第214話 アスカの事情
ステラさんが全速力で飛んでくれたお陰で、王都へは約1時間ほどで着いた。
「す、凄い...こ、こんな短時間で着いちゃうなんて...」
私は亜空間からアスカさんを引っ張り出した。アスカさんは王都の街並みを見て唖然としているようだ。
「さぁ、アスカさん! 急いで医者の所へ!」
私は女の子を抱き抱えながら、馬車と一緒に亜空間から出て来て叫んだ。その声でアスカさんはハッと我に返ったようだ。
「そうでした! 皆さん、ありがとうございます! このご恩は一生忘れません!」
アスカさんは女の子を抱えて馬車に乗せて、御者席に乗ってからそう叫んで馬車をスタートさせた。
「お大事に~!」
私は去って行く馬車に向かって叫び返していた。
「あの女の子、ルキノちゃんって言うらしいですよ。まだ5歳なんですって」
亜空間の中でアスカさんと話していたセリカさんが教えてくれた。
「なんでも以前は、旦那さんと二人で冒険者をしながら生計を立てていたそうなんですが、とある遺跡の調査中に旦那さんは魔物に襲われてお亡くなりになったそうです...」
セリカさんは悲しそうに目を伏せながらそう言った。
「その時既に、アスカさんのお腹の中にはルキノちゃんが居て、身重なアスカさんは冒険に参加できなかったそうです。旦那さんは生まれて来る子供のためにも稼がないとって無理しちゃったみたいですね...」
「そうだったんですね...」
「クエ...」
悲しいね...子供の顔も見れずに逝っちゃうなんて...
「アスカさんは女手一つでルキノちゃんを育てて来たんですね...大変だったろうに...」
「えぇ、仕事と子育ての両立は大変だったって言ってました...それでもアスカさんは魔道士なんで、色んなパーティーから助っ人して雇われてそれなりに稼ぐことが出来たんだって笑ってましたよ」
「助っ人?」
「えぇ、ほら、幼い子供が居るから遠出が出来ないでしょ? だから近場で済ませられるクエストに正式なパーティーメンバーではなく、助っ人として参加して報酬を分け合ったりしてたそうですよ」
「なるほど...」
「クエ...」
「ん? だったらなんであんな森の中に居たんです?」
「アスカさんの住んでる町から王都へ行く近道だったそうです」
「そういうことですか...」
「クエ...」
「私達のパーティーホームの住所は教えておきましたから、ルキノちゃんが元気になったらお礼しに伺いますって言ってましたよ」
「そうですか。ルキノちゃん、早く元気になるといいですね。さぁそれじゃあ、ラウムさんが待ってるだろうから戻りますか。ステラさん、またお願いしますね。今度はゆっくりでいいですから」
「クエッ!」
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