第39話 尋問

 近衛騎士団の詰所に着いた私は、カイル様とアラン様に事の次第を説明した。


「なんと! 我が近衛騎士団に裏切り者がおっただと!? なんということだ...」


 するとカイル様は打ち拉がれてしまった...アラン様はというと、


「カリナの判断は正しい。ただ集団自決はせずとも昨日のあの男のように、自決用の毒を自ら仕込んでいるかも知れん。だとすれば結局のところ今頃は...」


「いえ、それは大丈夫みたいです」


「へっ!?」


「5人の内、3人はどこかに出口がないか探し回っていますし、残りの2人は膝を抱えて座り込んでいます。全員生きてますよ?」


「なんで分かるんだ!?」


「だってずっと見てますもん」


 あの男に自決されちゃった時、見てなかったんだよね...グルグル巻きにされてたから、見てる必要もないと思ってたんだ。


 まぁでも結局のところ、たとえ見てたとしても奥歯に仕込んだ毒じゃ止められなかったとは思うけどね...そうは言っても気分の問題だよ。だから今回はずっと監視してるんだ。

 

「そ、そうなのか...」


「どうします? 1人ずつ取り調べ室に出しますか? 全員抜刀してて危険なので、出す時は後頭部を強打して昏倒させる必要がありますけどね」


「そうだな...」


 アラン様が考え込むと、復活したらしいカイル様が、


「カリナ、ちょっと待っててくれ。バインドロープを人数分持って来るから」


 そう言って駆け出して行ってしまった。私はアラン様に尋ねる。


「バインドロープってなんですか?」


「凶悪犯を殺さずに捕らえるため開発された魔道具だ。ロープ自体に魔法が掛かっていて、投げ付けるだけで自動的に犯人を拘束してくれるという優れものだ」 


「へぇ~ そんな便利な道具があるんですね~」

 

 私が感心していると、ロープを抱えたカイル様が戻って来た。


「待たせたな。カリナ、このロープを1本ずつ賊に掛けてみてくれ」


「分かりました。ちょっと行って来ますね」  


 そう言って私は亜空間に潜った。まずは賊の1人目。後ろに回ってそっとバインドロープを投げてみる。するとロープはまるで生き物のような動きで、あっという間に賊をグルグル巻きにしてしまった。凄いね!


 この要領で5人全員を捕縛した私は、昨日と同じ取り調べ室に全員を放り出した。ちょうどその時、アクセル様がやって来た。


「ご苦労さん。コイツらか」


 アクセル様は賊どもを見下ろしてこう告げた。


「貴様らがベルザード家の手の者だということは調べが付いてる。じゃなきゃそう簡単に近衛騎士の騎士服なんて手に入らないだろうし、王宮に入り込ものも難しいだろうからな。どうだ? ここで素直に白状すれば、情状酌量を考えてやらんこともないぞ?」


 私はアラン様にコソッと耳打ちする。


「ベルザード家って?」


「ミネラル嬢の実家だ」


 なるほどねぇ。だから狙われたのは私だったんだ。


「どうだ? 白状する気になったか? 答えろ。誰に指示された?」


 賊どもの顔色は真っ青になってる。こりゃ白状するのも時間の問題かな?



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