……。
♢
琴葉さんへシオリのクラスと席だけ教えておいた。
ただ、それだけだったので、やはり何処か心配だった為、休み時間毎に様子を伺っていたのだが、特に目立つ行動もせず席に座っているか、クラスメイトと静かに会話している程度だった。
この調子なら大丈夫か……。
そう思った矢先の四限目。
窓の外では女子達がソフトボールをしている。
何だか見覚えのある女生徒がピッチャーをしているな……。
あれは確か……三組の上野さんだ。ソフトボール部のエースで四番の人だ。
凄いな、ここからでも分かる豪快なピッチングフォームは体育の授業とは思えない程の威力だ。
ミットに収まる乾いた音がこちらまで聞こえてくる。
ここからじゃ確実には言えないが……あれはライズボールでは?
女子高生が普通の体育でライズボール投げるとかあり得るの?
まぁ、そんな事は置いといて、三組の上野さんって事は……合同体育だから……。
「やっぱり……」
ネクストバッターズサークルにはシオリの母親が立っていた。
――いや、あかん。見た分かる、めっちゃデカいやつやん。
薄着だし、体操服だからシオリでは絶対目立たない場所がここからでも分かる程に目立っている。
クラスメイト達は……気が付いていない……のか……?
――それよりもバットのグリップにスプレーを大量にかけている行動に引いているのか?
――いや! てか、あんたはプロか! どこにあったそんなスプレー!
そんな琴葉さんを横目に上田さんはバッターを簡単に三振に取ると、バッターボックスへバットを両手で上げ、シオリでは絶対目立たない場所を強調しながらゆっくり向かう。
――バレるバレる! そんな事したらバレるて! シオリじゃ絶対目立たない場所なんだから! バレるて!!
そんな俺の心配をよそに琴葉さんがようやくと左打席――左打席!?
あの人夏休みにバッティングセンター行った時は右で打ってなかったっけ!? まさかの両打ち!? あなた野球部は野球部でもマネージャーでしょ!? スペックの高いマネージャーだな!
――おいおい。しかもあの豪快でかっこいい構えは完璧にペイペイズの義井田選手じゃないか。完璧なる義井田選手の構えじゃないか! テンション上がるな!
そんな有名ホームランバッターのバッティングホームをするバッターに対して上野さんはイラついたのかライズボールを放つ。
初級から見逃さない、義井田 琴葉はフルスイングでボールをしばき上げた。
バットの放り方も義井田選手じゃないか。めっちゃ好きやん。
打球はソフトボールなのに野球ボールみたく右中間へ飛んでいく。
マジで宇宙まで行くかと思われた打球で余裕のホームラン。
ゆっくりホームに帰ってくると、シオリのフリしてるのを忘れてクラスメイトとハイタッチしている。
あの人、完璧にシオリのキャラ忘れてるな……。
でも、あれだな……。シオリが球技出来るのは母親譲り……いや、太一さんも野球部のエースと言っていたからしっかり両親からの血を受け継いでいるのだな……。
それにしても琴葉さん凄すぎるだろ……。
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