151系
このエッセイの中で、私もいろいろな妄言をはいてきたと思うが、今回のはその中でも最大級かもしれない。
「151系(こだま型)は、日本髪の若い娘をイメージしてデザインされている」
ハイ、ご感想はいかがでしょうか。皆様の想像の斜め上を行っておりますでしょうか。
いえいえもちろん、伊達や酔狂で言っておるのではありません。もっとも逆に、根拠もありませんが。
151系の登場が昭和33年。
中心になって151系のデザインを担当した中堅スタッフの平均年齢が50歳前後であったと仮定すると、この人たちが生まれたのは明治末期ごろだったことになります。
日本における洋服の普及はかなり遅く、戦後のことですから、明治末期にはまだまだみな和服を着ていたでしょう。
クハ151の最終デザインが決まる前に、きっと何通りかのデザイン画が描かれ、討議され検討され、「これにしよう」と最終的な決定稿につながったのでしょうが、ならば、
「なぜそのデザインが選ばれたのであろうか?」
古い話とは言え平成のことですが、私の母がある日、着物姿で、しかも雨天だったので蛇の目傘を持って、いつもの駅で電車を待っておりました。
すると、その姿を目にした見も知らぬ中年の紳士が微笑みつつ、
「よろしおますなあ」
と述べたとのこと。
おそらくその紳士がまだ幼児だった時代には、彼の母親を含め、まわりの多くの婦人は日常的に着物姿だったことでしょう。
「三つ子の魂百までも」
というやつです。
ここで、竹久夢二という画家のことを思い出してください。この人の描く美人画みたいな感じ。
ゆったりとしたカーブの額は細面。金色のJNRマークは愛らしい鼻。肌色に近いクリーム色の塗装。連結器カバーなどは、口紅を引いた唇に見えませんか?
キャブの屋根上にある灯火類は、日本髪のマゲとかんざし。
事前に何枚か描かれたであろうデザイン候補画がどんなものだったのか、もちろん私は知りません。見たこともありません。
しかしその中の一枚が、偶然にも着物姿、日本髪の若い娘に似ていた。
その類似にエンジニアたちが気付いていたとは、私も思いません。
だけど、
「なんとなく、このデザイン画には引かれるものがあるよなあ…」
「ええ、なぜか知らないが、若いころの母親を思い出しましたよ」
みたいな感じで、このデザインが採用されたのではないかと。
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