第85話 リハーサル

 真子が楽屋を後にしてから、莉奈から色々問い詰められた。

別に、俺は真子のことが好きかと聞かれたら、別にそうではない。

ただ、美人だとは思う。それだけだ。


「じゃあ、四宮さん。私とも飲みに行きましょう」


 莉奈から提案された。


「ああ、莉奈がいいならいいけど」


 お酒は嫌いじゃないし、可愛い子と飲めるのはシンプルに嬉しいものではないだろうか。


「約束ですからね!」


 莉奈は語調を強くして言った。


「ああ、分かったよ。約束だ」

「ちゃんと連絡しますから!」


 なぜか成り行きで莉奈と飲みにいくことが決定してしまった。


 そんなことをしていると、再びドアをノックする音が響いた。


「はい」


 俺はドアを開けた。


「お疲れ様です。Whiteの皆さん、リハーサルの時間ですのでお願いします」

「分かりましたー」


 Whiteのメンバーの方に視線を向けるとみんな準備は出来ているといった表情を浮かべていた。


「ご案内しますね」


 テレビ局のADの人の後について行く。

しばらくして、スタジオに到着した。


「こちらになります。プロデューサーの方はこちらで見学できますので」

「分かりました」


 俺は邪魔にならないくらいの位置でWhiteの様子を見守っていた。

やる事はいつものライブと大差はないはずだ。


 ただ、今日はテレビカメラがあって、それが全国放送される。


 今回歌うのはWhiteが最近出した新曲である。


 数十分のリハーサルは緊張したまま終わった。


「はぁ、緊張したぁ」


 そんな言葉を吐きながら、莉奈たちは戻ってきた。


「お疲れさん。良かったよ。本番もその調子で頼むぞー」

「「「はい」」」


 3人は口を揃えて言った。


「Whiteの皆さんは一度楽屋に戻ってもらって大丈夫です。本番の時間になったらお呼びしますから」


 さっきのADさんがそう言った。


「分かりました」


 俺はWhiteのメンバーと共に楽屋へと戻った。


「緊張してるね」


 静寂が流れる部屋で俺は言った。


 今日の楽屋の中は妙に静かだった。

俺はテレビ局に何度か足を運んだことはあるが、莉奈たちにとってはテレビ局に来ること自体が初めてなわけである。

そりゃ、緊張もするだろう。


「まあ、あんまり深く考えなくてもいいと思うぞ。一回や二回どっかで躓いたって俺が引っ張り上げてやるから。気楽にやってこい」

「四宮さん!」


 莉奈が声を大きくして立ち上がった。


「え、なに?」

「なんでそんなに頼りになるんですかぁ。私、ずっとついて行きますから」


 莉奈が涙目になりながら言った。


「あ、ありがとう」


 予想外の反応にこちらとしても反応に困ってしまう。


「今日、頑張ります。絶対成功させますから!」

「よし、その息だ。せっかくのチャンスでもあるからな。一緒に頑張ろう」


 俺たちは改めて気合を入れて本番に臨むことにした。

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