第17話 渉が居なくなった事務所は
美少女たちとの食事も終わりを迎えた。
「ごちそうさまでした」
「いえいえ、気をつけて帰ってね」
俺と3人は帰宅の方向は反対になる。
3人を改札まで送り届けると、俺は帰路に就いた。
俺たちがそんなことをやっているうちに、ユメミヤの所属する事務所は別の問題に直面していた。
「社長、またです!」
「今度は何があった!?」
事務所の電話は昨日から鳴りっぱなしなのである。
「四宮さんがいなくなったならうちとの契約もなかったことにしてほしいと……」
「それはどこだ?」
「セントレルテレビです」
セントレルテレビと言ったら、大手のテレビ局だ。
そこが契約を無効にするというなら事務所としても大きな痛手になってしまう。
「俺が変わる」
社長が受話器を奪い取るようにして言った。
「お世話になっております私が社長の……」
『ああ、あなたが噂の社長さんですか。私は四宮さんだから契約したんです。彼が居ないのなら今後取引はないと思ってください。失礼します』
「ああ、ちょっと」
とりつく島も無く、電話はぶつっと切れてしまった。
「一体、どういうことなんでしょう……」
新しくユメミヤのプロデューサーになった男は急の表情を浮かべていた。
「これで何社目だ?」
「5社目です」
テレビ局1社、出版社2社、コンセプトカフェのオーナー、ライブを主催する運営からも契約を白紙に戻したいという連絡があった。
どこも、四宮が手を引いたならうちも手を引かせて貰うと告げられたのだ。
「まさか、ここまでとはな……」
「四宮さんって何者なんですか?」
新人プロデューサーが社長に尋ねた。
「わからん。ただ、前々からあいつの人脈には驚かされることが多かったな」
このまま、契約の破棄が進んでいったら、間違いないユメミヤは没落していくことだろう。
「戻ってきてもらうなんてことは……?」
「今更どの面下げて頼むというんだ」
社長はプライドで生きているような人間なので、頭を下げるなどはまっぴらごめんという感じである。
「では、どうしたら?」
「私たちが交渉するすかないだろう」
この時、社長たちはまだ気づいていなかった。
四宮渉という男がただの人脈チート持ちということではないことを。
四宮の営業は誠実さが大きなポイントだった。
たまには強引な営業もかけるが、相手を見て判断している。
そんな四宮の誠実さを買ったクライアントたちは、次々にユメミヤから手を引こうとしていたのだ。
四宮渉がいなくなったユメミヤ、そして事務所は崖っぷちに立たされていると言えるだろう。
その後も事務所への電話は鳴り続いた。
そして、ユメミヤへの仕事は下降の一途を辿ったのであった。
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