ア―ゼンノアと100年ラヂオ

Aruji-no

宿譚

Stella & Board

始.聴き手と語り手

「やぁ、こんにちは」

 その金属の板は、間違いなくぼくにあいさつをしてきた。

 まず、世界の先端を目指して歩くぼくを、呼び止める声が聞こえた。それにふと足を止めて声の主を辿ると、そこには巨大な金属の顔のようなものがあった。声はその中から聞こえてきたので、ぼくは中に入り込みその声の主を見つけた。

「どうしたんだい。まずはあいさつをと思ったのだが」

 しゃべるを手に戸惑うぼくに、それは話を続けた。ひとまずあいさつをしてきみは一体何なのかを尋ねてみた。

「ふむ。説明は難しいな。まず、君は電話を知っているかい」

 僕はうんと答えた。どんなものかを知ってるだけで、使ったことはないけど。

「まず言っておくが、わたしは電話を使ってるわけじゃない。別の場所からきみに話しかけてるのでなく、君が今持っているこそがわたしなんだ」

 どうやらぼくが話してるのは住ビト人間ではないみたいだ。どう応えていいか分からなかったので、思わずガラクタ呼びはよくないとだけ言った。

「はははっ。確かに不必要に自分を貶めるべきではないな。かつての持ち主もそう言ってた」

 釣られて笑うぼく。怖い存在じゃないことが何となくわかった。なので、改めてあいさつと自己紹介をした。

「そういえば、まだ名乗ってなかったな。わたしのことはクールと呼んでくれ」

 よろしく。クール。

「ああ、よろしく。早々にすまないがある頼みがあるんだが…」

 クールはどうやら、世界の先端に行きたいみたいだ。ぼくと同じ目的地。断る理由はなかったので、ぼくはクールを荷物に括り付けて、改めてそこを目指した。

「ありがとう。到達にはまだ時間がある。暇つぶしにおはなしでもどうかな」

 いいね。

「では、そうだな。わたしの最初の持ち主の話からにしようか」

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